慢性心不全基本治療薬である利尿薬のクラス内予後改善効果の差異に関する研究

文献情報

文献番号
200825011A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性心不全基本治療薬である利尿薬のクラス内予後改善効果の差異に関する研究
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-046
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
増山 理(兵庫医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 宏(秋田大学 医学部)
  • 赤阪 隆史(和歌山県立和歌山医科大学 医学部)
  • 山本 一博(大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
  • 大手 信之(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 中谷 敏(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 平野 豊(近畿大学 医学部)
  • 折笠 秀樹(富山大学 医学部)
  • 角間 辰之(久留米大学 バイオ統計センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
利尿薬は心不全患者に対して積極的に投与すべき基本治療薬のひとつであるが、利尿薬の生命予後改善効果に関するエビデンスは無い。我々は心不全モデル動物実験により、長時間作用型利尿薬(アゾセミド)が短時間作用型利尿薬(フロセミド)より生存率改善効果が優れていることを明らかにした。そこで慢性心不全症例において長時間作用型利尿薬と短時間作用型利尿薬の効果を比較検討することを目的とし、「利尿薬のクラス効果に基づいた慢性心不全に対する効果的薬物療法の確立に関する多施設共同臨床研究 (J-MELODIC)」を立ち上げた。
研究方法
試験プロトコールを以下のように作成した。すなわち、ループ利尿薬が投与されている安定した慢性心不全症例(NYHA II-III)を長時間作用型利尿薬アゾセミド群(一日一回朝食後 30mgから60mg経口投与)と短時間作用型利尿薬フロセミド群(一日一回朝食後20mgから40mg経口投与)にランダム化し、前向き無作為オープン比較試験により予後を検討する。一次エンドポイントは心不全症状の悪化による入院または心血管死とした。二次エンドポイントは ①全死亡 ②QOLの変化 ③BNPの上昇(割付前より30%以上)④心不全症状の悪化 とした。
結果と考察
全国8施設の研究協力施設により多施設共同研究組織を結成し、各施設での倫理委員会の承認を受けた。また試験薬割付のための専用WEBサイトを立ち上げた。平成18年6月2日に最初の患者を登録した。さらに心不全診療に積極的な18施設に協力を要請し、当初の目標(平成20年3月31日)より少し遅れたが、平成20年8月15日までに320例の症例登録を完了した。登録された患者のプロファイルは現在の日本の慢性心不全患者の実態をよく反映していた。動物実験で示された長時間作用型利尿薬の優位性が本臨床試験でも示された場合、日本・欧米の慢性心不全治療ガイドラインにおける基本治療薬の部分を大きく変え、現在わが国において100万人以上で投与されている短時間作用型利尿薬は今後長時間作用型利尿薬に変更すべきであることが推奨されることになる。
結論
J-MELODIC試験を推進し、320人の症例登録を完了した。今後自主研究として平成22年8月15日まで症例のフォローアップを完遂し、データを解析し、長時間作用型利尿薬と短時間作用型利尿薬の優劣を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200825011B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性心不全基本治療薬である利尿薬のクラス内予後改善効果の差異に関する研究
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-046
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
増山 理(兵庫医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 宏(秋田大学 医学部)
  • 赤阪 隆史(和歌山県立和歌山医科大学 医学部)
  • 山本 一博(大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
  • 大手 信之(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 中谷 敏(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 平野 豊(近畿大学 医学部)
  • 折笠 秀樹(富山大学 医学部)
  • 角間 辰之(久留米大学 バイオ統計センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
利尿薬は心不全患者に対して積極的に投与すべき基本治療薬のひとつであるが、利尿薬の生命予後改善効果に関するエビデンスは無い。我々は心不全モデル動物実験により、長時間作用型利尿薬(アゾセミド)が短時間作用型利尿薬(フロセミド)より生存率改善効果が優れていることを明らかにした。そこで慢性心不全症例において長時間作用型利尿薬と短時間作用型利尿薬の効果を比較検討することを目的とし、「利尿薬のクラス効果に基づいた慢性心不全に対する効果的薬物療法の確立に関する多施設共同臨床研究 (J-MELODIC)」を立ち上げた。
研究方法
