システム生物学的方法論による癌のバイオマーカー及び分子標的の探索

文献情報

文献番号
200823026A
報告書区分
総括
研究課題名
システム生物学的方法論による癌のバイオマーカー及び分子標的の探索
課題番号
H19-3次がん・一般-012
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 典子(東京大学 医科学研究所 システム生命医科学技術開発共同研究ユニット)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 隆志(国立がんセンター研究所 生物学部)
  • 黒田 雅彦(東京医科大学 病理学部)
  • 宮野 悟(東京大 学医科学研究所 DNA情報解析分野)
  • 平野 隆(東京医科大学 呼吸器外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、生命現象をシステムとして理解することを目指す「システム生物学」的方法論を駆使して、癌という疾病を統合的に理解することを目指す。本研究ではまず、HERファミリー分子の異常が関わる癌を統合的に理解する研究を進める。また、早期癌の予後を予測する診断法の確立をめざす。さらに、乳癌幹細胞を取り出して、解析を行う。加えて、ncRNA及び蛋白質レベルの解析も組み合わせて、癌の超早期診断、予後予測、分子標的薬の効果予測に有用な新規バイオマーカー、抗がん剤耐性の分子機構、さらに革新的分子標的の同定をめざす。

研究方法
1. HERファミリー分子の異常が関わる癌を統合的に理解する研究
A)初代肺上皮由来細胞hSAECをEGF及びイレッサで処理し、マイクロアレイを用いた精密時系列データの測定を行い、バイオインフォマティクスによって解析する。
B)肺腺がん手術摘出標本からの核酸調整及び診療情報の収集
2. 癌幹細胞による癌化パスウエイの解析
 ヒト乳癌細胞株より、CD44+CD24-/low分画の細胞を取り出し、NOD-SCIDマウスを用いてシステム生物学的解析のためのモデル系の構築を行う。
3. 機能性RNA(ncRNA)の解析
脂肪細胞に分化誘導可能な3T3-L1細胞を用いマイクロアレイ法を用いて、mRNAの発現とmiRNAの発現の相関を解析する。
4. システム生物学のためのバイオインフォマティクスの開発
癌関連パスウェイの数理モデル化とシミュレーションによるシステム解析をCell Illustratorを用いて行う。

結果と考察
1. 非小細胞肺癌ステージIの予後を精度よく予測する、画期的グネチャーを得ることに成功した。(特願2008-311481)。
2. 乳癌幹細胞を特徴づける癌バイオマーカー並びに分子標的として150分子を得た(特願2009-023933)。
3. PPARgammaの標的となるmiRNAを単離した。
4. EGF刺激とGefinitib刺激を組み合わせたSAECの細胞に対する,文献に基づくゴールドスタンダードモデルをほぼ完成した。
結論
正常肺腺細胞のHERシグナルゴールドスタンダードモデルの構築を行った結果、早期肺癌の画期的予後予測シグネチャーを得ることができた。このことは、我々の手法が有用であることが実証された上に、世界的にもまだ誰も着手していない手法であることから、まだまだ多くのバイオマーカー並びに分子標的を同定できることが期待される。システム生物学が、新規分野として展開し、近未来の医療へと還元されていくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-05-22
更新日
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