動脈硬化性疾患の発症予知・進展予防に関する研究

文献情報

文献番号
200825031A
報告書区分
総括
研究課題名
動脈硬化性疾患の発症予知・進展予防に関する研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
沢村 達也(国立循環器病センター研究所 脈管生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤田 佳子(国立循環器病センター研究所 脈管生理部)
  • 木村 剛(京都大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動脈硬化およびその結果として起こる虚血性心疾患は多因子病である。コレステロールや肥満の動脈硬化危険因子としての重要性は明らかであるが、それだけがすべてではない事も論を待たない。本研究ではLOX-1を中心に、酸化LDLや炎症をはじめ動脈硬化危険因子の血管での作用機構を明らかにし、これまでに対策がとられていない危険因子を標的とした新しい診断・治療法開発を目指す。
研究方法
1.LOX-1を利用した血中酸化LDL(LOX-1リガンド)およびLOX-1測定法の確立と有用性の検証、2.酸化LDL以外の動脈硬化危険因子の作用機構解明に関する研究、3.酸化LDL受容体LOX-1の病態における意義の解明、を進めた。
結果と考察
吹田市コホートでの前向き疫学研究により、LOX-1リガンドの脳梗塞発症予知における有用性が示されるとともに、可溶型LOX-1(sLOX-1)とLOX-1リガンドを組み合わせることにより、指標性はさらに高まり、心血管病全体の発症予知指標となりうることが証明された。これはLOX-1リガンドがLOX-1に作用することが、動脈硬化性疾患発症に関係していることを示唆する。そして、この結果に呼応するように、動物実験でも、LOX-1リガンドレベルを抑制すること、およびLOX-1発現を抑制することが、動脈硬化やその関連疾患の進展を抑制することが明らかとなった。しかも、疫学研究の結果は、血栓症とLOX-1の関係を強く示唆するものであったが、動物実験でも、血栓におけるLOX-1の機能が確かなものとなってきた。
その一方で、CRPがLOX-1介して機能し、血管機能に影響を与えること、そして、心筋梗塞の病態悪化と関連していることを明らかにすることができた。
このように、疫学研究と機能解析の両面から、LOX-1のヒトの動脈性疾患における臨床的意義が明らかとなってきた。


結論
sLOX-1とLOX-1リガンドの診断的有用性が明らかになった。LOX-1リガンドの健常人の脳卒中発症予知、sLOX-1の急性冠症候群診断における有用性が明らかになり。さらにこの2つの指標を組み合せることにより、より効果的な指標となりうると考えられる。これらの指標が実際に臨床の場で用いられることにより、実質的にすべての人が罹患していると言える動脈硬化およびその関連疾患の予防・治療に役立つことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-