試験プロトコールを以下のように作成した。すなわち、ループ利尿薬が投与されている安定した慢性心不全症例(NYHA II-III)を長時間作用型利尿薬アゾセミド群(一日一回朝食後 30mgから60mg経口投与)と短時間作用型利尿薬フロセミド群(一日一回朝食後20mgから40mg経口投与)にランダム化し、前向き無作為オープン比較試験により予後を検討する。一次エンドポイントは心不全症状の悪化による入院または心血管死とした。二次エンドポイントは ①全死亡 ②QOLの変化 ③BNPの上昇(割付前より30%以上)④心不全症状の悪化 とした。
結果と考察
全国8施設の研究協力施設により多施設共同研究組織を結成し、各施設での倫理委員会の承認を受けた。また試験薬割付のための専用WEBサイトを立ち上げた。平成18年6月2日に最初の患者を登録した。さらに心不全診療に積極的な18施設に協力を要請し、当初の目標(平成20年3月31日)より少し遅れたが、平成20年8月15日までに320例の症例登録を完了した。登録された患者のプロファイルは現在の日本の慢性心不全患者の実態をよく反映していた。動物実験で示された長時間作用型利尿薬の優位性が本臨床試験でも示された場合、日本・欧米の慢性心不全治療ガイドラインにおける基本治療薬の部分を大きく変え、現在わが国において100万人以上で投与されている短時間作用型利尿薬は今後長時間作用型利尿薬に変更すべきであることが推奨されることになる。
結論
J-MELODIC試験を推進し、320人の症例登録を完了した。今後自主研究として平成22年8月15日まで症例のフォローアップを完遂し、データを解析し、長時間作用型利尿薬と短時間作用型利尿薬の優劣を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200825011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我々はラットの心不全モデル(ダール食塩感受性高血圧ラット)において長時間作用型利尿薬アゾセミドには死亡率減少効果があるが短時間作用型利尿薬フロセミドにはないことを明らかにした。今回我々はそれが人間にも応用できるのではないかと考えて、慢性心不全患者320例をアゾセミド群とフロセミド群(各群160人ずつ)にランダム化して登録し、予後を調査している。残念ながらまだ所期の成果は得られていないが、心不全治療におけるループ利尿薬の使用法に関するデータはきわめて乏しく、貴重な知見が得られると期待される。
臨床的観点からの成果
登録した320例の平均年齢は72歳であり、左室駆出率が50%以上と正常範囲であるいわゆる拡張障害の心不全患者が54%を占めており、現在の日本の心不全の実態を反映した患者群であった。これまでの日本の心不全臨床試験では収縮能の低下した患者しかエントリーされておらず、今回の解析において、日本人の心不全患者の分布、拡張不全患者の特徴が明らかにされた。心不全患者の約半数を占める拡張不全患者に関するエビデンスは皆無であり、かかる点からも最終結果が期待される。
ガイドライン等の開発
日米欧のどの慢性心不全ガイドラインにおいてもループ利尿薬に関するエビデンスそのものがないと記載されており、ましてやそのクラス内での差異には全く触れられていない。まだ最終的な結果は得られていないが、すでに26例の症例が一次エンドポイントに到達している。もし長時間作用型利尿薬と短時間作用型利尿薬の優劣が明らかになれば、たとえどのような結果であれ、世界中の慢性心不全ガイドラインが書き換えられることは間違いない。
その他行政的観点からの成果
これまでに本邦ではJ-CHF、J-DHF、MUCHA、ARCH-J、EPOCHなどの慢性心不全薬物治療に関する多施設共同研究が行われてきた。しかし公的資金が導入されて行われたJ-CHFやJ-DHFはいずれも登録目標に未達成である。そのほかの臨床試験はメーカー主導で行われた。J-MELODIC試験は、本邦で初めて300人を超えた規模の公的資金が導入された心不全の臨床試験と位置づけられる。慢性心不全の悪化による入院を予防し医療費を抑制する為の貴重なデータが1年半後には得られるものと確信している。
その他のインパクト
現在さまざまな学会のセミナーやシンポジウムにおいてJ-MELODIC試験の概要を紹介しているが、いつも多くの質問が寄せられる。ループ利尿薬に関するエビデンスがこれまでになかったためと思われ、専門医の関心の高さがうかがわれる。慢性心不全患者は増加の一途をたどっているが、その大半の患者がフロセミドを内服しているので、その薬を切り替える必要があるとなれば、マスコミなどにも大きく取り上げられることになると思われる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
Circulation Journal 71:2007(下記)
その他論文(和文)
4件
1.循環器科 62:2007 2.日本臨牀 66(増刊) 2008 3.medicina 46:2009 4.綜合臨床 58:2009
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
1.第56回日本心臓病学会学術集会 2.Japanese Heart Failure Society 12th Annual scientific Meeting.
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
J-MELODIC Program Committee
Rationale and design of a randomized trial to assess the effects of diuretics in heart failure: Japanese Multicenter Evaluation of Long- vs Short-Acting Diuretics in Congestive Heart Failure (J-MELODIC)
Circulation Journal , 71 (7) , 1137-1140  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-