消化器がん個別化医療におけるファンクショナルゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクスの臨床応用と治療体制の確立

文献情報

文献番号
200823032A
報告書区分
総括
研究課題名
消化器がん個別化医療におけるファンクショナルゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクスの臨床応用と治療体制の確立
課題番号
H19-3次がん・一般-018
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
門田 守人(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
  • 関本貢嗣(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科)
  • 土岐祐一郎(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科)
  • 竹政伊知朗(大阪大学大学院医学系研究科・消化器外科)
  • 松原謙一(株式会社DNAチップ研究所)
  • 西村紀(大阪大学蛋白質研究所)
  • 山崎泰代(Phenomenome Discoveries Inc)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模な消化器癌症例を対象に、癌組織の遺伝子・タンパク発現プロファイルによる癌の転移・再発の予測診断系の構築と、癌患者末梢血のメタボローム解析によるバイオマーカーを探索し、prospectiveな検証によって分子個別診断のevidenceを示すとともに、その成果を臨床応用化することを目的とする。
研究方法
症例集積コンソ−シアムにより、登録された約4500例の消化器癌を対象に、DNAチップ、NBS(2-nitrobenzenesulfenyl)法を用いてそれぞれ遺伝子、タンパク発現プロファイルを取得し、癌の転移・再発に関わる予測診断系を構築した。また癌患者の末梢血からフーリエ変換質量分析計を用いたメタボロミクス技術を用いてメタボライトバイオマーカを探索した。
(倫理面への配慮)本研究ではゲノムは扱わないが、3省合同の「ゲノムに関する指針」に準じた情報管理を行い、大阪大学の倫理規定に従って、患者の同意が得られたサンプルを使用した。
結果と考察
大腸癌490例、肝臓癌150例、胃癌230例の遺伝子発現プロファイルとnetwork pathway解析により根治術後の異時性転移予測が約80%可能な遺伝子をそれぞれ抽出し予測診断システムを構築した。このうち大腸癌では予後不良群を同定可能(DFS: p=0.008)な臨床診断型チップの開発に成功し、前向きな臨床試験の準備をすすめている。また大腸癌24例、肝臓癌12例のタンパク発現プロファイルにより、それぞれ37、27種類の新規未報告癌関連蛋白を同定した。さらに120例の大腸癌患者末梢血から特異的な6種のメタボライトを同定し、85%の正診率で大腸癌の存在診断が可能となった。膵癌50例、胃癌40例に対する特異的メタボライトをそれぞれ29、16種同定し、その診断能を検証している。今後は遺伝子とタンパクの相互関係をネットワーク解析することでより正確な予測診断系が期待される。また血清レベルでもメタボライトマーカーによる早期結腸直腸癌リスクを評価する可能性が示され、OMICS技術の臨床応用が期待される。
結論
本研究では、癌の遺伝子・タンパクの両者から得られた基礎的研究の成果と、癌患者の末梢血のメタボローム解析によって得られた特異的メタボライト発現パターンの結果を、臨床研究デザインに合わせprospectiveに解析することで、トランスレーショナルリサーチとして十分なevidenceが得られることが期待され、臨床応用化の基盤が整えられてきた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-15
更新日
-