ライフステージに応じた広汎性発達障害者に対する支援のあり方に関する研究:支援の有用性と適応の評価および臨床家のためのガイドライン作成

文献情報

文献番号
200827014A
報告書区分
総括
研究課題名
ライフステージに応じた広汎性発達障害者に対する支援のあり方に関する研究:支援の有用性と適応の評価および臨床家のためのガイドライン作成
課題番号
H19-障害・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
神尾 陽子(国立精神・神経センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小山 智典(国立精神・神経センター 精神保健研究所)
  • 本田 秀夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)
  • 安達 潤(北海道教育大学 教育発達専攻)
  • 市川 宏伸(東京都立梅ヶ丘病院)
  • 近藤 直司(山梨県立精神保健福祉センター・山梨県立中央児童相談所)
  • 笠原 麻里(国立成育医療センター こころの診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
広汎性発達障害者(Pervasive Develop- mental Disorders: PDD)の長期的予後を高めるためには、早期からライフステージを通して一貫し、かつ各ライフステージに応じた支援を行う必要がある。そのような支援のあり方を提案するために、本研究は、①わが国のPDD者の長期予後の実態を、客観的および主観的な側面から明らかにし、②各ライフステージ毎に長期予後に関連する個人要因と環境要因を同定し、③PDD長期予後の判定基準を提案し、④各ライフステージに応じた支援方やアセスメント・システムの開発と提案を行い、⑤専門家向けのガイドラインを開発する、ことを目的とする。
研究方法
(a)大規模後ろ向き調査
予備調査を経て家族、支援者(福祉・医療・保健)、本人のそれぞれが回答する3種類の調査票を作成した。全国の発達障害者支援センター、精神保健福祉センター、自閉症者通所、入所施設に約2000名分の調査票を配布し、本年度末に回収予定である。
(b)小規模後ろ向き調査
各研究分担者が、それぞれ早期幼児期、学童期、児童期、青年・成人期、周産期の異なるライフステージにあるPDD児・者の支援の設計、ツール、予測因子などについて抽出した。
(c)前向き介入研究
妊娠中期メンタルヘルススクリーニングによってハイリスクな発達障害を有する妊婦を面接による絞り込みをした。産後も育児支援を継続し、支援方法のモデル開発を行った。
結果と考察
1) 長期予後に影響する幼児期の行動特徴に、不安や恐怖、注意や行動の制御の問題が関連する可能性が示された。PDD症状それ自体や環境要因は予後を予測しなかった。
2) 子どもの早期支援に導入する際には、診断名に加えて、認知水準や興味の対象に応じた療育設計の有効性が示唆された。
3) 専門家が親と共通の理解で子どもの早期支援を始めるために、診断を受け入れにくい幼児期には診断名に重点を置くのではなく、児の長所への気づきを促す個別シートの活用により、診断前から支援へ導入することの可能性が示された。
4) 周産期の精神不健康の親の中に一定の割合で発達障害圏が確認された。出産後は特有の育児困難が生じることが報告された。周産期スクリーニングによる早期介入可能性が示された。
結論
小規模後ろ向き調査および前向き介入研究から一致して強調されるのは、早期からの継続的な支援の有無がPDD者の適応を左右しうること、そして早期支援は、PDD診断だけではなくて、包括的な精神医学的評価を行い、支援ニーズを把握することの重要性、であった。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-