わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200825065A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における脳卒中再発予防のための急性期内科治療戦略の確立に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-019
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
豊田 一則(国立循環器病センター 病院(内科脳血管部門))
研究分担者(所属機関)
  • 苅尾 七臣(自治医科大学 (循環器内科))
  • 中川原譲二(中村記念病院 (脳神経外科))
  • 古井 英介(財団法人広南会 広南病院 (脳血管内科))
  • 塩川 芳昭(杏林大学 (脳神経外科))
  • 長谷川泰弘(聖マリアンナ医科大学 (神経内科))
  • 奥田 聡(国立病院機構名古屋医療センター (神経内科))
  • 山上 宏(神戸市立医療センター中央市民病院 (脳神経外科))
  • 木村 和美(川崎医科大学 (脳卒中医学))
  • 岡田 靖(国立病院機構九州医療センター (脳血管センター 脳血管内科))
  • 古賀 政利(国立循環器病センター (内科脳血管部門))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 危険因子管理と抗血栓療法は脳卒中再発予防の根幹を成す内科治療である。慢性期脳卒中への再発予防治療のエビデンスが欧米を中心に集積されつつあるが、日本人は病型内訳や好発部位などの脳卒中の特質や、薬物療法時の至適投与量などが欧米人と異なり、独自の再発予防法を確立する必要がある。とくに超急性期から急性期は治療介入による予後改善効果がもっとも期待される時期であるが、同時期の危険因子管理の意義は国内外のいずれにおいても明らかでない。本研究では、国内各地域を代表する脳卒中基幹10施設を選んで3年間の多施設共同研究を行い、超急性期からの危険因子管理・抗血栓療法の有効性と安全性を検証する。
研究方法
 2つの多施設共同研究「1:rt-PA患者登録研究」、「2:超急性期脳出血への降圧療法に関する研究」を中心に研究を進めた。研究1ではrt-PA静注療法を受けた急性期虚血性脳卒中患者600例を登録し、治療成績とその関連要因を解析した。研究2では、全国webアンケート調査で急性期脳出血患者に対する降圧療法の実態を調べ、調査結果から得られた標準的治療の安全性・有効性を検討する観察研究の準備を進めた。また降圧療法に関する近い将来の日米共同介入試験を目指し、米国第Ⅲ相試験 ATACH 2の主任研究者であるQureshi教授らと話し合いを進めた。
結果と考察
 研究1では、39%の患者が3か月後に完全自立し(mRS 0-1)、欧州基準に則って81歳以上の高齢者とrt-PA投与前NIH Stroke Scale 25以上の重症者を除いて検討すると、43%に完全自立を認めた。発症前の抗血小板療法や投与前のMRI拡散強調画像による早期信号強度変化(ASPECTSを用いた半定量的評価)が、治療後の頭蓋内出血や慢性期転帰に関連することを示した。研究2では、国内の大半の施設でニカルジピン静注を用いて 140?160 mmHgないしそれ以下の収縮期血圧を降圧目標に治療していることを明らかにした。
結論
 急性期脳梗塞に対するわが国独自の低用量rt-PA静注療法は、国外の成績と同等以上の成績を得ていることが示唆された。わが国の急性期脳出血への降圧の実態として、ガイドラインと必ずしも合致しない降圧目標や降圧薬が用いられていることが、明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
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