日本人の緑内障に対するより有効な予防と治療 臨床的・基礎的エビデンスの確立

文献情報

文献番号
200828001A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の緑内障に対するより有効な予防と治療 臨床的・基礎的エビデンスの確立
課題番号
H18-感覚器・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
新家 眞(東京大学 医学部外科学専攻感覚運動機能医学眼科学)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 春樹(新潟大学 医学部)
  • 澤口 昭一(琉球大学 医学部)
  • 原 英彰(岐阜薬科大学 薬学部)
  • 金本 尚志(広島大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 緑内障は、40歳以上日本人での有病率5.0%であり、今後の高齢化に伴い更なる有病率の増加が予想され、又、本邦失明原因1位の眼疾でもある。緑内障にはいくつかの病型があり、各々に経過・予後が大きく異なる。個々の患者の病型・病期を正確に診断し最適な治療法を選択することが重要である。本研究では、「日本人の緑内障」の様々な病型・病期に対するより科学的且つ実証的な診療指針を確立し国民医療に還元することを目的に、基礎的、臨床的な両面からの検討を行う。
研究方法
以下の臨床研究、基礎研究を行う。(1)眼圧が正常平均値より低いNTG患者の臨床像と治療に関する前向き研究、(2)近視乳頭を合併した正常眼と緑内障眼の視神経乳頭形態の三次元的解析と緑内障スクリーニング法の開発、(3)疫学データに基づく狭隅角眼の眼球構造の解析とリスクファクターの検討、(4)後期緑内障の臨床像と予後に関連する因子の検討、(5)緑内障動物モデル及び分子生物学的研究:①高眼圧モデル猿眼における高眼圧及び視神経障害の高次脳機能への影響についての検討。②負荷条件下網膜神経節細胞の神経障害に対する各種薬剤の効果の検討、③緑内障性網膜神経障害に関与するタンパクの機能解析、④網膜神経節細胞蛍光発色マウスと緑内障モデルマウスと交配したマウスの眼圧と神経障害の検討。
結果と考察
(1)全国11施設による共同研究を行い、約70名の患者がエントリーされ、エントリー時データの横断的解析などを行った。(2)スペクトラル・ドメインOCTを用い日本人眼の正常人眼データベースを構築した。(3)超音波生体顕微鏡データを定量的に解析ソフトウエアにより、疫学データにもとづく閉塞隅角眼の隅角構造を検討した。(4)全国7施設により組織された共同研究グループにより、後期緑内障患者約200名の横断的解析を行った。(5)①酸化ストレスによるラット網膜神経節細胞死誘導培養系を用いてフラボノイドなどの神経保護効果を検討した。②BiP選択的誘導剤を見出し、それが小胞体ストレス誘発の神経細胞障害に有効であることを見出した③緑内障患者における前房水中を調べた結果、酸化ストレス状態が高いことを示す可能性のある抗酸化酵素の活性上昇が見られた
結論
以上の研究により、日本人の緑内障の特徴が明らかとなり、それに特化した治療法の開発に有用な多くの新規知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200828001B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人の緑内障に対するより有効な予防と治療 臨床的・基礎的エビデンスの確立
課題番号
H18-感覚器・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
新家 眞(東京大学 医学部外科学専攻感覚運動機能医学眼科学)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 春樹(新潟大学 医学部)
  • 澤口 昭一(琉球大学 医学部)
  • 原 英彰(岐阜薬科大学 薬学部)
  • 金本 尚志(広島大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 緑内障は、40歳以上日本人での有病率5.0%であり、今後の高齢化に伴い更なる有病率の増加が予想され、又、本邦失明原因1位の眼疾でもある。緑内障にはいくつかの病型があり、各々に経過・予後が大きく異なる。個々の患者の病型・病期を正確に診断し最適な治療法を選択することが重要である。本研究では、「日本人の緑内障」の様々な病型・病期に対するより科学的且つ実証的な診療指針を確立し国民医療に還元することを目的に、基礎的、臨床的な両面からの検討を行う。
