勤労者の健康づくりのための給食を活用した集団及びハイリスク者への対策に関する研究

文献情報

文献番号
200825004A
報告書区分
総括
研究課題名
勤労者の健康づくりのための給食を活用した集団及びハイリスク者への対策に関する研究
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-038
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
石田 裕美(女子栄養大学 給食・栄養管理研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学)
  • 由田 克士(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
  • 村山 伸子(新潟医療福祉大学)
  • 平田 亜古(お茶の水女子大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
職場給食を食環境整備の一環として位置づけ、集団およびハイリスク者に対する健康づくり対策として職場給食を活用した食環境プログラムと栄養教育を併用した介入効果の検証を目的とした。
研究方法
調査対象施設は、東京、神奈川、千葉、富山に所在する3企業5事業所である。最終年度は介入の効果を測定した。
A企業では、従業員全体の食行動と食品・栄養素摂取量の効果を検証するために、介入1年後の定期健診時において調査を実施した。ベースラインは468名を、介入1年後は406名を解析対象者とし、前後比較により変化を観察した。
B企業では、食堂の利用状況を継続的に観察しながら、食堂での食事の選択方法について集団指導を実施し、昼食の摂取状況の変化と体重の変化を6ヶ月間観察した。集団指導はBMI24以上の社員を対象とし5期設定した。解析対象は男性のみで集団指導群126名、自己学習群196名である。
C企業では、継続的な情報提供、特別献立の提供、減塩を目的とした卓上調味料容器やカトラリーの設置、これらに合わせたイベントを実施した。情報の理解度や食堂での取り組み全体に対する利用者の評価等について800名を対象に調査を実施した。
結果と考察
食環境プログラムとして食堂で副菜(野菜料理)の選択を奨励する、脂質の少ない副菜、主菜を提供するなど、アクセスできる料理の品質の変更、売店や自販機でのノンカロリーの飲料(お茶など)の販売スペースの拡大などで、利用者の食物レベルの変化、栄養素レベルの変化につながった。
食堂での料理の選択方法を学習できる機会を提供し、自らの選択内容をモニタリングすることで、BMI24以上の対象者において、有意な体重減少を認めた。
特にポピュレーションアプローチとして意識・態度レベル、食物選択行動レベルの変化が認められ、また30?40歳代の適正体重から肥満方向へ片寄り始めた対象者の体重減少に結びつく可能性が示唆された。給食を活用したプログラムは、無理のない継続的な体重減少や適正体重の維持につながると考えられた。
結論
従業員食堂を活用した取り組みは、利用者、提供者両者にとって負荷の小さい取り組みである。限られた費用やマンパワーを有効に活用し、対象者の時間的な拘束による負担を軽くしながら効果をあげるには、1)繰り返し利用する、2)食べる体験が可能であることのメリットを活用した給食施設での食環境プログラムが有効である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200825004B
報告書区分
総合
研究課題名
勤労者の健康づくりのための給食を活用した集団及びハイリスク者への対策に関する研究
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-038
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
石田 裕美(女子栄養大学 給食・栄養管理研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 秀昭(金沢医科大学)
  • 由田 克士(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
  • 村山 伸子(新潟医療福祉大学)
  • 平田 亜古(お茶の水女子大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
職場給食を食環境整備の一環として位置づけ、集団およびハイリスク者に対する健康づくり対策として職場給食を有効に機能させる仕組みを具体的に提示し、かつその有効性を検証することを目的とした。
研究方法
