多施設共同研究:小児・思春期(若年)発症2型糖尿病の合併症発症率の経年的全国調査

文献情報

文献番号
200825014A
報告書区分
総括
研究課題名
多施設共同研究:小児・思春期(若年)発症2型糖尿病の合併症発症率の経年的全国調査
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-050
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
内潟 安子(東京女子医科大学(医学部) 糖尿病センター第三内科)
研究分担者(所属機関)
  • 岩本 安彦(東京女子医科大学(医学部) 糖尿病センター第三内科)
  • 田嶼 尚子(東京慈恵会医科大学・糖尿病代謝 内分泌内科学講座)
  • 西村 理明(東京慈恵会医科大学・糖尿病代謝 内分泌内科学講座)
  • 吉岡 成人(北海道大学医学部病態内科学講座・第二内科)
  • 菊池 信行(横浜市立大学付属市民総合医療センター小児科)
  • 浦上 達彦(駿河台日本大学病院小児科)
  • 武田 倬(鳥取県立中央病院内科)
  • 岡田 泰助(高知県もみの木病院小児科)
  • 荒木 栄一(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)全国規模の専門病院(全国に10,000人あまりいる日本糖尿病学会員にいる施設)における調査から20歳未満発症2型糖尿病のデータベースを構築する、
2)このコホートを前向きに追跡し、治療の実態、合併症の累積発生率、就職状況などの生活の質を明らかにする、
3)合併症の頻度・重症度およびその危険因子の解析をする、
研究方法
調査への協力の得られたわが国の20歳未満で発症し、2006年度末までに現在30歳未満の2型糖尿病患者を対象とする。
結果と考察
2回の調査が完了したのは688名であり、小児科医34名から登録された187名と内科医274名からの501名である。対象者の約60%は、学校検尿で発見されているが、学校検尿システムのない高校生以上が糖尿病と診断されて登録されたのは内科医登録群に多かった。体重および腹囲は、登録時、2年目には有意差はないが全体に増加していた。腹囲はインスリン治療の有無によって違いはなかった。HbA1c、血圧、脂質値には、1登録時と2年目には変化がなかった。しかしながら、インスリン未治療者において、登録時とくらべて2年目のIRI値には違いがみられた。 すなわち、男女とも登録時20歳以上群のIRI値は登録時20歳未満群より低値であり、1年後はさらに低下していた。また、登録時20歳以上群は登録20歳未満群に比べ網膜症有病率が高く、女性群に特に網膜症が進行していた。治療においては2剤以上使用しているもの、ないしインスリン治療中患者が増加していた。
結論
患者背景の上流にメタボリックシンドロ−ムの存在が疑われたが、20歳を超えると、インスリン分泌能の低下が 起こり始めており、合併症有病率は細小血管障害が先行で、大血管障害を有するものは非常に稀であった。
若年発症2型糖尿病は、「肥満を主体とした2型糖尿病」といえるが、20歳以上になるとインスリン分泌能の低下がおこりはじめていること、細小血管障害が先行していることが大人のインスリン抵抗性による2型糖尿病と特徴を異にしている。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200825014B
報告書区分
総合
研究課題名
多施設共同研究:小児・思春期(若年)発症2型糖尿病の合併症発症率の経年的全国調査
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-050
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
内潟 安子(東京女子医科大学(医学部) 糖尿病センター第三内科)
研究分担者(所属機関)
  • 岩本 安彦(東京女子医科大学(医学部) 糖尿病センター第三内科)
  • 田嶼 尚子(東京慈恵会医科大学・糖尿病代謝内分泌内科学講座)
  • 西村 理明(東京慈恵会医科大学・糖尿病代謝内分泌内科学講座)
  • 吉岡 成人(北海道大学医学部病態内科学講座・第二内科)
  • 浦上 達彦(駿河台日本大学病院小児科)
  • 菊池 信行(横浜市立大学付属市民総合医療センター小児科)
  • 武田 倬(鳥取県立中央病院内科)
  • 岡田 泰助(高知県もみの木病院小児科)
  • 荒木 栄一(熊本大学大学院医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)全国規模の専門病院(全国に10,000人あまりいる日本糖尿病学会員にいる施設)における調査から20歳未満発症2型糖尿病のデータベースを構築する、
2)このコホートを前向きに追跡し、治療の実態、合併症の累積発生率、就職状況などの生活の質を明らかにする、
3)合併症の頻度・重症度およびその危険因子の解析をする、
研究方法
