1型糖尿病およびインスリン療法を要する2型糖尿病の自己管理能力向上に関する研究

文献情報

文献番号
200826006A
報告書区分
総括
研究課題名
1型糖尿病およびインスリン療法を要する2型糖尿病の自己管理能力向上に関する研究
課題番号
H18-糖尿病等・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
坂根 直樹(独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 和範(独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター 糖尿病センター)
  • 成宮 学(独立行政法人 国立病院機構 西埼玉中央病院)
  • 佐野 喜子(二葉栄養専門学校)
  • 小谷 和彦(自治医科大学附属病院)
  • 岡崎 研太郎(独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室)
  • 村田 敬(独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター 糖尿病センター)
  • 北岡 治子(清恵会病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 糖尿病戦略等研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血糖コントロール不良者にはインスリンを使用されるケースが多く、現在インスリン療法者は70万人を超えている。インスリン療法者は不適切なインスリン使用や不適切な自己管理による低血糖を頻発する。また、低血糖への不安から高血糖を維持し、合併症を併発し医療費を高騰させる一因となる。そこで、インスリン療法者に対する自己管理能力向上プログラムを開発し、その効果を検討した。
研究方法
自己管理能力向上プログラムは1)各種調査票の記入、2)管理栄養士または看護師による療養指導、3)医師によるインスリン療法指導より構成される。まず、診察までの待ち時間(5-10分)に患者さんに炭水化物量を簡単に計算できる簡易食物調査票、自己管理チェック票、ライフスタイル調査票に記入してもらった。医師の診察前に20分程度、管理栄養士または糖尿病療養指導士がカーボカウント基礎編(3大栄養素と食後血糖との関連、適正な炭水化物量など)、よくある低血糖の場面、低血糖時の補食、食事や運動療法の療養指導について20分程度の面談を行う。その後、医師が外食や間食時の追加インスリン、就寝前の修正インスリンなどについて面談した。対象は1型糖尿病患者63名(平均年齢47±19歳、男性27名、女性36名、平均HbA1c 7.9±1.1%)で、年齢・性をマッチさせた対照群と比較検討した。また、血糖認識トレーニングを取り入れた重症低血糖教育プログラムの開発と患者向けの低血糖予防ガイドラインの作成を行った。
結果と考察
介入群では、血糖コントロールの指標であるHbA1cは介入前7.93±1.09%から介入1年後に7.54±0.96%へと有意に低下した。対照群に比べ、介入群ではHbA1cの改善度は有意に大きかった(+0.01±1.05%vs. -0.39±0.64%;p<0.01)。介入群では体重、炭水化物摂取量には介入前後で有意な変化は認めなかった。食品のカロリーよりも炭水化物量を正確に把握することで、食後高血糖は改善し、インスリンの過量投与による低血糖の頻度は少なくなったと考えられた。また、血糖認識トレーニングはケトアシドーシスなどで入院を繰り患者に有効であることが報告されている。今後は、自己管理能力向上プログラムの普及や医療従事者向けの研修会の開催などが必要と考えられる。
結論
医師の診察の前に、管理栄養士や看護師がカーボカウントなどを中心に療養指導を行い、その後医師がインスリンの自己調節などについて面談を行う自己管理能力向上プログラムの有効性が示された。

