がん化学療法後早期から療養の質を向上させる緩和ケア技術の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200824081A
報告書区分
総括
研究課題名
がん化学療法後早期から療養の質を向上させる緩和ケア技術の開発に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・若手-022
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小川 朝生(国立がんセンター東病院 精神科)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 研(国立がんセンター中央病院 精神腫瘍学)
  • 山口 雅之(国立がんセンター東病院 機能診断開発部)
  • 和田 徳昭(国立がんセンター東病院 乳腺科)
  • 落合 淳志(国立がんセンター東病院 臨床腫瘍病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
19,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん化学療法が進歩し、予後が期待できるようになった一方、化学療法後に認知機能障害を生じることが報告されている。この認知機能障害は”chemo-brain”と呼ばれ、精神心理的苦痛を生じ社会復帰の障害や生活の質(QOL)の低下が生じるため、早期から適切な緩和ケアが提供されることが必要である。この病態を解明するために縦断的に調査することを計画した。
研究方法
1)療養生活の質と認知機能の縦断評価
パラメータの設定をおこなうために、先行研究をレビューした。次に適格基準を設定するために、当院を受診した女性乳癌患者を対象とした基礎調査をおこなった。
またスクリーニングプログラムを導入するためのマニュアルを作成することを目指した。
2) 療養の質と脳機能との関連性の検討
静磁場強度3テスラヒト臨床用磁気共鳴画像装置及び高感度8チャンネル信号受信コイルにて、局在化MRS法であるpoint resolved spectroscopy, PRESSシークエンスを使用し、GABA水溶液ファントムを計測した。
3) 化学療法による脳機能障害機序の検討
通常飼料で飼育したC57/BL6マウス(亜鉛充足群)および低亜鉛飼料で飼育したマウス(低亜鉛群)にシスプラチンを腹腔内投与後、2瓶選択法により甘味に対する味覚行動の変化を検討した。また、血清亜鉛値を測定し、有郭乳頭の組織学的検討を行った。
結果と考察
1) 療養生活の質と認知機能の縦断評価
縦断調査のための基礎調査を実施した。また、本研究に関連して、スクリーニングの実施マニュアルの作成を進めた。
2) 療養の質と脳機能との関連性の検討
ファントム実験を実施したところ、2.5 mM GABA C-2,C-3,C-4 プロトンのピークを観測した。1.25 mM GABAでは、困難であった。
3) 化学療法による脳機能障害機序の検討
低亜鉛条件下でシスプラチンを投与した群では、味細胞に形態学的変化を認めなかったものの、甘味嗜好性に有意な低下が認められた。
結論
1) 療養生活の質と認知機能の縦断評価
縦断調査の対象を70歳未満 女性、Stage 0-Ⅲ原発乳癌症例として計画を立案した。
2) 療養の質と脳機能との関連性の検討
計測法の改良により、GABAの生体内検出が可能となると予想された。
3) 化学療法による脳機能障害機序の検討
シスプラチンは低亜鉛状態で神経障害をもたらすことで味覚障害が生じる可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2009-03-31
更新日
-