今後の特定健康診査・保健指導における慢性腎臓病(CKD)の位置付けに関する検討

文献情報

文献番号
200825054A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の特定健康診査・保健指導における慢性腎臓病(CKD)の位置付けに関する検討
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 毅(福島県立医科大学医学部内科学第三講座)
研究分担者(所属機関)
  • 井関 邦敏(琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部)
  • 吉田 英昭(札幌医科大学医学部内科学第二講座)
  • 鶴屋 和彦(九州大学大学院包括的腎不全治療学講座)
  • 守山 敏樹(大阪大学保健センター)
  • 山縣 邦弘(筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻腎臓病態医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活習慣病を背景にした心血管疾患(CVD)の一次予防を主眼とする特定健康診査(健診)・保健指導では、血清クレアチニン(Cr)値が必須項目でなく、必須項目の尿蛋白に対して保健指導法の明示がない。すなわちインスリン抵抗性・生活習慣病とCVDの相互関係での要の病態であり、CVDならびに死亡の重要な危険因子として近年認識されつつある慢性腎臓病(CKD)の位置付けが不明確である。本研究では特定健診受診者の大規模コホートの前向き観察研究によりCKDの生活習慣病およびCVDの発症への寄与度、CKD発症・進展に対する諸要因、特定保健指導によるCKD発症・進展、生活習慣病・CVD発症への効果を解析し、種々の要因解析や医療経済的解析を踏まえ、CKDの位置付けを明確にした特定健診・保健指導モデルを提言することを目的とする。

研究方法
特定健診データを提供可能なコホート(保険者)を全国公募しデータベース構築を行う。さらに、健診・保健指導モデル提言のためテーマ別ワーキンググループ(WG)を組織し、既存健診データ、尿中微量アルブミン(Alb)測定及び疾病情報を活用した要因解析並びに新規透析導入患者を対象とした健診受診歴、検査所見の調査(要因解析WG)、検尿と血清Crを健診項目として採用する場合のマルコフモデルを適用した費用対効果分析のための予備調査と腎健診に微量アルブミン検査、シスタチンC検査を追加した場合の意義の検討(医療経済WG)、保健指導におけるCKD対策の現状調査(保健指導WG)を行なう。
結果と考察
15都道府県で協力コホートの募集を実施。26自治体・保険者からの健診データ提供が確定し(一部保険者からはレセプトデータも提供)データベース構築を開始した。要因解析WGでは、既存の健診データの解析で末期腎不全発症率に明らかな地域差があり、背景因子(病態、社会・経済的要因,治療)が複雑に関与する可能性を示した。医療経済WGでは健診項目としての検尿と血清Crの種々の組み合わせによる健診受診者コホートの状態間推移の確率を算出した。さらに健診に尿中微量アルブミン(u-Alb)検査、シスタチンC検査を追加した場合の意義を検討し、中間解析で受診者の25%がu-Alb異常高値を示し、本検査が特異度の点で問題を有する可能性を示した。保健指導WGの調査では一部自治体で既に独自のCKD対策が実施されていた。
結論
本年度得られたデータは今後の特定健診データの横断的、縦断的(アウトカム)解析の基盤となり、CKDの位置付けを明確にした特定健診・保健指導モデルの立案に必要な基礎的データとなり得る。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
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