ウイルスを標的とする発がん予防の研究

文献情報

文献番号
200823028A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルスを標的とする発がん予防の研究
課題番号
H19-3次がん・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
神田 忠仁(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 川名  敬(東京大学医学部附属病院・産婦人科)
  • 酒井 博幸(京都大学ウイルス研究所・がんウイルス部門・がん遺伝子研究分野)
  • 鈴木 哲朗(国立感染症研究所ウイルス2部)
  • 林  紀夫(大阪大学大学院 医学系研究科・ 分子治療学 )
  • 松浦 善治(大阪大学微生物病研究所・感染機構研究部門・分子ウイルス分野)
  • 加藤 宣之(岡山大学大学院 医歯学総合研究科・腫瘍ウイルス学 )
  • 内田 茂治(東京都西赤十字 血液センター・ 技術部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
59,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんの、C型肝炎ウイルス(HCV)は肝臓がんの原因となる。そこで、15種の高リスクHPV群に対するワクチンの開発と、潜伏感染しているHPVを排除する方法を探る。HCV増殖の素過程を調べ、介入する方法を探る。HCV慢性肝炎患者体内からHCVが排除されない機構を、体内HCV準種の性質と患者の免疫応答の両面から詳細に調べ、新たな免疫治療方法の開発に役立てる。輸血によるウイルス伝播の動向を探る。
研究方法
 HPV交差性中和エピトープをHPV16型L1蛋白質に挿入したキメラ蛋白質で形成されるウイルス様粒子(VLP)の抗原性を詳細に調べた。HPVによる子宮頸部上皮高度異形成(CIN3)自然治癒患者血清中の抗HPVCTL、ならびに子宮頸管部リンパ球の由来を調べた。HPV潜伏感染及び表皮形成分化と連動するHPV増殖モデル系を調製した。インターフェロン(IFN)治療で治癒しないHCV慢性肝炎患者体内のHCV準種を調べた。HCV複製におけるコア蛋白質の成熟と粒子形成過程を調べた。日赤での初回献血者の抗体を調査した。
結果と考察
キメラVLPをウサギに免疫して得た抗血清は、調べた全ての高リスクHPV(16、18、31、33、35、51、52、58型)を中和した。CIN3自然治癒におけるCTLの重要性と子宮頸管部のリンパ球は腸管由来であることがわかった。菌体表面にHPVE7蛋白質を発現する乳酸菌死菌(lac-E7)を経口投与し、CTLを誘導してCIN3を治療する臨床試験が東大倫理委員会で承認されたので、実施する。IFN治療前後で、体内HCV準種が変わることがわかった。少量存在する準種がIFN抵抗性を担っている可能性がある。HCV粒子形成には、HCVコア蛋白質のシグナルペプチドペプチダーゼによる切断と、その後のNS5A蛋白質C末端側との結合が不可欠で、この過程は抗HCV剤の標的となる。平成7から19年にかけて、福岡ではHTLV-I陽性率が低下したが、栃木と東京では若年層における陽性率の低下が全く認められなかった。
結論
交差性中和エピトープを持つキメラ粒子は型共通次世代HPVワクチン候補である。lac-E7経口投与によるCIN3治療の効果が期待できる。HCV慢性肝炎患者体内HCV準種の解析は、IFN治療耐性機構の解明に新たな情報を提供する。

公開日・更新日

公開日
2009-03-19
更新日
-