国内で発生のないベクター媒介性感染症の疫学診断法等の研究

文献情報

文献番号
200829027A
報告書区分
総括
研究課題名
国内で発生のないベクター媒介性感染症の疫学診断法等の研究
課題番号
H19-新興・一般-012
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
苅和 宏明(北海道大学 大学院獣医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 高島 郁夫(北海道大学 大学院獣医学研究科 )
  • 有川 二郎(北海道大学 大学院医学研究科 )
  • 福士 秀人(岐阜大学 応用生物科学部)
  • 丸山 総一(日本大学 生物資源科学部)
  • 林谷 秀樹(東京農工大学 大学院共生科学技術研究院)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 早坂 大輔(東京都神経科学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
27,216,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、アレナウイルス感染症、サル痘、Q熱、バルトネラ感染症、エルシニア感染症、およびサルモネラ感染症はいずれもげっ歯類媒介性の重篤な人獣共通感染症である。これらの感染症に対する簡便で信頼性の高い診断法が開発されていないために、輸入げっ歯類の検査体制が未整備であり、国内外における汚染地やヒトにおける感染状況に関する情報も不足している。そこで本研究ではこれらの感染症について、簡便で信頼性の高い診断法を開発し、輸入げっ歯類の検査に応用するとともに、国内外の流行状況を調査する。
研究方法
 ハンタウイルス属のThailandウイルス(THAIV)の組換えヌクレオキャプシド(NP)抗原をバキュロウイルスベクターで発現させ、それを抗原とするELISAにより、ウイルス型別用の血清診断法の確立を試みた。ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)の中空ウイルス様粒子(SPs)を用いて野鼠における抗TBEV抗体検出用のELISAの開発を行った。神奈川県丹沢山系でBartonella属菌の分布状況を調査した。Yersina属菌のinv遺伝子を標的遺伝子としてReal-time PCR法による迅速な定量的検出法の開発を試みた。サル痘ウイルスZr-599/SC株とLiberia株を皮下接種と鼻腔内噴霧接種によりカニクイザルに接種し、3週間の症状観察と病理検索を実施した。
結果と考察
 ハンタウイルス属のTHAIVの感染に対する簡易鑑別診断法を開発した。TBEVのSPsを用いたELISAを開発し、本法を日本各地の野鼠の血清を用いた疫学調査に実施したところ、新たに島根県でTBEVの抗体陽性例を確認した。神奈川県丹沢山系においてBartonella属菌の分布状況を調査したところ、ニホンジカ血液の25%(2/8)、寄生マダニの42.7%(76/178)、およびヒメシカシラミバエの80%(4/5)からBartonella属菌のDNAが検出された。Yersina pseudotuberculosisのinv遺伝子を標的遺伝子としてY. pseudotuberculosisの21血清群すべてが検出できるReal-time PCR法の開発に成功した。強毒型のコンゴ盆地型サル痘ウイルス株を感染させたカニクイザルでは、皮膚病片のほかにリンパ系組織、呼吸器、消化器、および泌尿生殖器等に肉眼病変とウイルス抗原が認められた。
結論
 ハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、バルトネラ感染症、エルシニア感染症、サル痘について簡便な診断法が開発され、疫学調査や病原性解析への応用が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
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