循環器リスクと耐糖能障害の効率的な健診マーカーの探索

文献情報

文献番号
200825053A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器リスクと耐糖能障害の効率的な健診マーカーの探索
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
武田 純(岐阜大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀川 幸男(岐阜大学 大学院医学系研究科 )
  • 鈴木 英司(岐阜大学 大学院医学系研究科 )
  • 永田 知里(岐阜大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
18,945,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病は軽症や予備軍も心血管イベントの重要リスクである。しかし、耐糖能障害も循環器疾患は共に不均一な病態なので、効率的な予防を行なうには、画一的でなく、日本人の病態とリンクした健診項目の設定と個々の体質や生活特性に配慮した保健指導が必要である。初年度は日本人の病態を検定した。
研究方法
岐阜市において1,070人(40-78歳)を対象として75g OGTTを実施し、肥満度の測定、種々の生化学検査を実施した。さらに、自記式質問票を作成し調査した。項目(36ページ)は、個人情報、20歳時からの体重の増減、健康状態、睡眠時間、喫煙習慣と受動喫煙、歯の衛生、既往歴、糖尿病の知識、ストレステスト、食習慣と内容、健康食品、嗜好品、運動習慣、QOL-26、女性の妊娠・出産歴・閉経である。
結果と考察
糖尿病型、境界型、正常型に区分した結果、糖尿病型 9.3%(男性 12.9%、女性 6.9%)、境界型 22.6%(男性 23.9%、女性 22.6%)であり、HbA1cによる全国集計と同程度であった。一方、耐糖能異常に肥満が占める割合は41.2%であった。糖尿病型の出現頻度に男女差が認められたが、平均体重の差異に基づく可能性が示唆された(肥満:男性 50.9%、女性 37.2%)。一方、境界型においても同様の体重の男女差が認められたにも関わらず(男性 46.6%、女性 30.7%)、境界型の出現頻度は男女間で同程度であったので、肥満と関連が少ない日本人の罹患体質が示唆された。
 HOMA-Rとinsuulinogenic indexを算定した結果、インスリン抵抗性は境界型と糖尿病型では共にボ-ダー領域であり、発症への直接関与は少ないと考えられた。一方、インスリン分泌については、正常型から境界型、糖尿病型に移行するにつれ初期分泌が低くなり、欧米のような代償性の高分泌は認められなかった。興味深いことに、肥満も非肥満も同パターンを呈したので、分泌不全が一義的と結論された。
結論
日本人では糖尿病や心血管病の発症には分泌不全を基盤として、軽度のインスリン抵抗性が関与する図式が考えられた。耐糖能異常に肥満が占める割合は約40%であり、肥満と腹囲を必須項目としたメタボ健診では、重要リスクである糖尿病を高率に見逃す危険性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-