文献情報
文献番号
200829006A
報告書区分
総括
研究課題名
野生動物由来狂犬病およびリッサウイルス感染症の汚染把握を目的とした国際疫学調査
課題番号
H18-新興・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 健夫(日本大学生物資源科学部 獣医衛生学研究室)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 琢也(日本大学生物資源科学部 獣医衛生学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
致死性感染症である狂犬病は、現在我が国では発生していないが、先進国を含む世界各地では発生が認められ、常在地も存在している。本病の海外からの侵入を阻止するためには、狂犬病常在地での疫学状況を把握し、科学的根拠に基づく侵入防止対策を確立しなければならない。また世界的課題として、コウモリを代表とする野生動物を由来とする狂犬病の発生がある。そこで本研究は、野生動物由来狂犬病の多発地域であるブラジルにおいて、コウモリとその生息地域で飼育される家畜を対象に分子疫学調査を行った。
研究方法
ブラジルの共同研究拠点であるサンパウロ大学および各地域の州立診断センターの協力を得て、吸血コウモリをはじめとした各種野生動物およびウシなどの家畜から分離した狂犬病ウイルス(RABV)を確保した。また同時に、現地で疫学調査を行い、履歴情報を収集した。得られたウイルスの遺伝子および系統樹解析を行った。分離株の地理的分布を明らかにするために、分離場所のマッピングを行った。
結果と考察
(1)ブラジルの各州から分離されたRABVウシ分離株666検体および吸血コウモリ分離株18検体を用いて吸血コウモリ由来RABVの分子系統学的および地理学的解析を行った。ウシ分離株の99.2%は、吸血コウモリ由来で、その他はイヌ由来株であった。系統樹の分岐パターンから、吸血コウモリ由来ウシ分離株は、分離地域を反映した多様な遺伝子系統に区分された。各系統の地域分布は河川周辺に認められ、また山脈で区分される傾向があった。
(2)RABVの糖蛋白質に存在する333位のアミノ酸残基RまたはKは、成マウスに対する病原性の発揮に必要であり、この部位のアミノ酸残基の置換は、ウイルスの弱毒化または非病原性への変化を引き起こすと考えられている。しかし、この変異は、これまで固定株においてのみ認められている。本研究では、ブラジルの非吸血性コウモリから分離され、マウスに致死性を示すRABVにおいて、333位のアミノ酸残基の置換(→333H、→333Nおよび→333Q)を発見した。
(2)RABVの糖蛋白質に存在する333位のアミノ酸残基RまたはKは、成マウスに対する病原性の発揮に必要であり、この部位のアミノ酸残基の置換は、ウイルスの弱毒化または非病原性への変化を引き起こすと考えられている。しかし、この変異は、これまで固定株においてのみ認められている。本研究では、ブラジルの非吸血性コウモリから分離され、マウスに致死性を示すRABVにおいて、333位のアミノ酸残基の置換(→333H、→333Nおよび→333Q)を発見した。
結論
(1)吸血コウモリ由来RABVは、分離地域を反映した多様な遺伝子系統を形成しており、ウシ狂犬病の疫学的特徴は、吸血コウモリの生態および地理的要因が深く関与することが示唆された。
(2)これまでに知られていないアミノ酸置換を有する病原性のRABV株が野外に存在していて、それらが感染環の形成に関与している可能性が示唆された。
(2)これまでに知られていないアミノ酸置換を有する病原性のRABV株が野外に存在していて、それらが感染環の形成に関与している可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2010-01-12
更新日
-