文献情報
文献番号
200824006A
報告書区分
総括
研究課題名
がん臨床研究に不可欠な症例登録を推進するための患者動態に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
上 昌広(東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム 社会連携研究部門)
研究分担者(所属機関)
- 林 邦雄(枚方公済病院 血液内科)
- 宮腰 重三郎(東京都老人医療センター 血液科)
- 小松 恒彦(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科)
- 小原 まみ子(亀田総合病院 腎臓高血圧内科)
- 川越 正平(あおぞら診療所)
- 中村 利仁(北海道大学大学院医学研究科 医療システム学分野)
- 山口 拓洋(東京大学医学部附属病院 臨床試験データ管理学)
- 小林 一彦(JR東京総合病院 血液内科)
- 竹内 賢吾(癌研究所付属病院 病理部)
- 松村 有子(東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム 社会連携研究部門)
- 濱木 珠恵(東京都立墨東病院 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
14,224,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がん治療の均てん化及び、がん臨床研究推進には症例登録を円滑に遂行できる医師・患者・医療機関ネットワークシステム及び患者動態に関する基盤データの構築が不可欠である。従って、患者動態調査及び実地調査を行い、地域の医療需要や医療資源の分布状況を明らかにし、地域の医療関係者等と協議の上、医療機能の分化と連携を推進していく取組みを進めることが重要であり、これを本研究の目的とする。
研究方法
年齢階級別罹患率が既知である白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫の新規発症患者を対象として患者動態調査を遂行した。年齢階級別罹患率から調査地域の罹患者数を推定し、実際の患者調査と比較した。この他に、外来化学療法患者の動態、高齢者急性白血病患者動態の追跡、在宅医療、医療施設間情報伝達手段に関する調査を施行した。
結果と考察
福島県、茨城県、東京都、島根県、徳島県の推定罹患者数はそれぞれ、549、717、2720、223、230人であった。人口10万人当たり推定罹患者数はそれぞれ、26.4、24.1、22.2、30.2、28.6であった。これらのデータを人口密度、65歳以上高齢人口割合、交通地理的特徴と比較した。単位人口当たり推定罹患者数は人口構成を反映し、65歳以上高齢人口割合の高い地域で多い。これらの地域の多くは法令で過疎地域に指定され、中山間地域に位置し、交通アクセスの整備が遅れている。在宅医療支援診療所を受診する患者動態調査では、診療所・患者居住地間距離の中央値は5.5kmであった。これらのがん患者のうち、62%はがん拠点病院での診療をうけていた。またこのがん拠点病院で診断や診察をうけた患者のうち80%の患者はがん拠点病院からの紹介で在宅医療に移行していた。また、高齢者急性白血病患者動態の追跡調査では、37例中生存している症例は5例のみであった。在宅医療への移行症例はなかったが、内2例が転院した。医療施設間情報伝達手段に関して中核医療機関間の広報資料、病理診断連携について調査し、各々の問題点について考察した。
結論
造血器悪性疾患の推定罹患者数は地域の人口構成や交通地理的特徴と関係している。在宅医療を受けるがん患者の62%はがん拠点病院を受診し、約半数はがん拠点病院での入院や通院直後から直接、在宅医療を開始している。中核医療機関間の情報伝達の円滑化が課題である。
公開日・更新日
公開日
2009-04-16
更新日
-