公開日・更新日

公開日
2009-03-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200826006B
報告書区分
総合
研究課題名
1型糖尿病およびインスリン療法を要する2型糖尿病の自己管理能力向上に関する研究
課題番号
H18-糖尿病等・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
坂根 直樹(独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 和範(独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター 糖尿病センター)
  • 成宮 学(独立行政法人 国立病院機構 西埼玉中央病院)
  • 佐野 喜子(二葉栄養専門学校)
  • 小谷 和彦(自治医科大学附属病院)
  • 岡崎 研太郎(独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室)
  • 村田 敬(独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター 糖尿病センター)
  • 北岡 治子(清恵会病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 糖尿病戦略等研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、糖尿病治療者は228万人であるが、管理良好な者(HbA1c6.5%未満)は約2割に過ぎず、8割は合併症予備軍であり、医療費の高騰につながる。特に、低血糖は厳格な血糖コントロールの障害となる。しかし、低血糖の全国調査やインスリン療法者に対する自己管理能力を向上させる有効なプログラムはない。そこで、多施設調査とインスリン療法者に対する自己管理能力向上プログラムの開発と検証、さらに低血糖予防ガイドラインの作成することを目的とした。
研究方法
1) 低血糖の頻度、治療内容、低血糖時や高血糖値に対する対処法に関する調査票を作成し、1,000名のインスリン療法者に対し多施設調査を実施した。2) アメリカ糖尿病協会発行の「患者のためのカーボカウント完全ガイド」「医療従事者のためのカーボカウント実践ガイド」などを参考に構造化された自己管理能力向上プログラムの開発を行った。管理栄養士または糖尿病療養指導士がカーボカウントなどを中心に療養指導について20分程度の面談を行い、その後医師がインスリン自己調節などについて説明した。1型糖尿病患者63名を対象に本プログラムを実施し、年齢・性をマッチさせた対照群と比較検討した。3) 血糖認識トレーニングを取り入れた重症低血糖教育プログラムの開発と患者向けの低血糖予防ガイドラインの作成を行った。
結果と考察
1) 重症低血糖はインスリン療法者の14%が経験しており、2型糖尿病に比べ、1型糖尿病でその頻度は多かった。低血糖予防に対する知識は意外と少なく、誤解もあり、低血糖予防について学べる小冊子やe-ラーニングを開発した。2) 対照群に比べ、介入群ではHbA1cの改善度は有意に大きかった。食品のカロリーよりも炭水化物量を正確に把握することで食後高血糖は改善しインスリン過量投与による低血糖の頻度は少なくなった。3) 3年間の調査及び介入研究を踏まえ、患者向けの低血糖予防及び自己管理向上ガイドラインの作成を行った。今後は、1型糖尿病患者に対する日本人向けの開発と普及、指導者向けのカーボカウントマニュアルの開発が必要となろう。また、重症低血糖のリスクの高い者に対するグルカゴン普及や血糖認識トレーニングの開発(携帯版)と効果検証が必要となろう。
結論
本研究により、日本における低血糖頻度と予防の現状が明らかとなり、患者向けの低血糖予防ガイドラインが作成できた。自己管理能力向上プログラムによる血糖コントロール改善効果が確認された。

公開日・更新日

公開日
2009-03-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200826006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
インスリン療法者にとって低血糖は厳格な血糖コントロールを達成する大きな障害となる。欧米では多施設による低血糖(重症低血糖を含む)の調査結果が報告されているが、本邦においては今まで単施設による調査は行なわれていたが、多施設による大規模な調査は行なわれていなかった。今回の調査研究により、インスリン療法者の低血糖頻度が明らかとなった。また、日本で初めてカーボカウントとインスリン調節を取り入れた療養指導が血糖コントロール改善に及ぼす効果を証明した。
臨床的観点からの成果
低血糖が不安で高血糖を維持する患者、血糖コントロール不良なインスリン療法者に対する、本研究班で開発した自己管理能力向上プログラムは現行の保険点数内で実施可能である。これは医師が診察を行う前に研究班が開発したツールを用いて管理栄養士または看護師が15分?20分、カーボカウントの基礎や低血糖への対処など患者と療養指導について面談し、その後に医師がインスリン調節を説明するものである。今後、多施設で応用される事で血糖コントロール改善、さらには合併症予防と患者のQOL改善が見込まれる。
ガイドライン等の開発
現在、糖尿病治療者は228万人であるが、管理良好な者(HbA1c6.5%未満)は約2割に過ぎず、8割は合併症予備軍であり、医療費の高騰の一因とされる。特に、低血糖は厳格な血糖コントロールの大きな障害となるだけではなく、運転時の交通事故の誘因となることも報告されており、低血糖予防を心がける事は必須である。また、すぐに対処する技術を身につけることも大切である。そこで、本研究の結果をもとに具体的な低血糖予防法や低血糖の適切な対処法を盛り込んだ「患者向けの低血糖予防ガイドライン」を開発することができた。
その他行政的観点からの成果
現在、インスリン療法者は70万人を超えると言われている。血糖コントロール不良者に対してはインスリンを使用されるケースが多く、医療費高騰の一因となっていた。しかし、インスリン療法者の自己管理能力を向上させる構造化された有効なプログラムは今までなかった。今回、我々の開発した自己管理能力向上プログラムが広く応用されることにより、血糖コントロールの改善、低血糖予防、さらには合併症を減らすことが期待できるため、本プログラムを普及させることで医療費の抑制が大いに期待できる。
その他のインパクト
低血糖は医療従事者から十分に教育される時間が少ないが、患者にとっては大きな不安要素である。今回、患者向けの低血糖予防ガイドラインと共に、小冊子やe-ラーニングを開発することができた。これにより、低血糖を不安に思う多くの患者が救済される可能性がある。また、欧米で標準的に行なわれているカーボカウントやインスリン調節法を取り入れた患者参画型の療養指導の実施により、患者の満足度やQOL改善が大いに期待できる。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
西雅美、岡田朗、岡崎研太郎 他
成人1型糖尿病患者の自尊心に関する研究-自尊感情尺度と理想自己個性記述質問紙法を用いて-
プラクティス , 25 (2) , 215-218  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-