筋肉の量的、質的維持がメタボリックシンドロームの予防に及ぼす効果に関する研究-具体的な筋力トレーニングプログラムの開発-

文献情報

文献番号
200825015A
報告書区分
総括
研究課題名
筋肉の量的、質的維持がメタボリックシンドロームの予防に及ぼす効果に関する研究-具体的な筋力トレーニングプログラムの開発-
課題番号
H18-循環器等(生習)・若手-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 解(筑波大学大学院 人間総合科学研究科スポーツ医学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 久野 譜也(筑波大学大学院 人間総合科学研究科スポーツ医学専攻 )
  • 前田 清司(筑波大学大学院 人間総合科学研究科スポーツ医学専攻 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、中年者を対象として筋力・筋量とメタボリックシンドローム(MS)の関係を明らかにし、MS予防のための筋力・筋量の基準を作成すること、及び筋力トレーニングによる筋力・筋量の変化が、MS予防に及ぼす影響を検討し、具体的なプログラムを開発することを目的とした。
研究方法
「MS予防のための筋力・筋量の基準の作成」では、24-64歳の男女757名を対象とし、MS群+予備群(メタボ群)と非該当群の二群について筋因子を比較した。
「MS予防のための具体的な筋力トレーニングプログラムの開発」では、ライフスタイル型や施設型の筋力トレーニングプログラムにおけるMS改善効果のメカニズムを明らかにするために、中年者を対象とした運動トレーニングが、アディポサイトカイン、動脈スティフネス、精神健康度に及ぼす影響について検討した。また、ライフスタイル型プログラムのMS予防効果について、短期的な効果と長期的(2年間)な効果を検討した。さらに、筋力や筋量に影響を及ぼすとされる遺伝子多型と加齢性筋萎縮との関係性について検討し、MS予防に関与する遺伝子の探索を試みた。
結果と考察
いくつかの筋の量的、質的指標について、非該当群に比べてメタボ群で低い値を示した。筋肉率とMSリスク発現確率との間に有意な関係性が認められ、MS予防のための基準値となりうる数値が示された。
ライフスタイル型運動プログラムは、アディポサイトカインの分泌状態を改善させ、内臓脂肪の減少も促進させる可能性が示された。なお、ライフスタイル型運動プログラムの長期的なMS改善効果について、3ヶ月で認められたMS改善効果は、2年後も維持されていた。また、同プログラムにより、精神健康度が改善されることも明らかとなった。
また、ACTN3遺伝子多型は、高齢期以降の下肢筋量に影響を与えることが明らかとなった。
結論
成人男女において、筋量や筋力はMSに影響を及ぼす。筋肉率は高値であるほどMSリスク発現確率が高まる。リスク発現確率を10%未満とすれば、男性で33.5%以上、女性で25.8%以上が必要となる。
中年勤労者を対象としたライフスタイル型運動プログラムは、短期的なMS改善・予防効果だけでなく、長期的な効果もある。また、当プログラムは、内臓脂肪を減少させ、アディポサイトカインの分泌状態を改善に導く。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200825015B
報告書区分
総合
研究課題名
筋肉の量的、質的維持がメタボリックシンドロームの予防に及ぼす効果に関する研究-具体的な筋力トレーニングプログラムの開発-
課題番号
H18-循環器等(生習)・若手-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田辺 解(筑波大学大学院 人間総合科学研究科スポーツ医学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 久野 譜也(筑波大学大学院 人間総合科学研究科スポーツ医学専攻)
  • 前田 清司(筑波大学大学院 人間総合科学研究科スポーツ医学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、主に中年者を対象にして、課題1)筋力・筋量とメタボリックシンドローム(MS)との関係を明らかにし、筋力・筋量の基準を作成すること、及び課題2)筋力トレーニングによる筋力・筋量の変化が、MS予防に及ぼす影響を検討し、具体的なプログラムを開発することを目的とした。
研究方法
課題1)では、24-64歳の男女757名を対象とし、MS群+予備群(メタボ群)と非該当群の二群について筋因子を比較した。
