医療的ケアを必要とする障害者と家族への支援策に関する調査研究

文献情報

文献番号
200827010A
報告書区分
総括
研究課題名
医療的ケアを必要とする障害者と家族への支援策に関する調査研究
課題番号
H19-障害・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
春見 静子(愛知淑徳大学 医療福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 飯野 順子(元都立村山養護学校)
  • 日浦美智江(社会福祉法人訪問の家)
  • 山田美智子(神奈川県こども医療センター)
  • 船戸正久(淀川キリスト教病院)
  • 岩崎隆彦(社会福祉法人水仙会淡路こども園)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
3,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療的ケアを必要とする障害者の家族の中から困難事例を選び、詳しく分析することにより、もっとも重い障害者でも在宅生活を送れるような家族支援のあり方を検討し、家族支援のモデルを提示する。
研究方法
障害者の団体を通して、困難事例と判断される事例を、東京、神奈川、大阪から4例ずつ、計12例出してもらい、主たる介護者(母親)にインタビューを行った。
 調査は自宅、病院、施設等で約90分、研究員2-4名で行った。面接調査の前に、調査票を送付し、家族構成、障害名と医療的ケアの状況、利用しているサービスの状況、1日(24時間)と1週間の標準的な生活時間についての記述を依頼し、それを参考に面接した。面接は主たる介護者の自由な発言を重んじながら進めた。
インタビューは被調査者の了解を得て録音し、それを文字に起こして、項目ごとに分類した。
結果と考察
インタビューの結果から、困難の種類に応じて家族を4つの類型に分け、類型ごとにニーズと課題と支援のあり方をモデルとして示した。
類型1 人工呼吸器をつけて在宅生活しているケース(5ケース)
  支援としては、医療機関における定期的なショートステイまたはレスパイトケアの確保と、医療的ケアができるホームヘルパーの養成が緊急の課題
類型2 気気管切開のケース (4ケース)
 支援としては、気管切開の障害者に対応できる職員が配置されているデイサービスの確保が必要。
類型3 主たる介護者が高齢なケース(3ケース)
 親子で長年かけて作り上げてきた地域での人間関係を断ち切ることなく継続できるような施策が必要
類型4 家族に複数の障害者がいるケース(3ケース)
 親や子どもの入院などの緊急事態が起こった時の支援体制を作っておくことと、医療的ケアに対応できるショートステイの確保が必要

結論
1 医療的ケアを受けながら在宅生活を送るためには、医療サービスと福祉サービスの両方が不可欠である。 
医療的ケアは生活支援行為であるという考えが共有することが必要。 実際、看護師でない職員が医療機関や主治医との連携の下に医療的ケアを行っている施設が多く見られたが、こうした個別的な取り組みを制度として認めていくような進展が望まれる
2 家族を全体として支援する体制が作られなければならない
3 障害者個人と家族のライフサイクルに応じた支援が求められている
4 サービスをコーディネートする機関が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-06-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200827010B
報告書区分
総合
研究課題名
医療的ケアを必要とする障害者と家族への支援策に関する調査研究
課題番号
H19-障害・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
春見 静子(愛知淑徳大学 医療福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 隆彦(淡路こども園園長)
  • 飯野 順子(元村山養護学校校長)
  • 船戸 正久(淀川キリスト教病院母子センター長)
  • 日浦 美智江(社会福祉法人訪問の家理事長)
  • 山田 美智子(神奈川県立こども医療センター顧問)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医学の進歩に伴って、重い障害を持ちながら医療的ケアを受けることで在宅生活を続けている障害者が増える中、施設等の受け入れやホームヘルプ等の在宅サービスの態勢が十分整っておらず、障害者の家族の負担はかなり重くなっている。本調査研究では、障害者と家族のニーズの調査と結果分析・検討によって、そうした人々の不安が軽減し危機的な生活がより安定したものとなるような有効な家族支援策を提示する。
研究方法
施設、障害者団体等の協力を得て、東京・神奈川・大阪でアンケート調査を実施し(平成19年度)、そこから抽出した12ケースについての生活実態と意識のヒアリング調査を行い(平成20年度)、医療的ケアの状況、家族の負担度とニーズ、利用しているサービスの状況等の分析をして、それに基づいた障害者・家族支援のモデル試案を作成する。
結果と考察
○アンケート調査(家族242人の回答)から
・ホームヘルパーが医療的ケアを十分できずに、家族がすべてを行っている場合が多い。
・ショートステイは、医療的ケアのある人を対象とせず、看護師の配置をしてない場合が多い。
・重心通所の短期入所枠が少ない上、2か月前の予約制で、緊急時には対応できない。
・18歳までは小児科医が主治医として診てもらえるが、それ以降は保障されていない。
・サービス調整や医療処置対応は、自らプランニングしコーディネートしなければならない。
○聴き取り調査(12困難事例)から
・ヘルパーを利用していない人は、ヘルパーが医療的ケアをできないことが理由となっている。
・ほとんどが訪問看護師の支援を受けているが、その時間は極端に少なく利用を困難にしている。
・短期入所の施設が少なく、可能となっているのは医療関連機関である。
・介護や調整は母親に委ねられ、その健康と家族関係の状況はかなり厳しいものとなっている。
以上の実態と問題点から、現状よりも進んだ家族支援のあり方を検討する必要があると考えた。
①在宅生活支援の医療と福祉の両サービス(多様な選択肢)、②家族を全体として支援する体制、③障害者本人と家族のライフサイクルに応じた支援、④サービス調整の機関。これらに対応する家族支援モデルを検討し結論としてその支援システムを導いた。
結論
①ヘルパーや生活支援員の技術研修制度を確立する。
②専門家のいる相談所を行政や地域に置く。
③人工呼吸器や気管切開の人に対する短期入所を可能とする重症心身障害者通所施設や作業所を整備する。
④家族中心のコーディネートを行う支援センター

