臓器移植や悪性腫瘍による免疫低下状態で発生するウイルス感染症の予防と治療に関する研究

文献情報

文献番号
200829012A
報告書区分
総括
研究課題名
臓器移植や悪性腫瘍による免疫低下状態で発生するウイルス感染症の予防と治療に関する研究
課題番号
H18-新興・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
森 康子(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 直樹(国立感染症研究所 ウイルス第1部)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 近藤 一博(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 水口 裕之(医薬基盤研究所 基盤研究部)
  • 藤原 成悦(国立成育医療センター研究所 母児感染研究部)
  • 白木 公康(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 末松 佐知子(医薬基盤研究所 基盤研究部)
  • 羽田 敦子(財団法人田附興風会医学研究所 第1研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
53,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器移植後患者や悪性腫瘍患者の免疫低下状態において、ヘルペスウイルス(HCMV、HHV-6、HSV、VZV、EBVなど)が再活性化し、重篤な感染症を引き起こす。本研究においては、ヘルペスウイルス感染症の発症機序解明および早期診断法や効果的な予防法、治療法開発のための基盤確立を目的とする。
研究方法
本研究は、免疫低下状態におけるウイルス感染症の病態解明、免疫低下状態におけるウイルス再活性化の早期診断法および迅速検査法の確立のための基盤研究、新規抗ウイルス剤候補の検索およびその効果判定、免疫低下状態におけるウイルス感染症の効果的な予防法の開発のための基盤的研究にわけて遂行した。
結果と考察
(1) 糖尿病患者において健常者に比較し、VZV特異的細胞性免疫能の低下が認められた。 (2) 基礎疾患別帯状疱疹発症頻度を判定し,基礎疾患別帯状疱疹発症リスクを評価した。 (3) 造血幹細胞移植患者でのHHV-6の再活性化は移植後2週間から4週間にかけて約半数の患者で認められた。CMVやEBVの再活性化とは異なる感染パターンであり、再活性化にかかわる宿主側因子も異なっている可能性が示唆された。 (4) 146F7(別名DPPC)は、ヒトCMVの遺伝子発現前過程の阻害という新規機序を有し、動物CMVにも効果を示した。 (5) ヒト化マウスモデルにおいてEBウイルス特異的T細胞免疫応答が誘導され、実際にEBV感染に対する防御機構として働くことを示した。 (6) VZV IE62に対するモノクローナル抗体が、痛覚にかかわる脳由来栄養因子(BDNF)と免疫交差し、その生理活性を増強し、末梢神経損傷マウスで、痛覚過敏を生じることが確認された。(7) 複数のsiRNA発現カセットを搭載可能なAdベクターの開発を行った。
結論
本年度は以上の研究によって、臓器移植や悪性腫瘍による免疫低下状態で発生するウイルス感染症の予防と治療に関する研究における各研究項目についてさらに進展させた。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200829012B
報告書区分
総合
研究課題名
臓器移植や悪性腫瘍による免疫低下状態で発生するウイルス感染症の予防と治療に関する研究
課題番号
H18-新興・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
森 康子(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 直樹(国立感染症研究所 ウイルス第1部)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 長谷川 秀樹(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 近藤 一博(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 水口 裕之(医薬基盤研究所 基盤研究部)
  • 藤原 成悦(国立成育医療センター研究所 母児感染研究部)
  • 白木 公康(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 末松 佐知子(医薬基盤研究所 基盤研究部)
  • 羽田 敦子(財団法人田附興風会医学研究所 第1研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器移植後患者や悪性腫瘍患者の免疫低下状態において、ヘルペスウイルス(HCMV、HHV-6、HSV、VZV、EBVなど)が再活性化し、重篤な感染症を引き起こす。本研究においては、ヘルペスウイルス感染症の発症機序解明および早期診断法や効果的な予防法、治療法開発のための基盤確立を目的とする。
研究方法
本研究は、免疫低下状態におけるウイルス感染症の病態解明、免疫低下状態におけるウイルス再活性化の早期診断法および迅速検査法の確立のための基盤研究、新規抗ウイルス剤候補の検索およびその効果判定、免疫低下状態におけるウイルス感染症の効果的な予防法の開発のための基盤的研究にわけて遂行した。
結果と考察
(1) VZV特異的細胞性免疫能の測定法として皮内テストの有用性を示した。 (2) HHV-6感染によって誘導されるサイトカイン、ケモカインを同定した。 (3) HHV-6の初感染における伝播機構をin vitroにおいて明らかにした。 (4) 全血から抽出したDNAをリアルタイムPCR法でモニタリングすることにより、HHV-6再活性化を確実に診断ができることが明らかとなった。 (5) 移植後HHV-6脳炎患者髄液中のウイルスDNA量は極めて高いことを明らかにした。 (6) ランダムな化合物を検索し、CMV及びVZVに対し効果的な化合物を同定した。(7) 造血幹細胞移植後の免疫不全患者からCMVの薬剤耐性ウイルスを分離し、その性状解析を行った。 (8) 腎移植で使用される免疫抑制剤が抗CMV効果を有し、ガンシクロビルと相乗効果を示すことを明らかにした。 (9) ヒト化マウスを用いてEBV感染症モデルを作成し、その病態と免疫応答を再現した。 (10) 基礎疾患別帯状疱疹発症頻度を判定し,基礎疾患別帯状疱疹発症リスクを評価した。 (11) 悪性腫瘍に伴った免疫低下のモデル動物として成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)のモデル動物を用い白血病を発症する単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)潜伏感染モデルを作成した。
結論
本研究によって、免疫低下状態におけるヘルペスウイルス感染症の発症機序および病態解明、免疫低下状態におけるウイルス再活性化の早期診断法、薬剤耐性ウイルスの耐性機序解明とそれらに対する抗ウイルス剤検索、免疫低下状態におけるウイルス感染症の効果的な予防法の開発のための総合的科学基盤が進展した。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200829012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
VZV特異的細胞性免疫能の測定法として皮内テストの有用性を示した。ランダムな化合物を検索し、CMV及びVZVに対し効果的な化合物を数種同定した。ヒト化マウスを用いてEBV感染症モデルを作成し、その病態と免疫応答を再現した。
臨床的観点からの成果
移植後HHV-6脳炎患者髄液中のウイルスDNA量は極めて高いことを明らかにした。造血幹細胞移植後の免疫不全患者からCMVの薬剤耐性ウイルスを分離し、その性状解析を行った。そして、薬剤耐性CMVに関しては未承認薬による治療が奏功した。腎移植で使用される免疫抑制剤が抗CMV効果を有し、ガンシクロビルと相乗効果を示すことを明らかにした。
ガイドライン等の開発
-
その他行政的観点からの成果
VZV再活性化の早期診断法の確立、帯状疱疹発症の予防および重症化の防止に繋がる。造血幹細胞移植後HHV-6脳炎の診断・治療ガイドラインの整備。 新規治療法の開発による保健医療向上への貢献が期待できる。薬剤耐性ウイルスによる難治性感染症に標準的に使用できる抗ウイルス薬の導入により、難治性ヘルペスイルス感染症を減らし、入院日数の減少などにも寄与できる。
その他のインパクト
-

