先天性難聴児の聴覚スクリーニングから就学後までの補聴器・人工内耳装用効果の総合追跡研究

文献情報

文献番号
200828003A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性難聴児の聴覚スクリーニングから就学後までの補聴器・人工内耳装用効果の総合追跡研究
課題番号
H18-感覚器・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福島 邦博(岡山大学 医学部)
  • 坂田 英明(目白大学 保健医療学部)
  • 神田 幸彦(神田耳鼻咽喉科entクリニック)
  • 城間 将江(国際医療福祉大学)
  • 内山 勉(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 松永 達雄(東京医療センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
就学年齢を迎えた人工内耳装用児の言語性IQについて、就学前教育を聴覚口話法のみの難聴児通園施設で受けた場合と、手話中心に聴覚口話法を併用するろう学校で受けた場合を比較し、教育方法の違いの影響を言語性IQと動作性IQを分けて調べた。
研究方法
東京の聴覚口話法のみの教育の難聴児通園施設と、手話を中心として聴覚口話法を併用する教育の関東某県の公立ろう学校幼稚部の生徒を対象とし、WPSSI知能診断検査を用いて言語性IQと動作性IQに分けて評価した。
結果と考察
結果:難聴児通園施設で難聴以外の他の合併をしていない人工内耳装用児群の言語性IQの平均値は95、動作性IQの平均値は121、合計216であった。ろう学校で難聴以外に他の問題を合併していない人工内耳装用児群の言語性IQの平均値は66、動作性IQの平均値は99、合計165であった。難聴児通園施設で難聴に加え、学習障害・自閉を伴う群の言語性IQの平均値は53、動作性IQの平均値は102、合計155であった。
考察:音声言語を身につけさせるには、言語学者のチョムスキーはシャワーの如く言葉を浴びせることであるという。この本質は、聴いて考え、考えた内容を言葉で表現するやりとりを、毎日毎日繰り返すことで身につくということであろう。発達期の脳の可塑性があるうちに、家庭でも療育施設でも繰り返すことで、聴覚的な認知と理解が進歩し、その結果として良い発音で話すようになるということである。人工内耳装用児の中には、一部にロボット語とでも言うべき異常構音で話すものが含まれる。この原因は全く解明されていない。このような子供は恐らく人工内耳で聴いたままのものを音声で表現しているのではないか。難聴に加え学習障害・自閉を伴う群の言語性IQは著しく低い。この理由は、聴覚言語中枢を制御する高次の脳機能レベルの知的および精神活動に問題があるための結果ではないかと思われる。
結論
人工内耳手術をした場合、就学年齢の言語性IQは、聴覚口話法だけの難聴児通園施設で術前術後も教育を受け、他に合併症がない場合、平均値は95で高い。術前術後もろう学校で手話中心の教育を受けた場合、平均は66でボーダーラインである。さらに、難聴児通園施設で教育を受けた場合は、平均は53で中等度になる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200828003B
報告書区分
総合
研究課題名
先天性難聴児の聴覚スクリーニングから就学後までの補聴器・人工内耳装用効果の総合追跡研究
課題番号
H18-感覚器・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 福島 邦博(岡山大学 医学部)
  • 坂田 英明(目白大学 保健医療学部)
  • 神田 幸彦(神田耳鼻咽喉科entクリニック)
  • 城間 将江(国際医療福祉大学)
  • 内山 勉(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 松永 達雄(東京医療センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
就学年齢を迎えた人工内耳装用児の言語性IQについて、就学前教育を聴覚口話法のみの難聴児通園施設で受けた場合と、手話中心に聴覚口話法を併用するろう学校で受けた場合を比較し、教育方法の違いの影響を言語性IQと動作性IQを分けて調べた。
研究方法
東京の聴覚口話法のみの教育の難聴児通園施設と、手話を中心として聴覚口話法を併用する教育の関東某県の公立ろう学校幼稚部の生徒を対象とし、WPSSI知能診断検査を用いて言語性IQと動作性IQに分けて評価した。
結果と考察
結果:難聴児通園施設で難聴以外の他の合併をしていない人工内耳装用児群の言語性IQの平均値は95、動作性IQの平均値は121、合計216であった。ろう学校で難聴以外に他の問題を合併していない人工内耳装用児群の言語性IQの平均値は66、動作性IQの平均値は99、合計165であった。難聴児通園施設で難聴に加え、学習障害・自閉を伴う群の言語性IQの平均値は53、動作性IQの平均値は102、合計155であった。
考察:音声言語を身につけさせるには、言語学者のチョムスキーはシャワーの如く言葉を浴びせることであるという。この本質は、聴いて考え、考えた内容を言葉で表現するやりとりを、毎日毎日繰り返すことで身につくということであろう。発達期の脳の可塑性があるうちに、家庭でも療育施設でも繰り返すことで、聴覚的な認知と理解が進歩し、その結果として良い発音で話すようになるということである。人工内耳装用児の中には、一部にロボット語とでも言うべき異常構音で話すものが含まれる。この原因は全く解明されていない。このような子供は恐らく人工内耳で聴いたままのものを音声で表現しているのではないか。難聴に加え学習障害・自閉を伴う群の言語性IQは著しく低い。この理由は、聴覚言語中枢を制御する高次の脳機能レベルの知的および精神活動に問題があるための結果ではないかと思われる。
結論
人工内耳手術をした場合、就学年齢の言語性IQは、聴覚口話法だけの難聴児通園施設で術前術後も教育を受け、他に合併症がない場合、平均値は95で高い。術前術後もろう学校で手話中心の教育を受けた場合、平均は66でボーダーラインである。さらに、難聴児通園施設で教育を受けた場合は、平均は53で中等度になる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200828003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
補聴器あるいは人工内耳装用児が就学年齢になった時の言語能力をWPSSI知能診断検査で客観的に比較した。
臨床的観点からの成果
先天性難聴児は早期発見、早期補聴を行い、もし成果が乏しければ2歳には人工内耳手術をする方が就学年齢になった時に高いレベルに到達することがわかった。
ガイドライン等の開発
ガイドラインはまだ完成していないが、そのための準備ができた。
その他行政的観点からの成果
新生児聴覚スクリーニングは全出生数に対し公的に行うのが最も良い方法であることを示した。
その他のインパクト
公開シンポジウムは3回行い、大きな反響があった。全国的な新聞にも3度掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2017-05-23