全新生児を対象とした先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染スクリーニング体制の構築に向けたパイロット調査と感染児臨床像の解析エビデンスに基づく治療指針の基盤策定

文献情報

文献番号
200822021A
報告書区分
総括
研究課題名
全新生児を対象とした先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染スクリーニング体制の構築に向けたパイロット調査と感染児臨床像の解析エビデンスに基づく治療指針の基盤策定
課題番号
H20-子ども・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
藤枝 憲二(旭川医科大学 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 章(福島県立医科大学 産婦人科)
  • 森内 浩幸(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学 小児科)
  • 久保 隆彦(成育医療センター 周産期診療部 産科)
  • 山田 秀人(北海道大学 大学院医学研究科産科生殖医学)
  • 伊藤 裕司(成育医療センター 周産期診療部 新生児科)
  • 泰地 秀信(成育医療センター 耳鼻咽喉科)
  • 藤原 成悦(成育医療センター 研究所母児感染研究部)
  • 岡 明(東京大学 医学部小児科)
  • 大石 勉(埼玉県立小児医療センター 感染免疫科)
  • 井上 直樹(国立感染症研究所 ウイルス1部)
  • 古谷野 伸(旭川医科大学 小児科)
  • 錫谷 達夫(福島県立医科大学 微生物学)
  • 坂田 英明(目白大学 保健医療学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
24,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は2008年度を初年度として3ヵ年計画で、(1)約2万人の出生児について先天性CMV感染のスクリーニングを行い、その頻度を明らかにするとともに、(2)同定された感染児でコホートを形成しフォローすることで、臨床像を明らかにし、(3)画像解析・免疫学的解析・ウイルス学的解析により感染・後発障害発生のリスク因子などを明らかにする。さらに、(4)必要に応じて抗ウイルス薬などによる治療を行い、エビデンスをもとに治療指針を策定していく事を目的としている。
研究方法
両親の同意のもとに濾紙で新生児の尿を採集し、その濾紙片を直接リアルタイムPCRの検体としてスクリーニングを行った。陽性者は確定診断後、発達や聴力の経過観察、ウイルス量の経時変化などを解析するため外来でフォローした。
結果と考察
現在まで約6000人の新生児をスクリーニングし22人の感染者を同定した。従って先天感染の頻度は約250人に1人であり、このうちの1/4が何らかの症状を呈していることから、1000人に1人が先天性CMV感染により健康被害を受けている実態を明らかにした。症候性感染児への統一治療プロトコールを作成・実施しながら、感染児22人の経過観察、解析を進め、血清CMV-IgM検査は先天性CMV感染児の同定には不十分であること、先天感染のリスクとして年長児から妊婦への感染の可能性があることを明らかにした。一方、妊婦の1/3がCMV抗体陰性で、実際に1%以上の妊婦に初感染が発生している事も明らかとなり、今後の先天性CMV感染の増加が懸念される結果であった。また乾燥臍帯を用いた後方視的研究から、原因不明の難聴や精神発達障害に先天性CMV感染が大きく関与していることも確認され、先天性CMV感染症を防ぐ効果的な対策立案が急務であると考えられた。今後、後発障害のリスク因子を明らかにする必要があり、効率的に頭部画像の特徴を抽出するための所見シートを作成するとともに、テトラマーなどを用いたCMV特異的免疫能の検査法を確立した。
結論
(1)スクリーニングにより250人に1人の頻度で先天性CMV感染児を同定した。(2)後発障害のリスク因子を解析するため、CMVに対する免疫応答の解析や頭部画像解析の所見シートを確立した。(3)症候性感染児の治療データを集積するとともに、症候性感染児への統一治療プロトコールを作成した。

公開日・更新日

公開日
2009-07-16
更新日
-