調査への協力の得られたわが国の20歳未満で発症し、2006年度内に現在30歳未満の2型糖尿病患者を対象とする。
結果と考察
2回の調査が完了したのは688名であり、小児科医34名から登録された187名と内科医274名からの501名である。対象者の約60%は、学校検尿で発見されているが、学校検尿システムのない高校生以上が内科医登録群に
多く登録されていた。体重および腹囲は、登録時、2年目には有意差はないが全体に増加していた。腹囲はインスリン治療の有無によって違いはなかった。HbA1c、血圧、脂質値には、登録時と2年目には変化がなかった。  しかしながら、インスリン未治療者において、登録時、ならびに2年目と比較においてIRI値に特記すべきことがみられた。 すなわち、登録時においては、男女とも登録時20歳以上群のIRI値は登録時20歳未満群より低値であった。そして、1年後はさらに低下していた。合併症においては、登録時20歳以上群は登録20歳未満群に比べ網膜症有病率が高く、女性群に特に網膜症が進行していた。治療においては2剤以上使用している患者、ないしインスリン治療中患者が増加していた。
患者背景の上流にメタボリックシンドロ−ムの存在が疑われたが、20歳を超えると、インスリン分泌能の低下が 起こり始めることがうかがわれ、また合併症は登録時の時点で約半数に腎症2期以上、約20%に網膜症が存在していた、大血管障害を有する患者は1名だけであった。
結論
若年発症2型糖尿病は、「肥満を主体とした2型糖尿病」、つまり「インスリン抵抗性を主体とした2型糖尿病」と想定されるが、20歳以上になるとインスリン分泌能の低下がおこりはじめていること、すでに細小血管障害が先行していた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200825014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今回のコホートは全国規模の若年発症肥満2型糖尿病患者の治療と合併症状況を把握するもので、大人肥満2型糖尿病で周知されている合併症発症状況との差異があるのかどうかも興味あるところであった。結果は、同じくインスリン抵抗性を基盤にしておりながら、大人と異なり、インスリン分泌低下を来たしやすく、細小血管障害が大血管障害発症よりはるかに先行していた。これは新知見である。
臨床的観点からの成果
厚労省科学研究補助を得て、全国の小児科と内科にまたがる年齢層における2型糖尿病の実態を調査できた。これははじめての試みである。これを企画したのは、この年齢層に発症した2型糖尿病の治療が2つの科のどっちつかずになっていること、発症初期は無症状のことが多く本人の病識が乏しいこと、糖尿病性合併症が重症化するのが30-40歳代でありQOLを低下させることから、このコホートは貴重なものである。
ガイドライン等の開発
血糖コントロール状況と治療と合併症の今後の推移から、今日の日本人若年発症2型糖尿病における最適な治療ガイドラインが作成できるものと考えられる。ただし、調査は2年間終了したところなので、今後5年間は調査する必要があろう。
その他行政的観点からの成果
1.学校検尿時の尿糖陽性者へのブドウ糖負荷試験時に、血中インスリン値測定の重要性
2.学校検尿制度を高校生ないし18歳まで延長する重要性
3.検尿時の尿糖陽性者への合併症有無のチェックの必要性
4.検尿時の尿糖陽性とともに尿たんぱく陽性者の厳重な経過観察の必要性
5.検尿で発見された児童のその後の観察体制の整備
が今後の課題となる。
その他のインパクト
教育医事新聞2007年8月25日号8面。
女性自身2007年7月31日号 54-55ページ
毎日新聞2007年8月17日号 12面
Up date 2007,5,24特別号10ページ
毎日新聞2006年11月5日タブロイド版18ページ。NHKきょうの健康 2008年11月6日「小児期から発症する1型糖尿病」のなかでも2型糖尿病を一緒に取り上げた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
Diabetes Care 30;e30, 2007, Diab Res Clin Prac 82;80-86, 2008
その他論文(和文)
7件
糖尿病診療マスター、Diabetes Frontier、小児科学会雑誌、などである。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
2回とも日本糖尿病学会学術講演会における口演である。
学会発表(国際学会等)
3件
第19回国際糖尿病連合学術集会(IDF)では、小児思春期2型糖尿病について招待講演した。あと、2つは国際小児思春期糖尿病学会における発表である。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
9件
各地区の糖尿病患者錬講演会で若年発症2型糖尿病のことを話しした。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-