メタボリックシンドロームの保健指導に歯科的な観点を導入することの効果に関する研究

文献情報

文献番号
200825037A
報告書区分
総括
研究課題名
メタボリックシンドロームの保健指導に歯科的な観点を導入することの効果に関する研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-020
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
柳澤 繁孝(大分大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田川 俊郎(三重大学 医学部)
  • 草間 幹夫(自治医科大学 医学部)
  • 花田 信弘(鶴見大学 歯学部)
  • 吉松 博信(大分大学 医学部)
  • 河野 憲司(大分大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 メタボリックシンドロームの予防は国民の健康維持と国民医療費の抑制の観点からも重要な課題になっている。メタボリックシンドロームは生活習慣の改善によって予防の可能性がある点に特徴がある。その対策の一つとして摂食習慣が注目されている。早食いと肥満の関連が広く流布され、それに関連した研究報告が少なくないが、介入研究の報告は極めてまれである。
 我々は成人を対象にして一口30回咀嚼を実施し、咀嚼法(1口30 回の咀嚼を指導し、食行動の改善をはかる治療方法)がメタボリックシンドロームの改善や予防に有効であるかどうかを明らかにする。
研究方法
 1.昨年度から開始した一口30回咀嚼実施被験者の介入前後の身体計測値と臨床検査値の解析
 2.咀嚼法の実践に関する事後アンケート調査
前年度の67名の被験者を対象に15項目のアンケート調査を実施した
 3.咀嚼と肥満の関連についての文献レビューPubMed、医中誌、CiNiiなどの文献データベース
とハンドサーチを主体に文献収集を行った
 4.咀嚼法導入によるメタボリックシンドローム予防効果
肥満症患者を入院下で1日400キロカロリー食で、咀嚼法導入前後の身体計測等と生化学検査   を行った。
結果と考察
 1.被検者は男性39名、女性が28名計67名であった。年令は25歳から60歳で平均年令は34.0歳    で、BMIは男性群25.5で女性群は20.2であった。
  1)男性群では介入1月後に有意な体重減少と腹囲が減少した。
  2)男女両群とも1ヶ月後に高分子アディポネクチン値が有意に上昇した。
  3)BMIが25を超える者では体重の減少を、22.5以下では体重の増加するものが多かった。
 2.介入試験終了の6から10ヶ月後において被検者は一口平均15回の咀嚼をし、その半数が20回   以上の咀嚼を維持していた。
 3.早食いの是正と肥満改善に関する42論文のレビューを行った。早食いは肥満の要因との報告が多く見られ、また噛むことを動機づけで食事への関心、行動が変化するとの報告が散見された。しかし、肥満予防効果を支持するエビデンスを示す論文はなかった。
 4.肥満患者では大幅な体重減少と血圧の低下を認めた。
結論
一口30回咀嚼は肥満傾向にあるものには体重減少や高分子アディポネクチン値の上昇を期待でき、メタボリックシンドームの改善・予防に有用なことが示唆された。この結果は少数例での研究であり、今後は肥満予防効果を裏付ける多数の被検者を対象にした研究が求められる

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200825037B
報告書区分
総合
研究課題名
メタボリックシンドロームの保健指導に歯科的な観点を導入することの効果に関する研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-020
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
柳澤 繁孝(大分大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉松博信(大分大学 医学部)
  • 田川俊郎(三重大学 医学部)
  • 草間幹夫(自治医科大学 医学部)
  • 花田信弘(鶴見大学 歯学部)
  • 河野憲司(大分大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
メタボリックシンドロームの予防は国民の健康維持と国民医療費の抑制の観点からも重要な課題になっている。咀嚼法(1口30 回の咀嚼を指導し、食行動の改善をはかる治療方法)が肥満症、メタボリックシンドロームの改善や予防に有効であるか、さらに広く社会的な健康・保健指導の方法として有用性があるかどうかを介入研究で明らかにする.

研究方法
1.健常成人で研究の意義を理解し、研究計画に自主的に同意したものを対象に介入研究を行っ  た。試験期間3ヶ月とし、一口ごとに30回咀嚼の可否を記録した。身体計測と血液・生化学検査(糖・脂質、アディポネクチン他)、を実施した。
2.アンケート調査:67名の被験者を対象に15項目のアンケート調査を実施した。
3.肥満症患者: 13例に入院下で1日400キロカロリーの超低エネルギー食を導入した。満腹感、空 腹感、身体計測と血液生化学検査を、咀嚼法実施前後に実施した。
4.研究論文のレビュー:PubMed、医中誌、CiNiiなど主体に収集した。
結果と考察
 1.被検者は男性39名、女性が28名計67名であった。年令は25歳から60歳で平均年令は34.0歳    で、BMIは男性群25.5で女性群は20.2であった。
  1)男性群では介入1月後に有意な体重減少と腹囲が減少した。
  2)男女両群とも1ヶ月後に高分子アディポネクチン値が有意に上昇した。
  3)BMIが25を超える者では体重の減少を、22.5以下では体重の増加するものが多かった。
  4)被験者間で30回咀嚼遂行率が中間値以上の群では体重減少が認められた。
  4)咀嚼法実施中の食行動では、食生活の規則性と食動機の項目のずれが改善した。
 2.介入試験終了の6から10ヶ月後において被検者のその半数が20回以上の咀嚼を維持していた。
 3.早食いの是正と肥満改善に関する42論文のレビューを行った。早食いは肥満の要因との報告  が多く見られた、しかし介入試験等によるエビデンスを示す論文はなかった。
 4.肥満患者では少量の食事で満腹感が得られ、大幅な体重減少と血圧の低下を認めた。
結論
 一口30回咀嚼はBMIの肥満傾向にあるものには体重減少が得られ、いっぽう、やせでは体重の減少よりも維持あるいは体重増加が認められた。また高分子アディポネクチン値の上昇を認めた。これらのことから咀嚼法はメタボリックシンドームの改善・予防に有用なことが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200825037C

成果

専門的・学術的観点からの成果
一口30回咀嚼を約3ヶ月間実施した49名(男性27名:35±10歳、女性22名:33±9歳)を分析対象として、身体計測、臨床検査(HbA1c、インシュリン、アディポネクチン他)の変化を検討した。
 男性群では、1ヶ月後に体重・BMI・腹囲の有意な減少が認められた。3ヶ月後では、有意差は認められなかったが低い傾向は続いていた。女性群では、3ヶ月後腹囲の有意な減少が認められた。臨床検査ではHbA1cの有意な増加と高分子型アディポネクチンの有意な増加が認められた。
臨床的観点からの成果
BMI値25以上(肥満)では体重の減少が、一方BMIが22以下では不変あるいは体重の増加で傾向を示した。また、咀嚼法実施率の高い者では体重等の減少傾向が示され。咀嚼法は肥満傾向にある者では体重減少を瘠せや標準体重のものへは無用の体重減少効果が無いことが示唆され、メタボリックシンドロームの保健指導の一つとして期待される。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
一口30回咀嚼法がメタボリックシンドロームの予防・改善に貢献する介入研究.第19回日本肥満学会,2008年10月 咀嚼法による体重コントロール効果に関する介入研究.第19回日本疫学会,2009年1月
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-