文献情報
文献番号
200829017A
報告書区分
総括
研究課題名
新規に発生しているレンサ球菌による劇症型感染症の臨床的・細菌学的解析と,診断・治療法に関する研究
課題番号
H19-新興・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
砂川 慶介(北里大学大学院感染制御科学府・北里大学北里生命科学研究所 感染症学研究室)
研究分担者(所属機関)
- 生方 公子(北里大学 大学院感染制御科学府 病原微生物分子疫学研究室)
- 渡辺 治雄(国立感染症研究所 細菌第一部)
- 大石 和徳(大阪大学 微生物病研究所・感染症国際研究センター・高病原性感染症研究部門)
- 吉田 敦(獨協医科大学 医学部)
- 藤島 清太郎(慶應義塾大学 医学部)
- 坂田 宏(北海道厚生農業協同組合連合会旭川厚生病院・小児科)
- 岩田 敏(独立行政法人国立病院機構東京医療センター・小児科)
- 松井 英則(北里大学 大学院感染制御科学府 病原微生物分子疫学研究室)
- 秋山 徹(国立国際医療センター(研究所) 感染症制御研究部 感染症免疫遺伝研究室)
- 阿戸 学(国立感染症研究所 免疫部第二室)
- 池辺 忠義(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
29,799,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
市中感染症の中でも予後不良例が多い「レンサ球菌感染症(肺炎レンサ球菌含む)」に焦点をあて,侵襲性感染症・分離株を全国規模で収集し,菌の病原因子を含めた分子疫学解析を行う。重症化に至るそれら感染症例の宿主側因子を明らかにする。動物モデルを用いて発症機構と病態の解明を行う。得られた成績を元に,i)侵襲性重症レンサ球菌感染症の発症予防対策,ii)迅速診断方法の確立,iii)発症例に対する適正な治療法を確立する。
研究方法
H20年度は,19年度に収集した市中型侵襲性感染症由来のレンサ球菌の分子疫学解析と迅速診断法の構築を行った。また,症例の最も多かった劇症型例由来GGS株の全ゲノム解析を行い,GAS,GBSおよび肺炎球菌のそれと比較した。各種薬剤に対する耐性化状況も分子レベルで解析した。基礎研究では,糖尿病モデルマウスとヒト上皮細胞CD46の組み換えマウスを用い,感染の病態を解析した。また,GASにみいだされる各種病原遺伝子とヒトの重症化との関係を検討した。
結果と考察
1)β溶血性レンサ球菌による侵襲性重症感染症例は,大多数が50歳以上であり,さまざまな基礎疾患を持つことが特徴であった。2)成人の「死亡+後遺症残存」例は,肺炎球菌が27.7%,GASが22.1%,GGSが17.3%,GBSが12.9%と,病原性の強さを反映していた。3)世界で初めてGGS株の全ゲノム解析を行い,その他の菌と比較した。GASとは60%と高い相同性を示し,GBSや肺炎球菌とは20%以下であった。多くの病原遺伝子がGASと共通し,ヒトにおける病態がGASと近似することと相関していた。4)これらの菌種を迅速検索するreal-time PCR法を構築した。5) 糖尿病モデルマウスでのGGS感染実験では菌に対する感受性が明らかに高まっていること,ヒト上皮細胞レセプターのCD46組み換えマウスを用いたGASの病態解析でも,ヒトの劇症型感染に酷似した病態が出現することを確認した。5)GASの劇症型由来株では,好中球のネクローシス等が亢進していることを明らかにした。これらの基礎研究を元に,次年度は治療法の確立と啓蒙活動を進める。
結論
レンサ球菌による侵襲性感染症の背景には,菌の病原因子やその産生性亢進に加え,宿主のリスクファクターも大きく関与していることから,それらの感染予防と救命率を向上させるには医療従事者,国民両者の啓蒙が必要と結論される。
公開日・更新日
公開日
2010-01-12
更新日
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