がん対策における管理評価指標群の策定とその計測システムの確立に関する研究

文献情報

文献番号
200824022A
報告書区分
総括
研究課題名
がん対策における管理評価指標群の策定とその計測システムの確立に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・一般-023
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(国立がんセンター がん対策情報センター がん情報・統計部)
研究分担者(所属機関)
  • 今中 雄一(京都大学大学院医学研究科医療経済学分野)
  • 濱島ちさと(国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診技術開発部)
  • 宮下光令(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻成人看護学)
  • 島田安博(国立がんセンター中央病院消化器内科)
  • 浅村尚生(国立大学法人東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 杉原健一(国立がんセンター中央病院・呼吸器外科)
  • 向井博文(国立がんセンター東病院・腫瘍内科)
  • 國土典宏(東京大学・医学部附属病院・肝胆膵外科)
  • 東 尚弘(国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診技術開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
20,127,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究班は、がん対策の中でがん診療の均てん化に関する達成状況を評価する診療指標群(Quality Indicator, QI)を設定し、がん診療連携拠点病院において診療の質の計測システムの確立に関する研究を行うことで、がん対策の具体的な目標の設定と達成状況の調査についての基礎資料を提供することを目的とする。昨年度、客観的透明性を以て診療の質指標群を作成し、ひき続き本年度はそれらの診療の質指標群が使用可能なものかどうかを実際の症例に基づき検討した
研究方法
 作成されたQIの使用可能性を検討するため、診療録を元とした採録作業を高度な専門施設2施設において行った。基本的に院内がん登録を利用してその2005年登録症例(診断、または新規来院)のリストを作成してサンプルとし、採録した。また、乳癌、大腸癌、肝癌については、各専門学会が管理する臓器がん登録の使用許可が得られたため、これらで収集されている項目で計算が可能なものについてQI遵守率を計算した。乳癌、大腸癌については、施設識別コードの使用許可が得られたため施設別の遵守率の分布を計算した。
結果と考察
全体として、今回がん診療専門施設におけるパイロットであったため、必要情報は比較的に利用可能な形で記載されていた。また、遵守率も100%近いものが多く、今回のQIが実際に行われているものであることが確認された。逆に専門施設以外でこれらの遵守率に改善の余地が有るかどうかの検証がこれから問題になるかと思われる。
各QIの対象者数に関しては多いものから少ないものまで様々であった。少ないものについては、がん診療連携拠点病院における計算としては不都合であると考えられた。臓器がん登録は多施設におけるデータが集まっていることが特徴であり、それを元に施設分布を検討することができた。その中では、登録症例全体の中ですでに95%以上の遵守率があるもの、全体としては50%程度の遵守率で施設が正規分布に近い形で分布しているもの、また逆に遵守率が20%程度であり非常に施設的にも遵守率に大きく幅があるものなどが明らかになった。
結論
今回、がん診療専門施設で採録パイロットを行ったために非常に遵守率は高い結果となっている。これは、多施設における改善の余地があるものなのか不明である点で問題があるが、逆に専門施設では行われている診療であることが確認されたことでこれらのQIの妥当性が検証されたと言える。今後幅広い施設で採録を行うことで検討していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200824022B
報告書区分
総合
研究課題名
がん対策における管理評価指標群の策定とその計測システムの確立に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・一般-023
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(国立がんセンター がん対策情報センター がん情報・統計部)
研究分担者(所属機関)
  • 今中雄一(京都大学大学院医学研究科医療経済学分野)
  • 濱島ちさと(国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診技術開発部)
  • 宮下光令(東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻成人看護学)
