革新的な診断技術を用いたこれからの肺がん検診手法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200823033A
報告書区分
総括
研究課題名
革新的な診断技術を用いたこれからの肺がん検診手法の確立に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-019
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中山 富雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター 調査部疫学課)
研究分担者(所属機関)
  • 長尾 啓一(国立大学法人 千葉大学総合安全衛生管理機構)
  • 新妻 伸二(新潟労働衛生協会 プラーカ健康増進センター)
  • 吉村 明修(日本医科大学 呼吸器・感染・腫瘍内科)
  • 中川 徹((株)日立製作所 日立健康管理センタ)
  • 西井 研治(岡山県健康づくり財団付属病院)
  • 岡本 直幸(神奈川県立がんセンター 臨床研究所)
  • 佐藤 雅美(宮城県立がんセンター 医療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
18,744,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国では、胸部単純X線と喀痰細胞診を用いた肺がん検診が広く行われてきたが、効果の大きさは他のがん検診に比べれば必ずしも十分ではない。肺末梢発生肺がんを主な標的として、低線量CTを従来の単純X線の代わりに用いた肺がん検診に、受診者集団の肺癌死亡を減少させる効果を示すこと(研究A)と肺門部肺がんの頻度およびそれを標的とした喀痰細胞診を追加する意義を示し(研究B)、医療経済評価(研究C)を踏まえた今後の肺がん検診システムを再構築することを目的とする。
研究方法
CT検診を評価するコホート研究(研究A)では、CT検診群47,158人、通常検診群84,496人を喫煙者と非喫煙者に分けて多変量解析(年齢・地域・喫煙指数・追跡期間を調整)を行った。Self-selection biasを評価するために全死因死亡についても同様の解析を行った。喀痰細胞診を評価する研究(研究B)では、標的疾患である肺門部扁平上皮癌の罹患状況を把握するため、呼吸器内視鏡学会認定施設において肺門部早期扁平上皮癌の全国調査を実施した。
結果と考察
(研究A)非喫煙者では、少なくとも一度のCT検診受診により通常検診に比べて約66%の肺がん死亡リスクの低下が示唆された。喫煙者では約13%の肺がん死亡リスクの低下が観察されたが、これは全死因死亡の低下と同じ大きさで、self-selection biasの影響で説明可能であった。喫煙者では2回以上連続受診者に限ると約25%の肺がん死亡リスクの低下が観察され、この場合は全死因死亡リスクの低下は認めなかった。(研究B)全国534施設を対象に、平成18,19年度の肺門部早期扁平上皮がん数・進行肺門部扁平上皮がん数・喀痰細胞診発見頭頸部がん数等の新規発生患者数の調査を行った。2月末日を締め切りとし現時点で約35%の回収状況にあり、未回収施設への督促を行っている。
結論
平均追跡期間5.5年という範囲での解析において、CT検診の少なくとも一度の受診により非喫煙者では肺がん死亡リスクの減少が観察されたが、喫煙者では2年連続受診者に限定した場合にのみ、小さな肺がん死亡リスクの減少が観察されるにとどまった。進行速度の速いがんの割合が多い喫煙者に関してはCT検診の効果は限定的であることが示唆された。
喀痰細胞診の標的である肺門部扁平上皮がんの年間患者数については、本調査により推定が可能であり、喀痰細胞診の普及が適切であるかに重要な資料となる。

公開日・更新日

公開日
2009-03-25
更新日
-