地域相談ネットワークによる障害者の権利擁護の可能性

文献情報

文献番号
200827020A
報告書区分
総括
研究課題名
地域相談ネットワークによる障害者の権利擁護の可能性
課題番号
H19-障害・若手-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
堀口 寿広(国立精神・神経センター精神保健研究所 社会精神保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 高梨憲司(社会福祉法人愛光 視覚障害者総合支援センターちば)
  • 佐藤彰一(法政大学大学院 法務研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者への理解を広げ障害者の権利擁護を目的とした地域相談支援のあり方を研究する目的で、地域の相談ネットワークによる相談活動の実施状況と制度の認知度を調査し、障害者の権利擁護について法制度を設けたとき地域社会に生じる変化を検討した。
研究方法
障害者条例を施行している千葉県を対象地域としてアンケート調査を実施した。6,065箇所の機関と、障害者の権利擁護機能を有する機関と専門職30箇所を調査した。また、条例および相談員制度の認知度を検討し、さらに障害者条例の制定を目指す自治体の取り組みを収集した。
結果と考察
アンケート調査では、県内各機関から1,574件の回答を得た。平成19年度の相談は、のべ912,602件で、「障害があることを理由とした差別」に関する相談はのべ1,765件あり、相談機関1箇所あたり(平均)年間の相談の1.4%であった。20年7月から10月の相談件数は前年度と比べて増加していたが、「障害があることを理由とした差別」に関する相談件数には年次差を認めなかった。障害者の権利擁護機能を有する機関と専門職からは23件の回答を得た。平成19年度の相談は、のべ75,976件で、「障害があることを理由とした差別」に関する相談は510件あり、相談機関1箇所あたり年間の相談件数の23%であった。4ヶ月間の相談件数を19年度と20年度で比較すると、多くの領域で相談件数は増加しており、特に雇用に関する相談が増加していた。条例を知っているという回答は48%あり、昨年度(61%)より低かった。昨年度と同様に機関によって認知度の差を認めた。回答者の半数が相談員制度を知らないと回答し、制度の存在を知っていても連絡の方法を知らないというものがあった。そして、障害者の権利擁護を目的とした各地の条例案について資料を収集し検討したところ、障害の定義が拡充されている一方で、制定のためには地域住民とともに取り組む必要があることがわかった。
結論
障害者の権利擁護について条例を制定したことによって、「障害があることを理由とした差別」の相談が集中し相談ネットワークの機能が低下する事態は見られないことが明らかになった。また、障害者の権利擁護のための相談活動について関係者は市町村の役割に期待を寄せていたが、ネットワークの構築と並行して、地域住民の理解を広げ制度の認知を高めるための取り組みを行う必要があると考えた。

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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