ゲノム情報に基づいた個体発生と発がん・進展に関連する新規遺伝子の同定およびその機能的意義の解明と臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200823020A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報に基づいた個体発生と発がん・進展に関連する新規遺伝子の同定およびその機能的意義の解明と臨床応用に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中川原 章(千葉県がんセンター 研究局)
研究分担者(所属機関)
  • 上條 岳彦(千葉県がんセンター 発がん制御研究部)
  • 尾崎 俊文(千葉県がんセンター がん治療耐性克服研究室)
  • 竹永 啓三(島根大学医学部 生命科学講座)
  • 古関 明彦(理化学研究所 免疫器官形成研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
26,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性がんの克服を目的として、個々のがんが由来する正常組織の発生生物学的特性に注目し、治療に対する反応性の違いに多大な影響を及ぼすと思われる個体発生過程において機能する重要な遺伝子を、ゲノム情報に基づいて網羅的に同定し、それらを分子標的とした治療法開発を目指すことを本プロジェクトの要とした。
研究方法
網羅的ゲノム異常解析は、2464 BACクローンを搭載したアレイCGH用チップまたはAffimetrix社のSNPsアレイ、およびアジレント社の44Kチップを使用した。また、in-house cDNA microarrayは、神経芽腫組織に由来する複数のcDNAライブラリーから抽出した5300個のcDNAを固定したものを用い、Cy3, Cy5を蛍光マーカーとして使用した。また、分子生物学的解析には、ノザンブロット、ウエスタンブロット、免疫沈降法、ChIPアッセイ、などを用い、細胞内への遺伝子導入はトランスフェクション法を用いた。
結果と考察
1)神経芽腫の網羅的ゲノム異常解析から、新規原因遺伝子としてALKチロシンキナーゼ遺伝子を同定した。神経芽腫346例の解析結果、5.2%に点突然変異または増幅を認めた。また、予後不良な染色体部分的増加・欠失群と予後良好なはずのトリソミー群の両者に変異のクラスターが見られ、発がん早期の異常と思われた。2)染色体1p36.2にマップされるがん抑制遺伝子として同定したKIF1Bβの新規結合蛋白質3個を同定した。3)がん幹細胞性の維持に重要なBmi1ポリコーム複合体構成分子が、p14ARFとp16INK4a以外の抑制遺伝子経路を標的にしていることが示唆された。4)肺がんおよび大腸がんにおいて、原発巣に比べ転移巣のミトコンドリアND1とND6遺伝子中のミスセンス変異が2?4倍高いことを見出した。
結論
神経芽腫におけるALK遺伝子の点突然変異および増幅は、新しい予後不良因子および治療薬開発の標的となり臨床応用が期待される。肺がんおよび大腸がんにおける転移巣ミトコンドリアのND1、ND6遺伝子中のミスセンス変異の増加は、 転移の予防法開発に有意な情報となった。KIF1Bβ, RUNX3, NLRR, UNC5D等神経芽腫の重要ながん関連遺伝子は、予後因子としてのみならず、新しい創薬標的分子としても期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
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