癌の新しい診断技術の開発と治療効果予測の研究

文献情報

文献番号
200823036A
報告書区分
総括
研究課題名
癌の新しい診断技術の開発と治療効果予測の研究
課題番号
H19-3次がん・一般-022
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
金子 安比古(埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 康仁(国立がんセンター研究所)
  • 武井 寛幸(埼玉県立がんセンター 病院)
  • 林 慎一(東北大学大学院医学系研究科)
  • 角 純子(埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SNPアレイなど最新の技術を駆使して、臨床検体を分析し、腫瘍の分子機構を解明する。その知見に基づき、総合的診断法と治療効果予測法を開発する。小児癌と白血病では難治例の治療前予後予測法、乳癌では術前化学療法と内分泌療法の効果予知法を開発し、臨床応用を図る
研究方法
ウイルムス腫瘍のSNPアレイ解析により7p21ホモ欠失領域を見出した。そこに位置する8個の遺伝子の変異、発現、メチル化を解析した。乳癌のゲノム異常と、化学療法後摘出した腫瘍の治療により生じた組織学的変化を調べた。パラフィン包埋乳癌切片より抽出したRNAを検体とし、ER(estrogen receptor)標的遺伝子の発現をRT-PCR法により解析した。また、ERE-GFPレポーターカセットをアデノウイルスベクターに組み込み、乳癌細胞に導入して、ER活性を測定した。白血病細胞から7個のNM23結合蛋白質を同定し,分化に伴う発現変化を検討した。またmyeloid系白血病細胞の分化誘導前後に、NM23とEDG2の発現を分析した
結果と考察
ウイルムス腫瘍の7p21に位置する2遺伝子(MEOX2とSOSTDC1)を候補癌抑制遺伝子として同定した。両遺伝子異常は腫瘍の進展に関わると推定される。治療前に17q12(HER2)増加または13q11-q14欠失をもつ乳癌は良好な、8q24増加をもつ腫瘍は不良な化学療法に対する効果を示した。今後、両腫瘍の候補遺伝子の腫瘍化における役割を解明する。乳癌のER蛋白発現はER活性と相関しないが、ER標的遺伝子発現と相関する。ホルモン療法の効果予知には、ER活性とER標的遺伝子発現の解析が必要かもしれない。NM23発現亢進は骨髄性白血病細胞の分化を抑制しており、分化に伴うNM23発現低下はEDG2の発現上昇と相関した。EDG2シグナル伝達系が治療標的になる可能性が示唆された。
結論
ウイルムス腫瘍の7p欠失領域から候補癌抑制遺伝子を同定した。乳癌術前化学療法の効果を予測するゲノム異常3箇所を同定し、候補遺伝子を推定した。乳癌の内分泌療法効果予知の研究を行い、ER活性はER蛋白発現とではなく、ER標的遺伝子mRNA発現と相関することを見出した。Myeloid系白血病細胞の分化とNM23およびEDG2の発現動態を検討し、EDG2シグナル伝達系が治療の標的になると推測した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
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