自治体におけるがん対策の現状分析とマネジメントシステムの構築支援に関する研究

文献情報

文献番号
200824015A
報告書区分
総括
研究課題名
自治体におけるがん対策の現状分析とマネジメントシステムの構築支援に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・一般-016
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
今井 博久(国立保健医療科学院 疫学部)
研究分担者(所属機関)
  • 河原 和夫(東京医科大学大学院 政策科学)
  • 小坂 健(東北大学大学院 国際歯科保健学)
  • 福田 吉治(山口大学 医学部地域医療学)
  • 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 政策科学部)
  • 中尾 裕之(国立保健医療科学院 疫学部)
  • 八幡 裕一郎(国立保健医療科学院 疫学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,566,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
都道府県等の自治体で行われているがん対策の実情を把握し、がん治療・予防の均てん化のためのがん対策推進計画の立案、実施および評価にあたり必要とされるマネジメントシステムを検討することを目的にした。今年度は、都道府県がん対策推進計画を詳細にレビューした。
研究方法
現状分析、予防、がん検診、がん医療、がん情報提供・相談、緩和ケア・在宅医療、がん登録、がん研究に分け、評価項目を設定し、評価時点で策定が終了していた45都道府県のがん対策推進計画を分析した。
結果と考察
主なレビュー結果として、(1)現状分析(死亡率等のデータ活用):地域間の死亡率の比較や経年変化の観察において、年齢調整死亡率が適切に利用されておらず、疫学データの活用が十分になされていなかった。(2)予防:成人喫煙率がほとんどの都道府県で把握されているにもかかわらず、目標値が設けられていないところがあるなど、現状把握が目標設定に活かされていなかった。(3)がん検診:ほとんどの都道府県でがん検診受診率についての目標は設定されていたが、事業評価・精度管理に関する記載が不十分であった。(4)がん医療:都道府県がん診療拠点病院が整備されていたのは41県、全二次医療圏において地域がん診療拠点病院が整備されていたのは7県、未整備のうち独自の認定・指定制度による整備計画があったのは6県であった。(5)がん情報提供・相談:ほぼすべての計画において情報提供や相談支援の実施が明記されていたが、国のがん対策基本計画やがん対策関連施策をなぞったかたちのものが大部分だった。(6)緩和ケア・在宅医療:現状と課題の把握は96%、都道府県内緩和ケア病床数の把握は60%、緩和ケアチームを持つ病院の把握は40%で行われていた。(7)がん登録: 32点満点で定量化したところ、平均11で最小5から最大22に分布していた。(8)がん研究:「がん研究」の項目が章立てされていたのは58.6%、研究内容が具体的に明記されていたのは45.7%であった。(9)総括:策定過程、全体構想、がん死亡率の減少、がん患者のQOLの4分野23項目で総合評価したところ、網羅されている項目数が9?18項目とばらつきがあることが示された。
結論
都道府県によって各分野で計画の質に大きな違いがあり、がん均てん化を目標としながら、計画の立案と実施を通じて、逆に地域格差が拡大する懸念があるが示された。計画をより実行性のあるものにし、適切な評価を行うためには、国立保健医療科学院や国立がんセンターなどが、自治体の担当者に対して支援する体制構築の必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200824015B
報告書区分
総合
研究課題名
自治体におけるがん対策の現状分析とマネジメントシステムの構築支援に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・一般-016
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
今井 博久(国立保健医療科学院 疫学部)
研究分担者(所属機関)
  • 河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 政策科学)
  • 小坂 健(東北大学大学院 国際歯科保健学)
  • 福田 吉治(山口大学 医学部地域医療学)
  • 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 政策科学部)
  • 中尾 裕之(国立保健医療科学院 疫学部)
  • 八幡 裕一郎(国立保健医療科学院 疫学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、都道府県等の自治体で行われているがん対策の実情を把握し、がん治療・予防の均てん化のためのがん対策推進計画の立案、実施および評価にあたり必要とされるマネジメントシステムを検討することを目的にした。都道府県がん対策推進計画をレビューした結果を総括し、その課題について検討した。
