高次脳機能を温存する転移性脳腫瘍の治療法確立に関する研究

文献情報

文献番号
200824009A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能を温存する転移性脳腫瘍の治療法確立に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
嘉山 孝正(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 若林 俊彦(名古屋大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 三國 信啓(京都大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 渋井 壮一郎(国立がんセンター中央病院 脳神経外科)
  • 小川 彰(岩手医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 佐伯 直勝(千葉大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 大西 丘倫(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 澤村 豊(北海道大学病院 脳神経外科)
  • 西川 亮(埼玉医科大学包括的がんセンター 脳脊髄腫瘍科)
  • 白土 博樹(北海道大学病院 放射線科)
  • 冨永 悌二(東北大学病院 神経外科)
  • 城倉 英史(鈴木二郎記念ガンマハウス 脳神経外科)
  • 藤堂 具紀(東京大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 中川 恵一(東京大学医学部附属病院 放射線科)
  • 角 美奈子(国立がんセンター中央病院 放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
15,132,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
転移性脳腫瘍の治療に於いて、治療が奏功し生存期間が延長するに従い、全脳照射後の遅発性高次神経障害が問題視されている。本研究は、全脳照射後の遅発性高次脳機能障害の前方視的解析を行うとともに、全脳照射を行わない新たな転移性脳腫瘍治療レジメを評価する臨床試験を行ない、転移性脳腫瘍を持つがん患者のQOLの向上に資することが目的である。
研究方法
本研究目的のため「転移性脳腫瘍に対する腫瘍摘出術+全脳照射と腫瘍摘出術+Salvage Radiation Therapyとのランダム化比較試験(JCOG0504)」を2006年1月から登録を開始し、現在も症例集積中である。
 JCOG0504は、転移巣が4個以下・最大径の病変が3cmを超え・かつ最大径の病変に対して腫瘍摘出術が行われている転移性脳腫瘍を対象として、標準治療である腫瘍摘出術+全脳照射に対して、腫瘍摘出術後に全脳照射を行わず、残存病変、および新病変に対して定位放射線照射の追加を行うことの有効性を比較(非劣性)するものである。

結果と考察
症例登録は当初低迷していたが、対象がん種に関するプロトコール改訂(2007年8月)、残存病変の規定および照射線量の規定に関するプロトコール改訂(2008年2月)、登録前の手術施設に関する規定の明確化(2008年7月)を行った結果、登録ペースが向上し、2009年3月末現在の登録数は86例となった。ただし、本臨床試験の必要症例数は270例であり、86例はその32%にすぎないため、臨床試験期間の延長と登録症例数確保のための対策を計画中である。
 最近になり、2003年の時点では定位放射線照射の治療アームのなかった米国のNational Comprehensive Cancer Network (NCCN)の転移性脳腫瘍治療ガイドラインにも定位放射線照射がランダム化試験はなされていないとの注釈付きで追加されており、本治療法の有効性が示されれば、全脳照射に係る入院期間の短縮と放射線障害によって引き起こされるADLの低下を抑制でき、転移性脳腫瘍患者の自宅復帰・家庭介護の可能性を高め、国民に計り知れない福利を提供するものと期待される。
結論
研究終了年度である今年度末の登録症例数は、未だ予定症例数に達していないが、上述のように研究テーマの重要性が近年、衰えるどころか、むしろ増している状況を鑑み、本臨床研究は研究期間を延長して何とか完成させ、日本から「がん治療のエビデンスとなる研究成果」を発信したいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200824009B
報告書区分
総合
研究課題名
高次脳機能を温存する転移性脳腫瘍の治療法確立に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
嘉山 孝正(山形大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 若林 俊彦(名古屋大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 三國 信啓(京都大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 渋井 壮一郎(国立がんセンター中央病院 脳神経外科)
  • 小川 彰(岩手医科大学附属病院 脳神経外科)
  • 佐伯 直勝(千葉大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 大西 丘倫(愛媛大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 澤村 豊(北海道大学病院 脳神経外科)
  • 西川 亮(埼玉医科大学包括的がんセンター 脳脊髄腫瘍科)
  • 白土 博樹(北海道大学病院 放射線科)
  • 冨永 悌二(東北大学病院 神経外科)
  • 城倉 英史(鈴木二郎記念ガンマハウス 脳神経外科)
  • 藤堂 具紀(東京大学医学部附属病院 脳神経外科)
  • 中川 恵一(東京大学医学部附属病院 放射線科)
  • 角 美奈子(国立がんセンター中央病院 放射線科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は全脳照射後の高次脳機能障害を回避するため、術後に全脳照射を行わない新たな転移性脳腫瘍治療レジメを開発し、転移性脳腫瘍を持つがん患者のQOLの向上に資することが目的である。
研究方法
本研究目的のため「転移性脳腫瘍に対する腫瘍摘出術+全脳照射と腫瘍摘出術+Salvage Radiation Therapyとのランダム化比較試験(JCOG0504)」を平成18年1月から登録を開始し、現在も症例集積中である。
 JCOG0504は、転移巣が4個以下・最大径の病変が3cmを超え・かつ最大径の病変に対して腫瘍摘出術が行われている転移性脳腫瘍を対象として、標準治療である腫瘍摘出術+全脳照射に対して、腫瘍摘出術後に全脳照射を行わず、残存病変、および新病変に対して定位放射線照射の追加を行うことの有効性を比較(非劣性)するものである。

