インフルエンザ(H5N1)の死因となる劇症型ARDSの病態解析と治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200829020A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザ(H5N1)の死因となる劇症型ARDSの病態解析と治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
河内 正治(国立国際医療センター 手術部)
研究分担者(所属機関)
  • 布井 博幸(宮崎大学 医学部 生殖発達医学講座小児科学分野)
  • 本間 栄(東邦大学医療センター大森病院 呼吸器内科)
  • 前原 康宏(国立国際医療センター 麻酔科)
  • 尾崎 由佳(国立国際医療センター 麻酔科)
  • 中島 典子(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 鈴木 和男(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 中山 俊憲(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 山本 健二(国立国際医療センター研究所 国際臨床研究センター)
  • 大島 正道(国立感染症研究所 免疫部)
  • 川上 和義(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 赤池 孝章(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 永田 典代(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 荒谷 康昭(横浜市立大学大学院 国際総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
52,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザ(H5N1)は発症初期から劇症型ARDSが進行(H5N1-FARDS)。またその病態からスペイン風邪(1919年)との類似も指摘され、病態解析と治療法の開発が緊急課題である。我が国ではインフルエンザ(H5N1)患者の発生はなく病態を直接解析できないため、1.H5N1-ARDSに特徴的な、多臓器不全を伴わない肺胞の広範囲な破壊を主とした劇症型ARDSの動物モデルを作製する、2.海外と連携してインフルエンザ(H5N1)症例の臨床データ及び病理学的なデータを得て、ARDS症例と比較検討する研究が必要である。
研究方法
ベトナム国立病院と連携して、1)H5N1-FARDSとARDSを同一病院(ベトナム)において比較検討し、臨床疫学的解析からインフルエンザ(H5N1)の病態の本質を解明する。2)劇症型ARDSモデル動物とARDSおよびインフルエンザ(H5N1)患者の初期病態に連動するサイトカインの産生機構と病態との関係を明らかにする。3)モデル動物とARDS患者のサイトカインから特定マーカとなる因子を抽出する。4)好中球、マクロファージ浸潤にかかわるサイトカインと、その調節にかかわる分子の特定をモデルマウスおよびARDS患者のBALFおよび血清から解析する。5)インフルエンザ(H5N1)による脳症発症の有無を検証する。
結果と考察
結果:20年度:(臨床班):1.ベトナム関係医療機関とprospective studyの開始。51例のH5N1-FARDSおよびARDSの臨床データを蓄積した。2.国内ARDS症例対象研究活動開始。現在7症例データ集積。(基礎班):3.劇症型ARDS動物モデルの検証。4.モデル動物およびH5N1-FARDSおよびARDS患者のBALF/血液における特定マーカ因子の分析。21年度(本年度予定):20年度1?4について解析終了まで行い、インフルエンザ(H5N1)の病態解明と新治療薬開発研究へとつなげる。
 H5N1インフルエンザ感染症においては、通常の重症ARDS症例と比較して入院時には呼吸機能はむしろ良好に保たれているにもかかわらず(酸素化能の障害程度はほぼ同様、換気能の障害程度がH5N1症例で少ない)、死亡率は有意に高いことが判明した(JID in press)。
結論
結論:インフルエンザ(H5N1)は、同程度のARDSと比較しても有意に死亡率が高くその死亡曲線は大きく異なり、病因が一般のARDSと異なっている可能性も高い。したがって、Pandemicに至る可能性を考えれば病態解明・治療法の開発が急務で、より高度の努力が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
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