トゥレット症候群の治療や支援の実態の把握と普及啓発に関する研究

文献情報

文献番号
200827026A
報告書区分
総括
研究課題名
トゥレット症候群の治療や支援の実態の把握と普及啓発に関する研究
課題番号
H20-障害・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
金生 由紀子(東京大学医学部附属病院 こころの発達診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 太田昌孝(心の発達研究所)
  • 星加明德(東京医科大学病院小児科)
  • 飯田順三(奈良県立医科大学医学部看護学科)
  • 岡田俊(京都大学医学部附属病院精神科神経科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
トゥレット症候群は運動チック及び音声チックが慢性的に持続する重症チック障害であり、発達障害に含まれる。本研究では、トゥレット症候群患者について、適応を妨げる症状、治療や支援の実態及びニーズを多様な場面で調査して、その概略を明らかにすることを目指した。
研究方法
1.医療機関での調査:担当患者について、チック重症度の評価、機能の全体的評価などを検討した。事象関連電位、近赤外線スペクトロスコピーによる脳血流量の測定も行った。また、精神科医、小児科医を対象に全国規模でトゥレット症候群に関する診療経験の調査を行った。
2.教育機関での調査:情緒障害通級指導学級担当教諭を対象に、チックやトゥレット症候群に関する認識や体験に関する質問紙調査を行った。
3.相談機関での調査:奈良県発達障害支援センター利用者に、チックやトゥレット症候群に関するアンケート調査を行った。埼玉県発達障害者支援センターの研修内容及びチックやトゥレット症候群に関する相談事例の調査を行った。
4.トゥレット協会会員への調査:トゥレット協会が主体となり会員を対象にトゥレット症候群の多様な側面に関する調査を行ったデータを解析した。
結果と考察
1.チック重症度及び全体的な機能によって薬物療法が異なり、音声チックと患者の不安が重要と示唆された。また、トゥレット症候群では刺激に対する脳の自動処理機構の障害が示唆された。小児科医は精神科医よりも児童例、軽症例を診る傾向があったが、共に抗精神病薬の治療が主体であった。
2.トゥレット症候群との言葉を多くの教諭は知っていた。チックやトゥレット症候群に関する多様なニーズから、啓発活動に向けて貴重な情報が得られた。
3.発達障害者支援センターの利用者でも、トゥレット症候群との言葉を知っている者は少なかった。トゥレット症候群を研修で取り上げると相談事例が増えており、啓発活動によってニーズが引き出される可能性が示唆された。
4.最も困っている症状では、音声チックが最多であった。睡眠の乱れ、突然の感情の爆発などの併存症状もしばしば問題であった。適切な診断や治療に至るのは容易ではないこと、教育や労働の場でも十分な理解・支援が得にくいことなどが示唆された。
結論
多様な場の調査から、チックの多様性に加えて併存症がトゥレット症候群への理解を妨げていた。チックと共に併存症も考慮した対応を整備して普及啓発を進める必要性が確認された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-28
更新日
-