調査対象施設は、東京、神奈川、千葉、富山に所在する3企業5事業所である。研究初年度に介入施設のベースライン調査を実施し、その結果に応じ、介入施設の食環境整備を実施した。2年目には集団全体に対する介入と同時に、ハイリスク者に対しても給食を活用した栄養教育プログラムを施設の特性に合わせて実施した。また、コントロール施設のベースライン調査の実施を行った。最終年度は介入の効果を測定した。実施した食環境介入プログラムは情報提供、提供する食事の品質管理、減塩に結びつくような卓上調味料の容器やカトラリーの設置、イベントの開催である。また、食堂での食事の選択方法を中心とした小集団での学習プログラムを実施した。アウトカム指標は提供情報の理解度(知識レベル)、食物摂取頻度調査結果および食堂での料理の選択内容(食物・栄養素レベル)、体重・腹囲(身体レベル)とし、介入前後および介入・非介入施設間で調査した。
結果と考察
食堂で副菜(野菜料理)の選択を奨励する、脂質の少ない副菜、主菜を提供するなど、アクセスできる料理の品質の変更、売店や自販機でのノンカロリーの飲料(お茶など)の販売スペースの拡大などでの食環境プログラムを実施したことで、利用者の食物レベルの変化に沿った栄養素レベルの変化が見られた。
また、食堂での料理の選択方法を具体的に学習できる機会を提供し、自らの選択内容をモニタリングすることで、BMI24以上の対象者において、有意な体重減少を認めた。
従業員は繰り返し食堂を利用するだけで食や栄養に関する情報とそれにリンクした食物にアクセスすることができる。こうした従業員食堂を活用した食環境整備は利用者全体にアプローチできる。このようなポピュレーションアプローチで利用者の意識・態度レベル、食物選択行動レベルの変化が認められることを確認できた。給食を活用した食環境プログラムは、無理のない継続的な体重減少や適正体重の維持につながると考えられた。
結論
従業員食堂を活用した食環境プログラムは、利用者、提供者いずれにも、負荷の小さい取り組みであり、ハイリスク者を含む従業員全体にアプローチできかつ効果をあげられる方法である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200825004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
職場給食を利用者の食環境と捉え、ポピュレーションアプローチの方法としての食環境介入プログラムの有効性を検証するためにトランスセオレティカルモデルを集団に適用した研究として特徴がある。またITを活用し、非接触型ICカード「FeliCa」を用いた電子マネーサービスによる個人識別・決済技術を応用して利用者の手を煩わすことなく食堂での食事の選択内容の履歴や身体計測情報を収集・蓄積し、それに基づくセルフモニタリングやアセスメントを実施することの有効性を検証した。
臨床的観点からの成果
昼食1食であっても、継続的に繰り返して食物と情報に同時にアクセスすることで、意識・態度レベル、行動レベルの変化が認められることを確認できた。同時に、昼食1食の選択内容を継続的にセルフモニタリングすることは、30歳代、40歳代の適正体重から肥満方向へ片寄り始めた対象者の体重減少に結びつく可能性が示唆された。給食を活用したプログラムは、無理のない継続的な体重減少や適正体重の維持につながると考えられる。
ガイドライン等の開発
職場給食における食環境整備の具体的な方法・実施手順・評価方法についてガイドブックを作成し、保健所、特定給食施設、受託給食会社などに普及する。このことにより、健康増進法施行規則に示された特定給食施設における栄養管理の基準を事業所給食施設に合わせて具体的に実施方法を提示できた。
その他行政的観点からの成果
適切な栄養管理の実施水準が最も低い職場給食において健康増進法の趣旨を反映した取り組みを行ったことで、法的整備の意義の検証にもつながる結果が得られた。さらに特定健診・特定保健指導制度の実施に伴い、情報提供、動機付け支援などの一方法として給食を活用したポピュレーションアプローチの具体的な方法の提示につながった。事業所給食施設が健康づくりの場として有効であることを広く普及し、保健所の管理栄養士の業務のひとつである特定給食施設支援の具体的な方法等行政栄養士の理解を深めることにつながった。
その他のインパクト
企業の総務・人事担当者、健康保険組合、給食業務受託事業者、産業医、保健師、管理栄養士などを対象にシンポジウムを開催した。また本研究班関係者を中心とした座談会が公衆衛生情報(vol38,No5,2008)に掲載された。これにより、研究代表者および研究分担者が保健所管理栄養士の給食施設支援事業の企画や評価に関する研修会、保健所開催の給食施設支援関連の講習会の講師として全国的に活動した。特定健診・特定保健指導の実施にあわせ、給食事業受託事業者が取り組むヘルシーメニューの開発などが新聞でも紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
澤田樹美 村山伸子 石田裕美他
食品製造業従業員の食物摂取・食行動の課題
女子栄養大学紀要 ,  (38) , 37-52  (2007)
原著論文2
澤田樹美、村山伸子、武見ゆかり他
職場におけるトランスセオレティカルモデルを応用した食環境介入と栄養教育の統合プログラムの開発と評価
日本健康教育学会学会誌  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-