標準的検診法と精度管理や医療経済的効果に関する研究

文献情報

文献番号
200823003A
報告書区分
総括
研究課題名
標準的検診法と精度管理や医療経済的効果に関する研究
課題番号
H18-3次がん・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博(国立がんセンターがん予防・検診研究センター 検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐川 元保(金沢医科大学)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学医学部)
  • 渋谷 大助(宮城県対がん協会がん検診センター)
  • 西田 博(松下健康管理センター)
  • 小坂 健(東北大学大学院歯学研究科)
  • 松田 一夫((財)福井県健康管理協会)
  • 濱島 ちさと(国立がんセンターがん予防・検診研究センター 検診研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
57,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
死亡率減少を実現するためのがん検診精度管理体制構築のために品質保証/管理(Quality assurance:QA)手法により、Step1)精度管理の目標・標準の設定、Step2)目標到達に必要な質と達成度のモニタリング、Step3)精度管理水準の改善、の3段階についてそれぞれの検討課題を設定し検討した。
研究方法
Step1)昨年がん検診実施体制指標として完成した5がんのチェックリスト(以下CL)のうち、胃がんと大腸がんのCLについて、適切性をコンセンサスパネルにより評価した。また、このCLを用いた市町村別がん検診事業評価の可能性を検討するため、市町村版CLにより全市町村の検診実施体制を調査した。
Step2)昨年完成したデータ入力システムの実行可能性を、福岡県全体(市町村および検診機関)の検診データ入力により検討した。また、全国市町村の対象者数/受診率を昨年設定した標準化算定法により算出した。
Step3)がん検診提供者への精度管理評価還元のために、まずその評価方法を検討した。
結果と考察
Step1)リストの殆どの項目の適切性が認められ、一部の項目については改善案(代替案)が提示された。また、全国市町村の検診実施体制の実態が初めて明らかにされた。ただ、回答基準が回答者によって異なるため、その基準の標準化の必要性が明らかとなった。そこでCL全項目への回答基準を作成した。さらに、市町村のCLのスコアとプロセス指標との関連分析において、「対象者への均等な受診勧奨」や「個人別受診台帳作成」、「過去3年間の受診歴の記録」の項目と受診率、「精検未受診者への精検受診勧奨」の項目と精検受診率とに有意な相関が示された。従って現状のCLによる評価が可能であることが示された。
Step2)福岡県内のデータ回収が支障なく完了し、このシステムでの集計の実行可能性が示された。今後回収データを同年度の老人保健事業報告と精度を比較して有用性を検討する。また、標準算定方法による市町村の受診率は、今後従来の健康増進事業報告と比較し、妥当性を評価する。
Step3)プロセス指標による地域毎の管理水準の評価方法を決定した。今後CLの評価方法も検討し、それら評価結果の情報還元の有効性を検証していく必要がある。
結論
QAの各段階の成果物の妥当性評価、標準化が行なわれ、これら成果による今後の精度管理体制構築が期待出来る。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200823003B
報告書区分
総合
研究課題名
標準的検診法と精度管理や医療経済的効果に関する研究
課題番号
H18-3次がん・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博(国立がんセンターがん予防・検診研究センター 検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐川 元保(金沢医科大学)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学医学部)
  • 渋谷 大助(宮城県対がん協会がん検診センター)
  • 西田 博(松下健康管理センター)
  • 小坂 健(東北大学大学院歯学研究科)
  • 松田 一夫((財)福井県健康管理協会)
  • 濱島 ちさと(国立がんセンターがん予防・検診研究センター 検診研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
死亡率減少を実現するためのがん検診精度管理体制構築のために品質保証/管理(Quality assurance: QA)の手法によりStep1)精度管理の目標・標準の設定、Step2)目標到達に必要な質と達成度のモニタリング、Step3)精度管理水準の改善、の3段階についてそれぞれの検討課題を設定し検討した。
研究方法
Step1)がん検診の、検診技術・体制に関する精度管理指標として作成したチェックリスト(CL)の適切性を、コンセンサスパネルにより評価した。さらにこのCLにより全国の検診実施体制を調査した。もう一方の指標であるプロセス指標(精検受診率、がん発見率等)については数値目標設定方法を検討した。
Step2) がん検診データを標準的に報告する為の入力システムを開発し、その実行可能性を検討した。また、データ集計時期のデータ精度への影響、精検関連指標の再定義の必要性、新たな事業報告様式について検討した。
Step3)優良な検診機関の選定の為、選定基準とすべき最低限の精度管理項目群を検討し、がん検診現場で必要な精度管理ツールを検討した。
結果と考察
Step1)5がんのCLを作成し、まず胃・大腸がんCLの適切性が認められた。また全国の検診実施体制をCLにより初めて把握した。さらに、CLへの回答基準を標準化する必要性が明らかになり、その基準を作成した。プロセス指標については、都道府県の精度管理指標の分布から、5がん別の数値目標(許容値・目標値)を設定した。以上により精度管理の標準が初めて具体的に設定された。
