がん病理・病態学的特性の分子基盤の解析とそれに基づく診断・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200823022A
報告書区分
総括
研究課題名
がん病理・病態学的特性の分子基盤の解析とそれに基づく診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
落合 淳志(国立がんセンター東病院臨床開発センター 臨床腫瘍病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 保典(慶應義塾大学医学部 病理学教室)
  • 坂元 亨宇(慶應義塾大学医学部 病理学教室)
  • 加藤 光保(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
  • 中西 幸浩(国立がんセンター研究所 病理部)
  • 平尾 敦(金沢大学がん研究所 )
  • 神奈木 玲児(愛知県がんセンター研究所 分子病態学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
58,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんに特異的な病理・病態はがんの悪性度と強い相関を示し、これら病理・病態学的変化はがんの生物像を規定する分子基盤にかかわっていることが強く推察される。本研究班では、これらのがん生物像に関わる特徴的な病理・病態の分子基盤と、その分子機構が有する性粒学的意義を検討し、がん細胞とがん微小環境の相互作用として検討するものである。
研究方法
1)ヒトがん組織特徴的病理・病態を示す動物モデルの作製として、ヒト成人骨を移植したNOD-SCIDマウスを用いてヒト骨における微小環境を模倣するモデルを作製した。2)同モデルを用いてヒト前立腺がん細胞は骨内における生存および増殖には骨由来IGF2を利用していることを検討した。3)ヒト膵がんの特徴的神経浸潤を模倣するモデルをマウス坐骨神経へのヒト膵がん細胞株移植を行い、形態学的にヒト膵がんの神経浸潤のモデルを作製した。4)扁平上皮のがん性幹細胞の新しいマーカーの検索とがん性幹細胞の生物学的意義を検討した。5)ヒト肺がん切除材料を用いて、間質線維芽細胞に発現するポドプラニン分子に注目し、臨床病理学的検索を行った。
結果と考察
前立腺がん骨転移、膵臓がん神経浸潤の病理病態学的特徴に対応する動物モデルを作製した。これらモデルを用いて、前立腺がん骨転移には骨由来のIGF2が前立腺がんの生着に重要な役割を果たしていることを示した。膵臓がん神経浸潤モデルを作製し、膵臓がんの高頻度の神経浸潤にはラミニン5やIL6が重要な役割を果たしていることを初めて示した。がん幹細胞/Tumor initiating cellの存在ニッチを明らかにするため、形態学的に腫瘍周辺部にがん幹細胞が存在すると考えられる分化型扁平上皮がんのがん幹細胞マーカー(ポドプラニン)を同定した。このマーカーにより、扁平上皮がんがん幹細胞を採取しその性質を確認した。また、抗がん剤投与によりがん細胞の阻害は抑制され、動物移植により腫瘍形成能が極めて高いことが示された。肺がん切除症例を用いて、がん間質細胞にもポドプラニン陽性間質線維芽細胞が存在し、ポドプラニン陽性線維芽細胞のがん細胞周囲への出現は、がん患者の予後と強い相関があることが示された。
結論
今年度の成果により、新しいがん進展に関わる分子基盤の研究が進み、今後これらモデルを用いた研究の発展により、新しい治療薬の開発が可能になると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-23
更新日
-