成人T細胞白血病(ATL)に対する同種幹細胞移植療法の開発とそのHTLV-1排除機構の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200824040A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T細胞白血病(ATL)に対する同種幹細胞移植療法の開発とそのHTLV-1排除機構の解明に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 純(独立行政法人国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 神奈木 真理(東京医科歯科大学大学院研究科)
  • 松岡 雅雄(京都大学ウイルス研究所 )
  • 豊嶋 崇徳(九州大学医学部 遺伝子・細胞療法部 )
  • 朝長 万左男(長崎大学医学部 原研内科 )
  • 宇都宮 與(財)慈愛会今村病院分院 血液内科 )
  • 谷口 修一(虎の門病院 血液内科 )
  • 田野崎 隆二(国立がんセンター中央病院臨床検査部)
  • 増田 昌人(琉球大学医学部 第二内科)
  • 鵜池 直邦(独行政法人国立病院機構 九州がんセンター 血液内科)
  • 今村 雅寛(北海道大学大学院 医学研究科)
  • 谷脇 雅史(京都府立医科大学 大学院分子病態検査医学)
  • 山中 竹春(独行政法人国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究部 腫瘍統計学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
32,204,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
移植幹細胞源を非血縁者まで拡大してATLに対するミニ移植療法の臨床試験を行う。
また本療法のHTLV-1排除機構を解明して、新たな免疫療法の開発に応用する。
研究方法
1)血縁者間末梢血幹細胞を利用したミニ移植療法の安全性と有効性に関する検討
(1-1)第2期試験(第1相)の解析:
(1-2)第3期試験(第2相)の実施:
2)非血縁者間幹細胞を利用したミニ移植(第4期試験)の検討
3)免疫療法の検討
4)移植療法に伴う基礎的解析
(4-1)HTLV-Iプロウィルス量動態に関する研究:
(4-2)ミニ移植後の造血細胞動態に関する研究:
(4-3)特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の解析:
(4-4)分子生物学的解析:
(4-5)同種造血幹細胞移植後の抗白血病効果を促進する試み:
を実施した。
結果と考察
1)血縁者間ミニ移植
(1-1)第1期試験と比較して、第2期試験では早期再発は減少したが、3年生存率は同等であった。全29例の解析から、grade I /IIの急性GVHD発症が予後良好因子であり、移植片対ATL効果の存在が示唆された。10例が移植後3年半以上生存中であった。
(1-2)15例が登録、10例の移植が終了した。
2)非血縁者間ミニ移植
骨髄バンクドナーを介したミニ移植第I相試験の実施計画書が13施設の倫理委員会で承認され、7例が仮登録、1例が本登録された。
3) 免疫療法
Tax特異的CTLエピトープペプチドを添加した成熟自己樹状細胞を投与し、安全性を検証する第I相臨床試験の実施計画書案を検討した。対象は、慢性型ATL、主要評価項目は安全性の検討である。
4)移植療法に伴う基礎的解析
(4-1)22例(61%)で、移植後プロウイルス量が検出限界以下となった。
(4-2)混合キメラ解析により、全例のドナー・レシピエントの識別が可能であった。
(4-3)慢性ATL症例の末梢血単核球から機能性樹状細胞の誘導が可能であった。
(4-4)移植例の解析から、発症時に比べ5'LTRのメチル化が少ないことを見出し、治療による変化の可能性が示唆された。
(4-5)マウスモデルにより形質細胞様樹状細胞療法はGVHD増悪のリスクがあると考えられた。
結論
血縁者間末梢血を利用したATLに対するミニ移植の安全性が確立された。また、感染HTLV-1の分子生物学的特徴および移植後のT細胞応答の解析から、ミニ移植における抗HTLV- 1免疫の役割が明らかになりつつある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-01
更新日
-