日本人における動脈硬化性大動脈弁膜疾患の発症・進展予防に関する研究

文献情報

文献番号
200825032A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人における動脈硬化性大動脈弁膜疾患の発症・進展予防に関する研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-015
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山本 一博(大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 増山 理(兵庫医科大学医学部内科学循環器内科)
  • 中谷 敏(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学講座)
  • 吉田 清(川崎医科大学医学部循環器内科)
  • 木佐貫 彰(鹿児島大学医学部保健学科臨床看護学講座)
  • 尾辻 豊(産業医科大学医学部第2内科)
  • 赤阪 隆史(和歌山県立医科大学医学部循環器内科)
  • 大手 信之(名古屋市立大学大学院心臓・腎高血圧内科学)
  • 平野 豊(近畿大学医学部附属病院臨床検査部)
  • 山本 秀也(広島大学病院循環器内科)
  • 寒水 孝司(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国でも、大動脈弁硬化に基づく大動脈弁狭窄患者数が増加している。本研究は、日本人高齢者における大動脈弁硬化の背景因子と本病態の経年変化の解析から、発症進展予知に結びつく指標と進展促進要因を探索し一次予防法の確立を目指すと同時に、発症後の病態進展阻止に結びつく薬剤を見出し、治療介入指針を確立することを目的とする。
研究方法
1) 後向き調査研究
対象
過去3年以内に、心エコー検査にて大動脈弁の変性変化または狭窄所見を認めた50才以上の症例500例。

調査項目
登録時および2-5年前の患者背景、心エコー検査データ、血液検査データを登録する。

2) 前向き調査研究
対象
心エコー検査にて大動脈弁の変性変化または狭窄所見を認めた50才以上の外来追跡可能な症例300例(3年間で登録)。
調査項目
登録時、およびその後1年毎に3年間、患者背景、心エコー検査データ、血液検査データを登録する。さらに、調査期間内における、狭心痛や失神の発現、心不全の出現ないし増悪、心不全症状の推移(NYHA、SAS)、心血管イベントに基づく入院、大動脈弁位人工弁置換術ないし形成術の施行、心血管死、全死亡、登録後の投薬内容の変化についても登録を行う。
結果と考察
初年度にあたる昨年度は、参加施設の倫理委員会でのプロトコール承認、データ登録システム確立など試験体制構築を終え症例登録を開始した。後向き調査研究の登録症例数は目標の500例に対し775例の登録を行った。今年度、後向き調査研究のデータ解析を行い、軽症の大動脈弁変性患者では、非進行例に比し進行例ではアンジオテンシン受容体拮抗薬服用率が低く、ワーファリン服用率が高かった。高度の大動脈弁変性患者では、非進行例に比し進行例では女性が多く、血中ヘモグロビン値が低かった。いずれの群においても、動脈硬化の進展と関連があるとされる脂質異常症や糖尿病の有無は弁病変の進行と関連がなかった。前向き調査研究については平成21年2月28日現在で、今年度末の登録目標症例数の200例を大きく上回る283例の登録を終えた。
結論
後向き研究の結果ではあるが、本病態は動脈硬化とは異なる病態として考えるべきと思われ、また日本人では欧米人と病態の進行促進因子が異なる可能性が示された。軽症段階での病態促進因子と、高度進行例での病態促進因子が異なる可能性も示された。

公開日・更新日

公開日
2009-03-23
更新日
-