結果と考察
症例登録は当初低迷していたが、対象がん種に関するプロトコール改訂(平成19年8月)、残存病変の規定および照射線量の規定に関するプロトコール改訂(平成20年2月)、登録前の手術施設に関する規定の明確化(平成20年7月)を行った結果、登録ペースが向上し、平成21年3月末現在の登録数は86例となった。ただし、本臨床試験の必要症例数は270例であり、86例はその32%にすぎないため、臨床試験期間の延長と登録症例数確保のための対策を計画中である。
  放射線照射と高次脳機能障害に関しては、研究分担者の白土博樹、中川恵一らが「放射線による進行性の高次脳機能障害の発生に関する重要な知見」を報告した (JAMA 295(21):2535-2536, 2006/Int. J. Radiat Oncol Biol Phys 68(5): 1388-1395, 2007)。また、同じく研究分担者の佐伯らが、定位放射線照射単独による転移性脳腫瘍1386例の検討を行っている(Jpn J Neurosurg(Tokyo)16: 833-839, 2007)。これらの結果は、現在我々が継続中の新しい治療レジメの正当性を示唆するものであった。

結論
本研究班で検討中の治療レジメの有効性が示されれば、全脳照射に係る入院期間の短縮と放射線障害によって引き起こされるADLの低下を抑制でき、転移性脳腫瘍患者の自宅復帰・家庭介護の可能性を高め、国民に計り知れない福利を提供するものと期待されるとともに、日本発の数少ないがん臨床に関係するエビデンスとなることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200824009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、この摘出術後の全脳照射を行わず、定位放射線照射を利用することで、生命予後を保ちつつ、放射線障害を抑制しQOLの改善、維持が可能であるかを検討するものである。これまで、このようなランダム化比較試験は行われておらず、独創的であり、臨床試験が完遂できれば日本からがん治療のエビデンスを発信できることが期待される。
臨床的観点からの成果
本研究班で検討中の治療レジメの有効性が示されれば、全脳照射に係る入院期間の短縮と放射線障害によって引き起こされるADLの低下を抑制でき、転移性脳腫瘍患者の自宅復帰・家庭介護の可能性を高め、国民に計り知れない福利を提供するものと期待される。
ガイドライン等の開発
2003年には定位放射線照射の治療アームのなかった米国のNational Comprehensive Cancer Network (NCCN)の転移性脳腫瘍治療ガイドラインにも2006年から定位放射線照射がRCTはなされていないとの注釈付きで追加されており、本治療法の有効性が示されれば、転移性脳腫瘍治療への定位照射療法の有効性を示したRCTとしてガイドラインに取り上げられることが期待される。
その他行政的観点からの成果
脳以外の臓器転移のコントロール率改善に伴い、全脳照射による遅発性高次脳機能障害すなわち、認知症(痴ほう)の発生が、がん患者のQOLを著しく低下させる原因として問題視されている。この高次脳機能障害は、高齢者ほど発症しやすく、がん患者の高齢化に伴い今後益々問題となることが予想される。従って、術後の全脳照射に替わりうる治療法の開発は、多発性転移がん患者の治療における喫急の課題であり、その研究成果は日本の厚生労働行政にも大きな影響を与えるものと考える。
その他のインパクト
日本対がん協会と共催で厚生労働省がん臨床研究「がん医療均てん」事業・がん医療均てん研修会を毎年開催した。この研修会は、医療関係者のみならず一般市民も対象としたがんの均てん化事業としてマスコミにも毎年取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Keiichi Nakagawa, Hideomi Yamashita, Hiroshi Igaki, et al.
Contrast medium-assisted stereotactic image-guided radiotherapy using kilovoltage cone-beam computed tomography.
Radiat Med  (2009)
原著論文2
Hiroshi Igaki, Keiichi Nakagawa, Hideomi Yamashita, et al.
CONTRAST MEDIA-ASSISTED VISUALIZATION OF BRAIN METASTASES BY KILOVOLTAGE CONE-BEAM CT.
Acta Oncol.  (2008)
原著論文3
Serizawa T,Higuchi Y,Ono J,et al.
Gannma knife radiosurgery for metastatic brain tumors without prophylactic whole-brain radiotherapy:result in 1000 consecutive cases.
J Neurosurgery (Supple)  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-