多施設コホートを基盤とした糖尿病・メタボリックシンドロームの発症要因と脳卒中・心筋梗塞の発症に果たす役割に関する前向き研究

文献情報

文献番号
200825034A
報告書区分
総括
研究課題名
多施設コホートを基盤とした糖尿病・メタボリックシンドロームの発症要因と脳卒中・心筋梗塞の発症に果たす役割に関する前向き研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-017
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
吉政 康直(国立循環器病センター 動脈硬化代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 雄平(国立循環器病センター 高血圧腎臓内科)
  • 清原 裕(九州大学医学研究院 環境医学)
  • 斎藤 重幸(札幌医科大学 内科学第2講座)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病センター 動脈硬化代謝内科)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病センター 予防検診部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、代謝病の重積するメタボリックシンドロームおよび糖尿病が循環器疾患のハイリスクであることを検証するとともに、これらの疾患の早期診断、および予防の包括的な方法を確立することを目的としている。吹田、久山、端野壮瞥町の糖負荷統合データを用いて、糖尿病、耐糖能障害と心血管病との関係を検討し、糖尿病及びメタボリックシンドロームと脳卒中・心筋梗塞による発症および死亡との関係を明らかにする。
研究方法
吹田市、久山町、端野・壮瞥町研究の対象者9,390名のベースライン時健診と75g糖負荷検査の結果を用いて、平均観察期間13.2年の追跡研究を行うとともに、平成2年から7年に、糖負荷検査を受けた30-59歳の男女のうち、今年度健診を受けられた809名に糖負荷検査を実施した。久山町研究では、住民に75g経口糖負荷試験を行い、心血管病の既発症者を除いた2,421名を14年間追跡、端野・壮瞥町研究では1994年と2002年の健診を受診した者から、94年時点で高血圧の者(収縮期血圧≧140mmHgかつ/または拡張期血圧≧90mmHgかつ/または降圧剤内服中の者)を除いた396名を解析対象とし、腹部肥満群と非腹部肥満群の2群に分け、2002年での高血圧者の頻度を比較検討した。
結果と考察
吹田研究では、メタボリックシンドローム、糖尿病が心血管病との関係について明らかになった。久山町研究では、糖尿病が心血管病とのリスクとの関係になっていることを示した。糖尿病は循環器疾患のリスクであることが分かり、境界型、糖尿病型となるにつれて、心血管病のリスクとなる血圧のカテゴリーが正常高値血圧、正常血圧、至適血圧へとカテゴリーが下がることも明らかになった。このことから、糖尿病を合併している高血圧患者は、血糖のコントロールのみならず、血圧のコントロールも厳格に行う必要があることがわかった。
結論
9千名の糖負荷検査の一般住民のコホート解析の結果から、男性の糖尿病型、女性の境界型と糖尿病型は全死亡のリスクであり、死亡率を低下させるには、血糖のコントロールが必要である。今回、都市部住民における解析結果から、この都市部集団での糖尿病型への移行率も男性で0.5%/年、女性で0.3%/年であることがわかった。以上のことより、糖尿病、メタボリックシンドロームの年間発症率や生活習慣の具体的な改善方法を提示することにより、国の政策立案に十分貢献でき、国民の保健・医療・福祉の向上につながることができる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
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