ヒト多段階発がん過程におけるエピジェネティックな異常の網羅的解明と臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200823016A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト多段階発がん過程におけるエピジェネティックな異常の網羅的解明と臨床応用に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
牛島 俊和(国立がんセンター研究所 発がん研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 金井 弥栄(国立がんセンター研究所 病理部)
  • 豊田 実(札幌医科大学 医学部生化学講座)
  • 伊東 文生(聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科)
  • 松林 宏行(静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科)
  • 山田 泰広(岐阜大学大学院 医学系研究科腫瘍制御学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
65,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DNAメチル化異常はヒト発がんに深く関与する。本研究では、DNA異常高メチル化の誘発機構やグローバルな低メチル化の発がんにおける役割を明らかにする。また、ゲノム網羅的なDNAメチル化変化の解析により、がん抑制遺伝子のサイレンシングや診断マーカーとして役立つDNAメチル化変化を同定することを目的とする。
研究方法
ゲノム網羅的なDNAメチル化解析は、脱メチル化剤処理発現マイクロアレイ法、BAC array-methylated CpG island amplification法、methylated DNA immunoprecipitation-CpGアイランドマイクロアレイ法のいずれか適切な方法を用いた。DNAメチル化レベルは、定量的MSP法、pyrosequencing法、BACアレイ蛍光強度比の定量等により、測定した。
結果と考察
ゲノム網羅的にがんでDNAメチル化されるCpGアイランドをスクリーニングし、メチル化高感受性の遺伝子は正常細胞で転写が低いことを示した。マウスモデルでグローバルな低メチル化は、舌発がんを抑制することを示した。ヒト胃がんでmiR-124a及びmiR-34b/c、大腸がんでmiR-34b/cのサイレンシングを見出した。IGFBP7がCpGアイランドメチル化形質陽性の大腸がんではメチル化され、p53シグナルが遮断されることを示した。肝細胞がんの発がんリスク及び再発リスクの診断に活用可能なBACクローンを同定した。胃がんの存在診断のために、MINT25が優れた感度と特異性を示すことを明らかにした。RASD1のメチル化により、骨髄腫のデキサメサゾン感受性が低下することを示した。
結論
発がん因子曝露は遺伝子の発現抑制を通じて、特有のメチル化異常プロファイルを生成することが示唆された。非がん組織に蓄積したDNAメチル化異常は、胃がんのみならず、肝がんでも発がんリスクマーカーとして有望である。がんでの各種遺伝子のDNAメチル化異常は、がんの検出及び病態把握に有用である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-