課題2)では、施設型プログラムでの実験的検証とライフスタイル型プログラムでの現場的検証を行った。施設型プログラムでは、筋力トレーニング、有酸素性運動、食事制限という3つのMS改善プログラムについて、これらをそれぞれ組み合わせた介入のMS改善効果を比較した。ライフスタイル型のプログラムでは、短期的及び長期的なMS改善・予防効果を検証した。
結果と考察
1)いくつかの筋の量的、質的指標について、非該当群に比べてメタボ群で低い値を示した。筋肉率とMSリスク発現確率との間に有意な関係性が認められ、MS予防のための基準値が示された。2)施設型プログラムでの検証では、筋力トレーニングを併用して行うことで、より一層MSを改善させるような効果は認められなかった。一方、体重が減少すると筋量も減少することが明らかとなり、この筋量減少は有酸素性運動や食事制限のみの介入では防げないが、筋力トレーニングの併用で予防できることが示された。また、中強度の筋力トレーニングであれば動脈スティフネスを増加させないことが示唆された。ライフスタイル型プログラムでは、介入3ヶ月でMS改善効果が認められ、2年後も維持されていた。また、同プログラムで、アディポサイトカインや精神健康度が改善されることも示された。
結論
成人男女において、筋量や筋力はMSに影響を及ぼす。筋肉率は高値であるほどMSリスク発現確率が高まる。リスク発現確率を10%未満とすれば、男性で33.5%以上、女性で25.8%以上の筋肉率が必要となる。食事制限、有酸素性運動、及び筋力トレーニングを併用するプログラムがMS改善・予防に最適なプログラムである。ライフスタイル型運動プログラムは、短期的なMS改善・予防効果だけでなく、長期的な効果もあることから、中年者のヘルスプロモーションのための具体的な筋力トレーニングプログラムとして推奨できる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200825015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
筋力や筋量といった筋因子とメタボリックシンドローム(MS)の関係性を検討した研究は、国内外においてわずかである。本研究では、日本人の成人男女において、筋量や筋力がMSに影響を及ぼす可能性を明らかにしたという点で貴重である。また、筋力トレーニング、有酸素性運動、及び食事摂取制限を組み合わせたMS改善プログラムが、内臓脂肪量、アディポサイトカイン、動脈スティフネス、及び精神健康度等に好影響を及ぼしたことは、より効果的なMS予防のための運動プログラムを検討する上で重要な基礎的資料となった。
臨床的観点からの成果
本研究は、重度の疾患を有さない比較的健康な若~中年者を対象として行い、筋力トレーニングを含む運動と食事のプログラムがMS改善・予防に貢献することが示唆された。このように比較的低リスクの対象に対して、MS改善・予防効果の得られるプログラムが示されたことは、医療費の1/3を占めるとされる生活習慣病に対するポピュレーションアプローチ策を検討する上で重要な成果が得られたと考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究は、当初より、その成果を厚生労働省による健康づくりのための運動基準やエクササイズガイドに反映することを想定して遂行した。結果として、本研究で示されたMS予防のための筋因子の基準値や筋力トレーニングプログラムは、それらのガイドラインに反映されるに足りるエビデンスが得られたと考えられ、将来的にはそれらに反映されることが期待される。
その他行政的観点からの成果
本研究は、平成20年度より開始された特定健診・特定保健指導の現場で活用することを念頭において、筋因子の基準や運動プログラム等を作成した。したがって、本研究の成果は、健診や保健指導現場を支援するツールとして有効となると考えられ、今後、本研究の成果を自治体や企業に普及・啓発していく予定である。
その他のインパクト
日本経済新聞、茨城新聞、山陽新聞、中国新聞等の計16紙の記事やいくつかのTVプログラムにおいて、本プロジェクトにおける勤労者に対するメタボリックシンドローム改善プログラムの成果が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mutsuko Yoshizawa, Seiji Maeda, Asako Miyaki et al.
Effect of 12 weeks of moderate-intensity resistance training on arterial stiffness: A randomized controlled trial in women aged 32-59.
British Journal of Sports Medicine  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-