  • 島田安博(国立がんセンター中央病院消化器内科)
  • 浅村尚生(国立大学法人東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 杉原健一(国立がんセンター中央病院・呼吸器外科)
  • 向井博文(国立がんセンター東病院・腫瘍内科)
  • 國土典宏(東京大学・医学部附属病院・肝胆膵外科)
  • 東 尚弘(国立がんセンターがん予防・検診研究センター検診技術開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん診療の均てん化を評価する診療の質指標群(Quality Indicator, QI)を、乳がん、肝がん、大腸がん、胃がん、肺がん、緩和ケアに関して、診療ガイドラインや先行研究をもとに作成することで、がん医療均てん化の評価で使用可能なツールを作成する。
研究方法
初年度、平成18年度は管理評価指標群の策定の方法論について検討し、その作成においては、国際的な標準手法であるRAND/UCLA適切性評価法を使用することを決定した。この手法は客観的合意検証法として確立している。具体的には、まずQI候補とその根拠のまとめを作成して、それを2回多様な職種を網羅する専門家パネルで1-9のスケールを用いて適切性を評価する。その間に1度パネルメンバーが一堂に会して検討会を行い、2回目の評価にはその議論を反映させ、さらに検討会の間に表現の修正なども行うという手順をとる。この2回の評価は個別独立して行うため、他者に影響されずに評価を行うことができる。平成19年度はそれぞれの臓器に関してこのプロセスを行い分野ごとのQIを作成した。専門施設2施設(それぞれの分野で1施設)でパイロット採録を行い、QIを今後使用する上での問題点労力などについて検討した。また、同時に学会が行っている臓器がん登録を乳癌、大腸癌、肝癌についてデータの使用許可を得て、可能な限りQIを適用した。
結果と考察
総計211のQIが作成された。パイロット対象はがん診療専門施設であったため、おおむね高い遵守率であり専門施設における標準としては確認された。しかし、逆に非常に遵守率の低いQIもあり、それが診療の改善を要するものなのか逆にQIに改善の余地があるものなのか、診療科のフィードバックを得ながらそれを専門家パネルに伝達して検討を行う必要があると考えられた。
臓器がん登録についてはデータの使用が可能な年度が大腸癌で1998年症例、肝癌で2002~2003年症例と古く、乳癌は2005年であった。乳癌、大腸癌は施設の区別が付いたため、各QIについて施設別の遵守率の差について検討しQI毎にばらつきなどが見られた。
結論
今後は他のがん拠点病院等での検証を行いQIの有用性について検証するとともに、問題点についてはフィードバックをし、診療の質の改善と、より良いQIの作成に努め併せて普及に役立てる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200824022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ガイドラインを元にして実際の診療を検証するための指標を開発したことで、これから行うべきがん医療の均てん化施策の効果評価のための基礎的なツールが提供された。診療の質を評価する際に必要な、ガイドラインから評価指標への転換と、専門家パネルによる選択プロセスを減ることで妥当性の高い評価指標が明示的に決定された。また、実際に使用可能なデータ源の検討が行われたことで、現存のデータの診療の質評価における有用性に関する検討が行われた
臨床的観点からの成果
エビデンスと合意に基づく診療の質指標の開発を試みたことにより、標準が決定可能な分野、未決定な分野の区別が明確になった。また、臓器横断的に研究者が集合して検討を行う機会が提供されたことにより、診療の特徴やバランスなどが検討される場が提供されたと言える。
ガイドライン等の開発
今回はガイドラインの使用方法の1例を提供しているが、ガイドラインそのものを開発したわけではない。診療の質指標については200余のプロセス指標が開発された。
その他行政的観点からの成果
これまで診療の質が可視化されることはなく、がん医療の均てん化についても検証のための仕組みは存在しなかったが、その仕組み構築の第1歩として、基準となるべき診療行為を定義することが可能となった。これらを使用して医療機関へのフィードバックなどを行うことにより、均てん化の精神である全国での等しい診療の質の底上げへの道具になると考えられる。
その他のインパクト
日経BP社による、インターネット記事、がんナビに活動が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mitsunori Miyashita, Kazuki Sato, Tatsuya Morita, et al.
Quality indicator in palliative care: A review
Palliative Care Research , 2 (2) , 401-415  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-