胆嚢がんの分子生物学的特異性の解明と早期診断法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
199700508A
報告書区分
総括
研究課題名
胆嚢がんの分子生物学的特異性の解明と早期診断法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
小越 和栄(新潟県立がんセンター新潟病院)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤征史(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 佐藤豊二(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 土屋嘉昭(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 山本正治(新潟大学医学部衛生学教室)
  • 渡辺英伸(新潟大学医学部第一病理学教室)
  • 澁谷範夫(新潟医療技術専門学校)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 がん克服戦略研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胆道がんの発生には内因性と外因性の原因が関与しているが、地域特異性の原因としては外因性の発癌物質が考えられる。また、内因性の因子の一つとして胆汁酸の成分があり、我々はこれまでの研究でグリコウルソデオキシコール酸(GUDC)が胆嚢がんに有意に増加しており、既知の突然変異原性物質に対しての助変異原性を持つことを明らかにしてきた。しかし、他にも助変異原性を持つ二次胆汁酸が胆汁中に存在するにも関わらず、胆嚢がんにはGUDCのみが増加するのかを解く鍵として、各胆汁酸の助変異原性を発揮する至適濃度が実際の胆汁の濃度とどう関わるかを本年度の研究の第一目標とした。また、発癌促進物質とともに胆汁内には発がんを抑制する遊離脂肪酸があり、発がん性の高い(既知の変異原性物質に対して助変異原性の高い)胆汁とそれが低い胆汁との間で遊離脂肪酸がどう関わっているか、また発癌促進物質との関連性の解明を第二の研究目的とした。さらに継続研究としてして行っている、膵胆管合流異常症例での遺伝子解析は、従来型の胆嚢がんと合流異常型胆嚢がんの発生原因の違い(合流異常症例では胆汁の変化による外因性の発がん機構が主であろうとの仮説の証明)を明らかにするため各種の遺伝子異常についての検討を行っている。
研究方法
1)ウルソデオキシコール酸抱合体の助変異原性とその濃度
既知変異原物質として2-AA、ベンゾピレン(BaP)、Trp-P-2 を使用し、胆汁酸はウルソデオキシコール酸(UDC)、GUDCおよびタウロウルソデオキシコール酸(TUDC)を使用し、Salmonella typhimurium TA98とTA100菌株を用いたエームス試験のプレート法で、変異原性の至適濃度の検定を行った。
2)胆汁中の遊離脂肪酸の分析
胆汁中の遊離脂肪酸の分析には、高速液体クロマトグラフイ(HPLC)を用いて行った。
分析を行った胆汁は、胆嚢がん死亡率の高い新潟と低い高知で得られた胆汁を、それぞれ35例、計70例について行った。またエームス法で総遊離脂肪酸濃度と突然変異原性の抑制度との関連についても新潟の胆汁21例、 高知の胆汁20例について検討を行った。
3)膵胆管合流異常症に合併した胆嚢がんのP-53遺伝子変異に関する研究
新潟大学第一病理教室で診断された膵胆管合流異常型胆嚢がん13例について、正常型胆嚢がん21症例を対照とした。 これらの症例でHE染色の後、未染色切片で癌部のDNAを抽出し、PCR法でp53のEXON5~8までを増幅し、direct sequence法にて塩基配列を検索した。
結果と考察
1)ウルソデオキシコール酸抱合体の助変異原性とその濃度
胆汁中に見られ、また胆嚢がん患者に多いGUDCはいずれも既知変異原性物質に対し助変異原性がみられ、その至適濃度である40μmol/plate でコントロールに比して19倍の助変異現性を示した。またGUDCでは20mmol/Lが至適濃度であるのに反してTDCAの至適濃度は5mmol/L以下であり、実際の胆汁中の濃度は濃すぎて助変異原性を発揮出来ないことが判明した。したがって、大腸内での変異原性は胆汁中とは異なることを意味している。
2)胆汁中の遊離脂肪酸の分析では、測定した総遊離脂肪酸濃度は新潟の胆汁では、956.7±853.0μmol/L、高知では1849.4±2838.4μmol/Lであった。両者間には分散が極めて大きいために有意差は見られなかった。また、突然変異を抑制する作用を有する遊離脂肪酸はそれぞれ 659.5±853.0μmol/L、1327.7±2331.8μmol/L であり、総遊離脂肪酸と同様に両群には有意差は見られなかった。
遊離脂肪酸の濃度が0.5μmol/L 以下での症例では突然変異原性を抑制力は殆どなくなり、これらの症例を抽出すると、突然変異陽性と判定された胆汁は新潟では11例(52.3%)、高知で2例(10.0%)であった。また、遊離脂肪酸濃度を5mmol/L以下に固定した症例でも新潟の胆汁はエ-ムステストで突然変異原性が高く、抑制物質のほかに促進物質も同時に働いている事が推定された。
3)膵胆管合流異常症に合併した胆嚢がんのP-53遺伝子変異の検索は、合流異常型胆嚢がんの4例と通常型胆嚢がん21例である。少数例の分析結果ではp53遺伝子異常の出現頻度には両者で大きな差はなく、EXONについてみてもはっきりとした差はみられなかった。塩基置換様式では、合流型はともにtransition typeで、通常型はやや異なっていた。合流異常症症例が4例であるので、例数を重ねさらに検討が必要と感じた。
結論
本年の研究を通して、胆汁中には種々の二次胆汁酸およびその抱合体を持っているが、胆嚢がん症例にのみGUDCが高い理由の一つとして、助変異原性を発揮するための至適濃度があり、 GUDCが発がんに関与する可能性が強く、大腸内で発がん作用のある他の二次胆汁酸はその濃度故に、胆道内では発がんに関わる度合いは少ないと考えられる。また、胆汁中の発がんの抑制に働く遊離脂肪酸は促進物質との関連で作用しているものと思われる。また、膵胆管合流異常症例の胆道がん発がん機構には胆汁の異常による外因性の機構が働くと考え、p53遺伝子異常の検索を行ったが、以前の研究のK-ras遺伝子の結果とは異なって、明らかな結果は見られなかった。これは症例が少ない可能性もあり、 今後症例を重ねて研究を行う必要である。

公開日・更新日

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