再発等の難治性造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植を用いた効果的治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
200824053A
報告書区分
総括
研究課題名
再発等の難治性造血器腫瘍に対する同種造血幹細胞移植を用いた効果的治療法確立に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-026
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
森 慎一郎(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
  • 田野崎 隆二(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
  • 内田 直之(国家公務員共済組合虎の門病院 血液科)
  • 中尾 眞二(金沢大学医薬保健研究域医学系 細胞移植学)
  • 山本 弘史(国立がんセンター中央病院 薬剤部)
  • 山下 卓也(東京都立駒込病院 血液内科)
  • 長藤 宏司(久留米大学医学部 内科学講座血液内科部門)
  • 河野 嘉文(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 小児発達機能病態学分野)
  • 加藤 裕久(昭和大学薬学部 医薬品情報学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,698,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
同種造血幹細胞移植を実施する際の基本的薬物療法である、前処置薬と免疫抑制剤の個別化、最適化をはかる事により、わが国の治療成績を向上させることを目的とした。これらの臨床試験結果により薬剤の適正使用の方法論が確立した段階においては、各薬剤の添付文書にその成果を反映することを目的とする。これによって研究成果が広く速やかに臨床現場に普及し、治療技術の均てん化に大きく寄与するものと思われる。
研究方法
1) 経口シクロスポリンの至適な薬物モニタリングの方法を決定するため、前向き臨床試験を実施した。2) 静注タクロリムスを経口に切り替える際の至適投与量を検討する臨床試験を実施した。3)静注ブスルファンを用いて同種造血幹細胞移植を実施する小児例について、薬物動態試験を開始し、継続している。3) 合併症治療薬であるシドフォビルの有用性について前向きに検討した。
結果と考察
1. シクロスポリン点滴静注開始後3時間(点滴終了時)の血中濃度(C3)あるいは内服後2時間の血中濃度(C2)を目標値以上に維持すれば、急性GVHDの発症を抑えられる可能性が示唆された。
2. 経口タクロリムスへの切り替えは、静注量の4倍量が適切である事が示されたが、個人差があるため個体間の変動要因に関して更なる検討が必要と思われた。
3. 薬物動態の個人差を調整しブスルファン投与の安全性と有効性を担保するには、初回投与時の血中濃度の推移とAUCを確認し、その結果によって後半の投与量を調節することの有用性が示唆された。より簡便な方法として、前処置開始前にテスト量を投与して薬物動態をあらかじめ検討する事の有用性について更に検討を進める事となった。
3. 造血幹細胞移植後の出血性膀胱炎に対して、シフドフォヴィル1mg/kg x 3/週の投与が安全かつ有用である可能性が示された。

結論
臨床薬理学的試験を実施することにより、造血幹細胞移植療の基本的薬物療法の最適化が可能であることが明らかとなった。研究結果を広く共有する手段を講じることにより、治療技術の均てん化に寄与するものと思われた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
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