新しい音伝導ルートによる新補聴システムの開発-現存の気導補聴器が使用できない難聴者(耳漏のある耳、外耳道閉鎖症など)も使用可能な補聴器の開発-

文献情報

文献番号
200828015A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい音伝導ルートによる新補聴システムの開発-現存の気導補聴器が使用できない難聴者(耳漏のある耳、外耳道閉鎖症など)も使用可能な補聴器の開発-
課題番号
H20-感覚器・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
細井 裕司(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阪口 剛史(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部)
  • 西村忠己(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部)
  • 田村 光男(NECトーキン株式会社 メカトロニックデバイス事業部)
  • 舘野 誠(リオン株式会社 聴能技術部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現存の気導補聴器が使用できない難聴者を主たる対象として、気導でも骨導でもない新しい音伝導ルートである軟骨導を用いた補聴器を開発する。手術をすることなく良好な音伝達ができる補聴器の開発は、BAHA(Bone Anchored Hearing Aid:手術によって頭蓋骨にボルトを埋め込み、このボルトに骨導振動子を固定するタイプの骨導補聴器)の適応の難聴者に大きな福音となる。
研究方法
1.軟骨導振動子の検討

2.補聴器用として最適の軟骨導振動子の開発
結果と考察
軟骨導補聴器を新たに2台試作し、外耳道閉鎖症患者や、耳漏がある患者さんに装着してもらい、その音の聞こえ、装用感などについて評価を進めている。音の聞こえについては、日常会話の聴取、音場における純音聴力検査、語音聴力検査、簡易な音像定位の検査などを行っている。また、比較のため、耳科学的正常者を被験者とした測定、既存の気導補聴器や骨導補聴器を用いた測定なども併せて行っている。これら実験の結果、例えばある外耳道閉鎖症の患者さんは、軟骨導補聴器により日常会話を聴取するに十分な補聴効果を得ることができ、また、両耳装用することにより音の方向感についても一定の認識が可能であることが明らかになってきた。その一方で、外耳道がほぼ完全に閉鎖している場合、医療用テープを用いて振動子を固定する必要があるなど、振動子の形状ならびには固定法にさらなる改良の必要性が見いだされたケースもあり、その試作、評価を進めているところである。一方で、耳漏がある患者さんの実験においては、伝音系以外にも聴力損失の原因があったことが影響してか、若干の音量不足を訴える患者さんもいらした。また、聴取音について、「響く感じがし、語音の聴取がしづらいときがある。」と訴える方もいらした。ただ、振動子の固定、装用感などについては特段の問題は見受けられなかった。
結論
上述の如く、試作機の作成、ならびにその試用を進めた結果、期待されていた効果が得られる見込みが立ってきた。本補聴器の開発が成功すれば、外耳道に問題があって気導耳栓を装着できない難聴者(耳漏がある耳、外耳道閉鎖症など)に対して、既存の補聴器以外の選択肢を提供できることとなり、①手術を要せず、②感染の危険などがない、③左右の内耳に別々の音情報を伝達可能な新たなソリューションを呈示できることになる。 平成20年度の研究過程において、振動子固定および出力特性の改良など、平成21年度以降に取り組むべき課題も明確になってきたので、それらを解決させ、当初の計画通り軟骨伝導補聴器を完成させ、提供できるようになるよう取り組む予定である。

公開日・更新日

公開日
2009-10-13
更新日
-