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
29件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
56件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukui Y, Shindoh K, Yamamoto Y,et al.
Establishment of a cell-based assay for screening of compounds inhibiting very early events in cytomegalovirus replication cycle and characterization of a compound identified using the assay.
Antimicrob Agents Chemother , 52 , 2420-2427  (2008)
原著論文2
Nozawa N, Yamamoto Y, Fukui Y et al
Identification of a 1.6 kb genome locus of guinea pig cytomegalovirus required for efficient viral growth in animals but not in cell culture.
Virology , 379 , 45-54  (2008)
原著論文3
Ohashi M, Sugata K, Ihira M, et al.
Human herpesvirus 6 infection in adult living related liver transplant recipients.
Liver Transplant , 14 , 100-109  (2008)
原著論文4
Fujita A, Ihira M, Suzuki R et al
Elevated serum cytokine levels are associated with human herpesvirus 6 reactivation in hematopoietic stem cell transplantation recipients.
J Infect , 57 , 241-248  (2008)
原著論文5
Imadome K, Shimizu N, Yajima M et al
CD40 signaling activated by Epstein-Barr virus promotes cell survival and proliferation in gastric carcinoma-derived human epithelial cells.
Microbes Infect  (2009)
原著論文6
Shimada Y, Suzuki M, Shirasaki F,et al
Genital herpes due to acyclovir-sensitive herpes simplex virus caused secondary and recurrent herpetic whitlows due to thymidine kinase-deficient/temperature-sensitive virus
J Med Virol , 79 , 1731-1740  (2007)
原著論文7
Akahori Y, Suzuki K, Daikoku T et al
Characterization of Neutralizing Epitopes of Varicella-Zoster Virus Glycoprotein H.
J Virol , 83 , 2020-2024  (2009)
原著論文8
Sadaoka, K., S. Okamoto, Y, Gomi, Y, et al
Measurement of varicella-zoster virus (VZV)-specific cell-mediated immunity - Comparison of VZV-skin test and interferon-gamma ELISPOT assay.
The Journal of Infectious Diseases , 198 , 1327-1333  (2008)
原著論文9
Takemoto M, Imasawa T, Yamanishi K, et al
Role of dendritic cells infected with human herpesvirus 6 in virus transmission to CD4+ T cells.
Virology  (2009)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-