新戦略に基づく抗がん剤の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200823039A
報告書区分
総括
研究課題名
新戦略に基づく抗がん剤の開発に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-025
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
松村 保広(国立がんセンター東病院 臨床開発センターがん治療開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 片岡 一則(東京大学大学院工学系研究科)
  • 丸山 一雄(帝京大学薬学部)
  • 土原 一哉(国立がんセンター東病院 臨床開発センター がん治療開発部)
  • 百瀬 功(財団法人微生物化学研究会 微生物化学研究センター沼津創薬医科学研究所)
  • 上野 隆(順天堂大学医学部生化学第一講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
52,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DDS製剤の薬効、併用効果につき臨床試験へ反映するといったDDS製剤のトランスレーショナル研究を行うことが主たる目的である。
研究方法
1)胃がんおよび脳腫瘍の同所移移植モデルを確立し、SN-38内包ミセルNK012の薬効試験を行った。
2)第2世代DDS創生のための抗体作製を行った。
3)DACHPt内包ミセルを新規作製し、腫瘍内分布と抗腫瘍効果につき検討した。
4)バブルリポソームと超音波の併用により抗原を送達した樹状細胞(DC)の免疫による抗腫瘍効果を検討した。
5) グルコース無しの培地におけるゲミシタビンの殺細胞効果、DNAへの取り込み、カスパーゼ活性を検討した。
6) 栄養飢餓選択的細胞毒性物質の探索を行なった。
結果と考察
結果
1)NK012は胃がん、脳腫瘍同所移植モデルで著明な抗腫瘍効果を認めた。また、血液脳腫瘍関門を効率よく通過することが示された。
2)10種類以上の新規抗体を作成した。
3)DACHPt内包ミセルはオキサリプラチンよりも有意に高い制がん活性を有することが確認された。
4)バブルリポソームと超音波の併用によりがん細胞の完全拒絶が確認された。
5)通常培養条件では、カスパーゼ3活性はゲムシタビン添加により上昇していた。無グルコース・低酸素条件下では、カスパーゼ3の活性上昇は認められなかった。
6)Efrapeptin Fを単離した。週に2回静脈内投与することにより、若干の腫瘍増殖抑制効果を認めた。
考察
選択的腫瘍集積性が高く、また、長時間徐放的にミセル内の低分子抗がん剤をリリースし、腫瘍内全体に長時間SN-38の分布を維持するDDS製剤は抗腫瘍メカニズムの理にかなっていると考える。抗体とハイブリッドすることにより、さらなる抗腫瘍効果の増強をはかる。
バブルリポソームと超音波の併用ががん免疫療法における有用な抗原送達システムになることが示唆された。
栄養飢餓選択的細胞毒性を示す化合物を新たに見出した。ミトコンドリアの呼吸鎖を阻害作用を示すことがわかった。このような機能をもつ薬物が抗がん剤となりうるかどうか、見極める必要がある。
結論
現在日本発のDDS製剤が日米欧で臨床開発に突入した。本研究で得られた知見が各臨床治験プロトコールに盛り込まれた。今後は臨床データを真摯に受止め、トランスレーショナルな観点からさらなる研究を展開すべきである。

公開日・更新日

公開日
2009-04-28
更新日
-