研究方法
以下の臨床研究、基礎研究を行った。(1)眼圧が正常平均値より低いNTG患者の臨床像と治療に関する前向き研究、(2)近視乳頭を合併した正常眼と緑内障眼の視神経乳頭形態の三次元的解析と緑内障スクリーニング法の開発、(3)疫学データに基づく狭隅角眼の眼球構造の解析とリスクファクターの検討、(4)後期緑内障の臨床像と予後に関連する因子の検討、(5)緑内障動物モデル及び分子生物学的研究:①高眼圧モデル猿眼における高眼圧及び視神経障害の高次脳機能への影響についての検討。②負荷条件下網膜神経節細胞の神経障害に対する各種薬剤の効果の検討、③緑内障性網膜神経障害に関与するタンパクの機能解析、④網膜神経節細胞蛍光発色マウスと緑内障モデルマウスと交配したマウスの眼圧と神経障害の検討。
結果と考察
(1)全国11施設による共同研究を行い、約70名の患者がエントリーされ、エントリー時データの横断的解析などを行った。(2)緑内障眼の乳頭形状の解析や日本人眼の正常人眼データベースを構築した。(3)超音波生体顕微鏡データ解析ソフトウエアを開発し、疫学データにもとづく閉塞隅角眼の隅角構造を検討した。(4)全国7施設により組織された共同研究グループにより、後期緑内障患者約200名の横断的解析を行った。(5)①酸化ストレスによるラット網膜神経節細胞死誘導培養系を用いてβ遮断剤、フラボノイドなどの神経保護効果を検討した。②BiP選択的誘導剤が小胞体ストレス誘発の神経細胞障害に有効であることを見出した③緑内障患者の前房水中の酸化酵素の活性上昇が見出した。
結論
以上の研究により、日本人の緑内障の特徴が明らかとなり、それに特化した治療法の開発に有用な多くの新規知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200828001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「眼圧が正常平均値より低い緑内障に関する研究」や「後期緑内障の検討」では、それらの患者の臨床像が多数症例をもとに初めて明らかとなった。「視神経乳頭形態の解析」では、日本人に多い近視乳頭の形態的な特徴に関して多くの新知見を得、新規緑内障診断法を開発した。「疫学的データに基づいた前眼部構造の解析」では、前眼部の解析に関して新規定量的解析法を確立した。「分子生物学的研究及び緑内障モデル研究」では、独自に開発した複数の緑内障動物モデルを用いて多くの新規神経保護作用薬を発見・評価することができた。
臨床的観点からの成果
「眼圧が正常平均値より低い緑内障に関する研究」や「後期緑内障の検討」の結果をもとに、本邦に多いそれらの患者に対してより効果的な治療指針の確立につながると考えられる。「視神経乳頭形態の解析」により本邦に非常に多い近視乳頭においても信頼性の高い緑内障診断が可能となった。「前眼部構造の解析」の結果は閉塞隅角緑内障のリスクファクターや予防法の確立に役立つものである。「分子生物学的研究及び緑内障モデル研究」により評価された視神経保護薬が緑内障性視神経症の治療の刷新につながることが期待される。
ガイドライン等の開発
今後、「緑内障診療ガイドライン(日本緑内障学会)」等の作成において、本研究、特に「眼圧が正常平均値より低い緑内障に関する研究」、「後期緑内障の検討」、「近視乳頭形態の解析」、「前眼部構造の解析」の結果が直接反映されることが予想される。
その他行政的観点からの成果
本邦に非常に多い「近視を合併した緑内障」と「眼圧が非常に低い緑内障」等の臨床像や新しい診断法が確立されたことは、治療が難しいことが少なくないそれらの緑内障の患者をより早期に発見し、不幸な転帰をたどる患者の減少につながることが期待される。「後期緑内障の検討」の結果は、厚生福祉政策などの主たる対象となる末期緑内障患者に対する適切な社会的ケアを考える上で貴重な情報となる。また、「前眼部構造の解析」の結果は、失明に直結する閉塞隅角緑内障の効果的且つ安全な予防法などの確立につながり得る。
その他のインパクト
今回の研究成果をもとに緑内障患者や家族を中心とした一般の人を対象に、「緑内障研究生発表市民公開講座 日本人の緑内障 特徴とその治療」を平成21年1月17日に横浜市で開催し、400名以上の聴衆にご来場いただいた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
「緑内障研究生発表市民公開講座 日本人の緑内障 特徴とその治療」(平成21年1月17日横浜市)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-