文献情報
文献番号
200829013A
報告書区分
総括
研究課題名
リケッチア感染症の国内実態調査及び早期診断体制の確立による早期警鐘システムの構築
課題番号
H18-新興・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岸本 壽男(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
- 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウイルス第一部 )
- 猪熊 壽(帯広畜産大学畜産学部臨床獣医学研究部門)
- 岩崎 博道(福井大学医学部 病態制御医学講座内科学(1)領域)
- 大橋 典男(静岡県立大学食品栄養科学部食品生命科学科微生物学研究室)
- 岡部 信彦(国立感染症研究所感染症情報センター)
- 川端 寛樹(国立感染症研究所細菌第一部)
- 倉田 毅(富山県衛生研究所)
- 高田 伸弘(福井大学医学部病因病態医学講座)
- 田原 研司(島根県保健環境科学研究所ウイルスグループ)
- 堤 寛(藤田保健衛生大学医学部第一病理学)
- 藤田 博己(財団法人大原綜合病院付属大原研究所)
- 古屋 由美子(神奈川県衛生研究所微生物部)
- 山本 正悟(宮崎県衛生環境研究所微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
45,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
リケッチア感染症の国内における実態には不明な点が多く、特に早期診断体制は未整備であり確立されていない。また早期警鐘システムの構築が求められている。本研究班では、3年目も引き続きリケッチア感染症の実態解明と早期診断体制の確立、早期警鐘システム構築を目指して、①疫学的研究、②検査・診断的研究、③予防・治療的研究を3本柱として総合的にまた研究者間の連携をとりつつ研究を進めることとした。
研究方法
①疫学的研究として、疫学情報の解析疫学データの集約方法の検討を行った。リケッチア感染症の国内実態調査に関しては、つつが虫病と日本紅班熱の患者発生状況調査と、推定感染地におけるダニと動物の実態調査を行った。イヌの日本紅斑熱への関与について検討した。②検査・診断的研究では、オリエンチアShimokoshi株検出が可能な系を検討した。診断試料として、患者のダニ刺し口の痂皮の検査材料としての有用性について検討した。ヌードマウスを用いたR.japonica感染実験で、病理診断のモデルを試みた。③予防・治療的研究としては、日本紅斑熱の重症化機序解明のために、血中サイトカイン値を測定し、重症度との関連性を検討した。四国4県連携事業の動物の日本紅斑熱抗体調査、ならびに住民への感染予防啓発法を検討した。
結果と考察
①疫学的研究では、リケッチア感染症の国内実態調査に関して多くの知見を積み重ねた。イヌの日本紅斑熱への関与を示すデータは得られなかった。仙台市で、国内では新規の紅斑熱群リケッチアによる患者の発生が、患者、媒介動物(マダニ、野鼠)から裏付けられた。②検査・診断的研究では、Shimokoshi株検出が可能な系を確立し検査法の改善を行った。実験室診断における試料として、患者痂皮が最適と判断された。ヌードマウス対するR.japonicaの病原性は証明されなかった。③予防・治療的研究としては、島根県の日本紅斑熱患者確定症例の調査から、生体防御の指標としてTNF-αは重症化を予測する有用な指標と推測された。四国4県で行った動物の日本紅斑熱抗体調査においては、大きな差はなく、どの県でも患者発生リスクはあると考えられた。住民への感染予防啓発としてポスター作成をサポートした。
結論
リケッチア感染症の実態解明と早期診断体制の確立、早期警鐘システム構築のための研究を行い、さらに知見を積み重ねた中で、国内での新規紅斑熱群リケッチア症例の発見を始め、多くの成果を得た。しかし、新たに解決すべき課題も多いことが明らかになったことから、今後もリケッチア感染症の疫学的研究、検査・診断的研究、予防・治療的研究を総合的にさらに進める必要性がある。
公開日・更新日
公開日
2010-04-25
更新日
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