精神障害者の自立支援のための住居確保に関する研究

文献情報

文献番号
200827008A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の自立支援のための住居確保に関する研究
課題番号
H18-障害・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
竹島 正(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神保健計画部)
研究分担者(所属機関)
  • 蓑輪 裕子(聖徳大学短期大学部 総合文化学科)
  • 宮田 裕章(東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神障害者の住居確保のソフト面の全体像を明らかにして「住居確保の手引き・事例集」(以下、「手引き・事例集」とする)にまとめることを目的として、①精神障害者への民間賃貸住宅の供給促進条件を明らかにすること、②グループホーム用住居を確保する際に各運営法人が行っている工夫をもとに住居確保の先進的取り組み事例の分析を行った。
研究方法
①不動産業者等の意識を把握するために行ったアンケート調査を整理・分析した。また不動産業者と支援者等との意見交換会を開催し、アンケートおよびインタビュー調査を行った。「手引き・事例集」に予想される目次立てに沿った内容で研究会を開催した。②住居確保の可能性と関連の予想される要因を踏まえて、全国でグループホームを運営している法人にインタビュー調査を行った。
結果と考察
①空室解消のために住宅を提供していきたいと考える業者は少なくないことがわかった。しかし住居の確保には、家主・近隣の理解の促進や、生活面やトラブル発生時の支援体制が必要と考えられた。顔の見える関係づくりは相談や仲介に結びついていた。「手引き・事例集」作成に向けて、研究成果および研究会等の内容をまとめた。②グループホームの運営法人は条件に適う物件を確保するために、《不動産業者との信頼関係の構築》、《精神障害者の家族が所有する物件の活用》、《関係者の所有物件の活用》といった工夫を行っていた。また法人側の費用負担を軽くするために、《開設費用の削減》、《開設資金の援助》を受けるなどの工夫を行っていた。精神障害者の住居確保には、地域でネットワークを作り、精神障害者を継続的に支援していくことが必要と考えられた。「手引き・事例集」を、住居を確保したい側、提供する側が共有することは、住居確保の取組を発展させる上で有効と考えられた。
結論
精神障害者の住居確保のソフト面の全体像を明らかにして「手引き・事例集」にまとめることを目的として、精神障害者への民間賃貸住宅の供給促進条件を明らかにした。またグループホーム用住居を確保する際に各運営法人が行っている工夫をもとに、住居確保の先進的取り組み事例の分析・体系化を行った。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200827008B
報告書区分
総合
研究課題名
精神障害者の自立支援のための住居確保に関する研究
課題番号
H18-障害・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
竹島 正(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神保健計画部)
研究分担者(所属機関)
  • 蓑輪 裕子(聖徳大学短期大学部 総合文化学科)
  • 宮田 裕章(東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神障害者の住居確保のソフト面の全体像を明らかにして、精神障害者の地域移行を進めるための住居確保と居住継続のための支援についての「住居確保の手引き・事例集」(以下、「手引き・事例集」とする)をまとめることを目的とした。
研究方法
不動産業者等への調査を行った。またグループホームの運営法人から住居を確保する際に行っている工夫について面接調査を行った。「住居確保研究会」における情報収集をもとに「手引き・事例集」を作成した。
結果と考察
不動産業者等への意識調査から、必要な支援策として、「入居後の相談先の確保」「緊急時の連絡先」などが明らかとなった。また病状悪化や人間関係のトラブルに伴い問題を生じており、服薬や通院状況の確認、周囲の人が病気を理解し適切に対応が必要とされていた。一方、空室解消のために住宅を提供していきたいと考える業者は少なくないことがわかった。グループホーム運営法人は、開設費用の削減や開設資金の援助獲得に努めていた。また空き部屋の確保などにより入居しやすい体制作りを行っていた。そして物件を確保するため、信頼できる不動産業者に紹介を依頼したり、当事者家族や法人関係者の所有物件を活用したりしていた。不動産業者・家主の理解を得るため、説明の仕方を工夫したり、入居者との交流によって抵抗を軽減したりする工夫をしていた。また、入居後の問題発生を防ぐため、症状の安定した入居者を選ぶ、地域の精神保健関連団体とネットワークを構築して入居者の健康状態を把握するといった工夫を行っていた。「住居確保研究会」では、行政から情報提供を受け、精神障害者の住居確保・居住支援の進め方について報告を行い、質疑・意見交換を行った。
結論
精神障害者への民間賃貸住宅供給には、賃貸料がきちんと支払われることを前提として、緊急時の対処や生活ルールの遵守、近隣の理解を得ることの重要性が確認された。各現場の行っている工夫を共有することで、住居確保の取組が進むことが期待される。「住居確保研究会」における情報収集をもとに、「手引き・事例集」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200827008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
精神障害者の住居確保のソフト面の全体像を明らかにして「住居確保の手引き・事例集」にまとめることを最終目的として、①民間賃貸住宅の供給促進条件を明らかにする、②住居確保の先進的取り組み事例を分析・体系化するという2つの視点から研究を行った。本研究の成果は、精神障害者の住居やグループホームの開発・計画研究の資料となるだけでなく、居住・支援を社会的共通資本として捉えていくことに役立つことが期待される。
臨床的観点からの成果
民間賃貸住宅の供給を阻害する要因は、緊急時の対処や生活ルールの遵守に対する不安、近隣の理解等であった。これらには、具体的な支援制度の内容や相談先を知ること、防災設備の設置や入居前の生活訓練、精神障害者との出会いの場を設けること等が有効であると考えられた。不動産業者、精神保健福祉従事者、行政等による住居確保の勉強会の開催は、不動産業者等に安心感を生み、供給を促進する効果があると考えられた。
ガイドライン等の開発
「精神保健医療福祉の改革ビジョン」は「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本的な方策を推し進めるとして、おおむね10年間の達成目標を提示している。「改革ビジョン」の達成には精神障害者の住居の確保は不可欠である。住居確保は現場におけるさまざまな実践や経験がある。それを交流・発展させていくことで、更なる展開が期待できる。 上記の研究結果と、本研究の一環として開催した「住居確保研究会」における情報収集をもとに、3年間の研究の成果物として「住居確保の実践的手引き・事例集」を作成した。
その他行政的観点からの成果
各都道府県・政令指定市が精神障害者の住居確保に関連する工夫や取り組みについての情報をどの程度保有しているかを調査した。居住サポート事業やあんしん賃貸住宅を普及させる際の基礎的な資料として役立つことが期待される。また不動産流通制度の概要と障害者等の住居確保への配慮の状況を整理した。さらに親等の資産活用のための信託制度や成年後見制度、リバースモーゲッジ等の利用可能性について検討した。
その他のインパクト
本研究班によって発足した「住居確保研究会」は関係者によって引き継がれ、分担研究者は精神障害者の住宅管理力に関する研究に取り組んでいる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
7件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyata H, Tachimori H & Takeshima T
Providing support to psychiatric patients living in the community in Japan: patient needs and care providers perceptions.
Int J Ment Health Syst , 2 , 5-  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-