公開日・更新日

公開日
2009-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200827010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
東京都、神奈川県、大阪府において重度障害者の家族、医療的ケアの障害者を受け入れている通所施設、専門医師へのアンケート調査とヒアリング調査を行うことにより、家族の生活実態とニーズ、支援の現状と問題点が具体的に明らかになった。調査から明らかになった課題は、①医療的ケアに関する法整備、②医療的ケアに関する研修制度の確立、③医療的ケアの必要な障害者を受け入れる施設についての特別な単価設定、④レスパイトとショートステイの充実、⑤地域の連携システムの構築、⑥医療事故に対する対応、である。   
臨床的観点からの成果
医療的ケアを受けつつ在宅で暮らす障害者と家族の中から、困難ケースを選別し、障害者と家族の問題別の類型化を試み、類型別の家族支援のあり方をモデルとして提案した。
類型としては、1、人工呼吸器を装着しているケースと気管切開のケース、2、主たる介護者が高齢者であるケース、3、重度の障害者が複数、家族にいるケースとし、いずれの類型の家族も負担が特に大きく、父、母、きょうだい、祖父母、個人としても、家族関係、親せき関係、社会関係においても特別な支援が必要でることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
家族と医療職以外の人が医療的ケアにかかわることに関しては、まず法整備が先行されなければならない。その際には、当然ガイドラインが検討されることになるであろう。
 とくに、医療的ケアの実施に関する研修内容や、方法に関するガイドラインが必要となるであろう、また、医療事故を防ぐためのガイドラインと、もしそれが起こった場合の対処についてのガイドラインも必要になると思われる。
その他行政的観点からの成果
医療的ケアのあり方については、厚生労働省に寄せられる各方面からの強い要望を受けて、該当する部会において慎重な議論が行われているが結論はまだ出されていない。本研究の成果を踏まえて平成20年9月27日、大阪府堺市において公開シンポジウム、「医療的ケアと自立を考えるシンポジウム」が開催された(参加者400人)。 研究員による基調講演に続いて行われたディスカッションにはシンポジストとして、厚生労働省障害福祉課長藤井氏が参加し活発な議論が展開された。
その他のインパクト
朝日新聞2008年1月19日付朝刊にて医療的ケアが取り上げられ、調査結果に基づく意見として、研究者の飯野順子さんが解説。同年9月27日に堺市の国際障害者交流センターにて公開シンポジウムを開催(約400名の参加)し、その様子はMBS毎日放送のニュースで伝えられた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
医療的ケアを必要とする障害者と家族の現状とニーズに関して、東京都、神奈川県、大阪府で行ったアンケート調査とヒアリング調査の結果の分析と考察を行う。
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
2008年9月21日、日本特殊教育学会、第46回大会において、本研究についての口頭発表を行った。 
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
公開シンポジウムの開催

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
春見静子
医療敵的ケアを必要とする障害者と家族に対する支援 
医療福祉研究 ,  (5) , 1-12  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-