乱用薬物の有害性及び依存メカニズムに関する研究

文献情報

文献番号
199700479A
報告書区分
総括
研究課題名
乱用薬物の有害性及び依存メカニズムに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 建彦(東北大学大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 三木直正(大阪大学医学部)
  • 小林雅文(日本大学歯学部)
  • 関田清司(国立衛生試験所)
  • 鍋島俊隆(名古屋大学医学部)
  • 栗山欣也(京都府立医科大学)
  • 鈴木勉(星薬科大学)
  • 柳田知司(実中研)
  • 笹征史(広島大学医学部)
  • 石郷岡純(北里大学医学部)
  • 山本経之(九州大学薬学部)
  • 渡辺建彦(東北大学医学部)
  • 伊豫雅臣(浜松医科大学)
  • 西川徹(国立精神・神経センター)
  • 佐藤光源(東北大学医学部)
  • 福居顕二(京都府立医科大学)
  • 水柿道直(東北大学医学部)
  • 井戸達雄(東北大学サイクロトロン)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 麻薬等対策総合研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
27,288,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本で乱用されている主な依存性薬物を中心に薬物依存の発生メカニズムを解明し、薬物依存の結果生じる脳性障害(おもに精神毒性)の病態を明らかにする。
研究方法
薬物依存および精神毒性の発現メカニズムに関する神経薬理学的研究では、主に生化学、神経薬理学、行動薬理学、薬物依存における脳性障害の検出・診断法に関する研究では主に神経化学、分子生物学、核医学の手法を用いた。
結果と考察
(1)モルヒネによる依存形成には脳内一本鎖CRE結合蛋白が関与している。(2)各種オピオイドレセプターアゴニストのラット側坐核内投与によるドパミン(DA)遊離には、μ-レセプターが深く関わっている。(3)5-HT3受容体拮抗薬によるヒトのコカイン依存症に対する強化効果の減弱を目的とした薬物療法の可能性は低い。(4)Phencyclidine(PCP)誘発place aversion(PA)およびplace preference(PP)に一酸化窒素NOが重要な役割を果たしている。(5)アルコール依存形成にはベンゾジアゼビン受容体を介したdiazepam binding inhibitorの発現が重要な役割を果たしている。(6)オピオイド、コカイン及びメタンフェタミン(MAP)と抗ヒスタミン薬の併用には十分な注意が必要である。(7)PCP誘発PAの発現にはセロトニン(5-HT)作動性神経系が、またPCP誘発 PP の発現にはDA神経系が関与している。(8)MAP使用中断後に精神分裂病様症状を呈するのは側坐核等DAの投射を受けるニューロンの感受性の増大による。(9)MAP精神病、精神分裂病の再燃の防止には、5-HT2a遮断薬が有効である。(10)△6-THCのprepulse inhibition作用は耐性が形成され、CB1受容体を介する点で、MAPやcocaineとは異なる。(11)ラット大脳新皮質から、発達依存的にMAPへの応答を獲得する3種の新規遺伝子転写産物はMAPによって行動感作が形成され始める発達時期以降に誘導され、コカインにも応答する。(12)MAP、コカインは、脳内ヒスタミン(HA)取り込み機構に影響を与えない。(13)MAPによる逆耐性現象形成後7日目にはH1, H2受容体がともに有意に増加した。(14)覚醒剤精神病または依存の生物学的基盤としてDAトランスポーターの低下が関与する。(15)MAP逆耐性形成脆弱性と線条体グルココルチコイド受容体mRNAは相反する。(16)脳内各部位/小脳比等、解析法により逆耐性形成に伴う脳内変化をPETにより描出できる(17)MAP逆耐性前に比べ逆耐性後では脳内糖代謝が約50%ほど代謝が落ちた。(18)慢性有機溶剤吸引者と分裂病患者の間には共通して前頭葉機能の障害を示唆する特徴が認められた。
結論
モルヒネ依存形成に関与するタンパクおよび薬物依存による神経可塑性の変化に関与する遺伝子が検出された。臨床的には、薬物依存により脳内糖代謝の低下、前頭葉機能障害が示唆された。MAP逆耐性にはDAおよび5-HT神経系に加えてHA神経系の関与が注目される。

公開日・更新日

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更新日
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研究報告書(紙媒体)