Step2)検診機関や県による検診データの入力により、入力システムの実行可能性が示された。また5月と12月に集計した検診データの比較から、集計期限の延長によりプロセス指標の精度が改善することが示された。さらに精検受診/未受診/未把握を再定義し、従来の事業報告様式に新たな項目を追加した。以上を集計に適用することで検診データ精度の向上が図れる。
Step3)検診機関選定時の仕様書に明記させる最低限の精度管理項目群を決定した。また、有効性に基づいた受診者への説明文書、精検結果把握・調査・照会に必要な様式等7種のツールを全がん検診について作成した。受診者への情報提供、精検結果の把握が促進される。
結論
全国のがん検診の標準化とその質の向上に必要なQA体制構築上の為の成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200823003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
死亡率減少が実現できるがん検診精度管理体制構築の為下記成果が得られた。がん検診目標達成度の標準としてプロセス指標の許容値・目標値設定、又実施体制はチェックリスト(CL)の作成により、精度管理標準が初めて設定された。優良な検診機関選定の基準となる必須項目群を決定した。データ集計の標準化の為、web 上での集計・分析が可能なデータ入力システムを確立した。集計方式を受診者数(翌年5月期限)と精検結果 (翌々年5月期限)の2段階に改訂し、大幅な精度向上が可能になった。受診率の標準的計算法を決定した。
臨床的観点からの成果
実効性のある精度管理体制の構築により、がん検診の質の向上と均てん化が図れ、早期発見の効果が増強される。すなわちがん検診の精度向上によりそれ以前に比べ、より多くの救命可能ながんが効率よく拾い上げられ、その後の精検による診断及び治療の効果が最大化されると期待できる。
ガイドライン等の開発
H18年から検討してきたがん検診事業評価のためのチェックリスト(CL:がん検診実施体制に関わる精
度管理指標)を、5がんについて纏めた。(H20年3月24日、厚労省がん検診事業評価委員会の基礎
資料として提出)上記のCLについて、適切性評価や回答基準の標準化を行なった。優良な検診機関
の選定基準を検討し、「仕様書に明記すべき最低限の精度管理項目」として纏めた(上記委員会の
基礎資料として提出した)。これまで市町村により未統一だった受診率の算定法を標準化した。(上記委員会の基礎資料として提出)
その他行政的観点からの成果
検診実施体制評価指標としてのCLの完成によりがん対策推進基本計画における個別目標の達成度の
評価が可能となった。今後CLを活用し、全国市町村のがん検診実施体制を把握/評価できる。地域保
健・健康増進事業報告の集計精度向上の為に、集計時期の延長、集計項目の追加、一部の項目の再定義について検討し、H20年度以降の健康増進事業報告様式に反映され、報告の精度向上が見込める。チェックリスト及び新たな事業報告様式は、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針に反映された。
その他のインパクト
標準化算定法による全国の受診率を、国立がんセンターがん対策情報センターHPにて公開した。市町村の検診精度管理を支援する為のツール(精検結果通知/把握様式、受診勧奨文書や受診者への説明文書)を作成し、同センター検診研究部HPにて公開した。検診精度管理についての啓発活動として、都道府県/市町村に対する講演を実施した。また、集計精度向上の為に開発した入力システムは、既に2県で利用されている。プロセス指標の数値目標やチェックリスト実施状況による市町村毎の評価手法を、今後開発予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
37件
その他論文(和文)
69件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
78件
学会発表(国際学会等)
38件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
6件
事業評価CL、地域保健・健康増進事業報告様式の改訂、同事業報告の改定、同事業報告の再定義、市町村のがん検診の受診率の算出、仕様書に明記すべき精度管理項目の作成
その他成果(普及・啓発活動)
75件
学会講演、研修会、講義、都道府県セミナー他

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shoda H, Hamashima T, and Saito H.
Evaluation of F-2-deoxy-2-fluoro-glucose positron emission tomography for gastric cancer screening in asymptomatic individuals undergoing endoscopy
Br J Cancer , 97 , 1493-1498  (2007)
原著論文2
Maeda T, Hamashima C, et al
Unsuspected bone and soft tissue lesions identified at cancer screening using positron emission tomography
Jpn J Clin Oncol , 37 (3) , 7-215  (2007)
原著論文3
Hamashima C, Saito H, Sobue T
Awareness of and adherence to cancer screening guidelines among health professionals in Japan
Cancer Science , 98 (8) , 1241-1247  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-