研究方法
平成20年12月現在公表されていた都道府県がん対策推進計画(45計画)について、「現状分析」「予防」「がん検診」「がん医療」「緩和ケア・在宅医療」「がん登録」の分野ごとに、研究分担者および研究協力者がそれぞれの専門的立場からレビューを行った。レビューは、分野ごとに評価項目を設定し、項目の記載状況を確認した。当てはまる項目の数をもとに、都道府県がん推進計画に内容を定量的に評価した。また、レーダーチャートを用いて評価結果を視覚化した。
結果と考察
それぞれの分野で、都道府県によって計画の内容に違いが認められた。全体の分野で点数が低い都道府県やひとつの都道府県の計画内でも点数の高い分野と低い分野があった。点数の相対的に高かったのは(上位5県)、茨城県、山形県、鹿児島県、広島県、沖縄県であった。現状把握や目標設定等、十分に吟味されずにがん対策基本計画が策定された都道府県があることや各都道府県の計画の中でも内容や質にバラツキがあり、得意・不得意な分野があることが示唆された。
結論
計画策定を通じて、自治体担当者の立案能力の向上が図られ、均てん化に向けた取り組みが進展するであろう。一方で、都道府県がん対策推進計画をレビューした結果明らかになった都道府県による計画の差によって、地域によるがん対策の格差が拡大する懸念もある。地域のがん対策実務者(政策立案者含む)に対して、専門家による技術的な支援を継続的に行うことで、実行性のある計画(アクションプラン)の立案、実施、評価が可能となり、がん治療・予防の均てん化が推進されるであろう。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200824015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究は、予防から緩和ケアまで、地域におけるがん対策(特にがん対策推進計画)の現状と課題を明らかにした。地域のがん対策実務者(政策立案者含む)に対して、研修会の開催を通じて本研究の成果をフィードバックし、専門家による技術的な支援を継続的に行うことで、実行性のある計画(アクションプラン)の立案、実施、評価が可能となり、がん治療・予防の均てん化が推進されることが期待される。
臨床的観点からの成果
 本研究は直接臨床的な調査研究を行うものではないが、がん治療の均てん化を達成させるための政策的な枠組みを提供するものである。本研究の成果を通じて、全国のがん治療の向上と質の均一化が促進されることが期待される。
ガイドライン等の開発
(該当なし)
その他行政的観点からの成果
(該当なし)
その他のインパクト
2007年1月18日に、「がん対策の立案・実施・評価に関する国際ワークショップ:パートナーシップによる包括的アプローチ」を開催した。本シンポジウムの開催は、 週刊医学界新聞(2779号.2008年4月)に「がん対策の均てん化に向けて 米国CCCPの交際ワークショップから」として掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukuda Y, Nakao H, Yahata Y, Imai H
Are health inequalities increasing? Trends of 1955 to 2000.
BioScience Trends , 1 , 38-42  (2007)
原著論文2
Fukuda Y, Nakao H, Imai H
Different income information as an indicator for socioeconomic inequality in health among Japanese adults.
Journal of Epidemiology , 17 , 93-99  (2007)
原著論文3
Fukuda Y, Nakao H, Imai H
In-depth descriptive analysis of trends in prevalence of long-term care in Japan.
Geriatrics & Gerontology International , 8 , 166-171  (2008)
原著論文4
Fukuda Y, Nakaya T, Nakao H, Yahata Y, Imai H
Multilevel analysis of solar radiation and cancer mortality using ecological data in Japan.
BioScience Trends , 2 , 235-240  (2008)
原著論文5
福田吉治、助友裕子、片野田耕太、中尾裕之、八幡裕一郎、祖父江友孝、今井博久
都道府県がん対策推進計画における死亡統計の利活用:地域診断は年齢調整死亡率を用いて適切に行われているか?
保健医療科学  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
2018-06-11