特異的細胞性免疫の活性化による新規がん治療の開発研究

文献情報

文献番号
200823040A
報告書区分
総括
研究課題名
特異的細胞性免疫の活性化による新規がん治療の開発研究
課題番号
H19-3次がん・一般-026
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
葛島 清隆(愛知県がんセンター研究所 腫瘍免疫学部)
研究分担者(所属機関)
  • 赤塚 美樹(愛知県がんセンター研究所・腫瘍免疫学部 兼 中央病院・血液細胞療法部)
  • 森島 泰雄(愛知県がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
17,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん細胞特異的細胞傷害性T細胞(CTL)はがん細胞を選択的に傷害する。CTLを効率よく活性化するには、CTLが認識するエピトープペプチドのアミノ酸配列を正確に同定することが必要条件となる。同定したぺプチドは、免疫モニタリング用試薬およびがんワクチンとして治療や予防に使用できる。本年度は1)人工抗原提示細胞(aAPC)を使った新規腫瘍抗原の同定、 2)マイナー組織適合抗原特異的CTLの解析と臨床応用、に関して以下の研究を実施した。
研究方法
1)HLAを表面に発現していないK562細胞(慢性骨髄性白血病細胞)に、HLA-A24、CD86、4-1BBLを導入してaAPCを作製した。HLA-A24陽性CD8+T細胞をaAPCで刺激してT細胞株を樹立した。限界希釈法で樹立したCTLクローンの認識抗原同定は、K562細胞のmRNAから作製したcDNAライブラリーを用いて発現クローニング法で行った。2)マイナー抗原タイピングを行い、ワクチンの対象症例をリクルートした。GMPグレードで準備したペプチド30μgをMontanide ISA51VGとともに接種した。同種移植後に末梢性T細胞リンパ腫を再発した1例には治療ワクチンとして、ハイリスクの急性Tリンパ球性白血病の移植後症例には、再発予防目的でワクチンを接種した。使用したマイナー抗原はそれぞれACC-1C、HA-1Hであった。
結果と考察
1)4個のCTLクローンがそれぞれ認識する4個の抗原を同定した。同定した遺伝子は、①赤芽球系細胞に発現する遺伝子2個、②SEREX法で過去に同定された腫瘍抗原、③ユビキタスな発現をする遺伝子(のスプライスバリアント)であった。2)2例においてワクチン局所の発赤以外、GVHDも含め有害事象は認めなかった。ワクチン特異的免疫誘導能の検討では、2例とも前後で有意な変動は認められなかった。末梢性T細胞リンパ腫症例は3回投与したところで腫瘍が進行したため投与を中止した。予防的に投与した症例では現在までに再発を認めていない。
結論
1)本aAPCシステムが、使用したがん細胞株に発現する新規腫瘍抗原を同定するのに有効なツールとなることが示された。同様のシステムを用いて肺がんおよび膵がん対する免疫療法に有用なCTL標的抗原を同定していく。
2)免疫療法の対象となるマイナー抗原の蓄積をはかるとともに、臨床試験を通じてその安全性・有用性を検証していく。

公開日・更新日

公開日
2009-03-25
更新日
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