抗酸菌感染症の発症・診断・治療・新世代予防技術に係わる分子機構に関する研究

文献情報

文献番号
200829021A
報告書区分
総括
研究課題名
抗酸菌感染症の発症・診断・治療・新世代予防技術に係わる分子機構に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 正彦(国立感染症研究所 病原微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 和夫(国立感染症研究所 免疫部)
  • 河村 伊久雄(京都大学大学院医学研究科)
  • 荒川 宜親(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 田村 敏生(国立感染症研究所 病原微生物部)
  • 菅原 勇(結核予防会 結核研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
45,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
結核等の抗酸菌症は未だに猛威を振るい続けており、そのコントロールは、細菌学あるいは免疫学などを主眼とした一元的なアプローチでは不十分であり、抗酸菌と宿主との間の長くかつ複雑な凌ぎあいを理解して初めて可能となる。病原性抗酸菌感染症の制御方法の開発を目的とした。
研究方法
Mycobacterium avium complex (MAC)の表層抗原GPLを用いた血清診断を行った。病原性抗酸菌の遺伝子鑑別診断法の開発をPCR法を用いて行った。未感染ヒトCD8陽性T細胞を強力に活性化する方策としてHSP70を用いた。抗酸菌の慢性持続性感染誘導機構をマウスを用いて検索した。1型糖尿病KDPラットを用い、結核の増悪因子としての可能性を検討した。
結果と考察
診断技術の開発・改良では、M. avium complex (MAC)の血清診断用キットを開発し、多施設においてその有用性を検討し良好な成績が得られた。結核菌と各種非結核性抗酸菌を一回の検査で鑑別可能な遺伝子領域の同定に成功した。抗酸菌の持続潜伏感染を誘導する宿主因子として、抗酸菌感染により活性化した抗原提示細胞表面に発現するPD-L1抗原は、T細胞の活性化を沈静化し、結核菌のマクロファージ内潜伏化をもたらすことを明らかにした。抗酸菌症の発症を抑制するワクチンの開発では、CD8陽性T細胞の活性化誘導法を検索し、HSP70遺伝子を病原性抗酸菌共通主要抗原Major Membrane Protein-II (MMP-II)をコードする遺伝子の上流に連結し、BCGに組み込ませることが極めて有効であった。メモリーCD8陽性T細胞は活性化したCD8陽性T細胞から産生されるが、その際細胞障害活性を有する実効型T細胞にまで一旦活性化させ、その後メモリーT細胞へと分化させることが、最も効果的メモリーT細胞の産生に繋がる。そこで、実効型のCD8陽性T細胞の産生機構に関して詳細な分子機構の解析を行った。その結果、従来から知られるT細胞の活性化誘導分子とは異なる分子が存在することが明らかとなった。結核を悪化させるリスク因子の同定は臨床上極めて重要であるが、1型糖尿病ラットを用い、糖尿病が結核の増悪高危険因子である直接的証明に成功した。
結論
病原性抗酸菌症の診断・予防・増悪因子及び結核菌の潜伏化誘導機構の解明に一定の成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
-