重症新生児に対する療養・療育環境の拡充に関する総合研究

文献情報

文献番号
200822015A
報告書区分
総括
研究課題名
重症新生児に対する療養・療育環境の拡充に関する総合研究
課題番号
H20-子ども・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田村 正徳(埼玉医科大学 総合医療センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 楠田 聡(東京女子医科大学母子総合医療センター)
  • 茨 聡(鹿児島市立病院)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学医学部小児科)
  • 杉本 健郎(すぎもとボーン・クリニーク)
  • 前田 浩利(医療法人千葉健愛会あおぞら診療所新松戸)
  • 飯田 浩一(大分県立病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
コーディネーターを介して、地域小児救急中核病院が増悪時の一時的緊急入院と訪問医療を分担し,病状が落ち着けば療育施設へ移動し,さらに安定すればケアホームや在宅医療へ戻る循環型の支援システムモデルを提言する。
研究方法
A.NICU長期入院児の動態調査と栄養法ガイドライン作成
B.NICUと在宅医療・療育施設の中間小児科施設の実態調査と移行推進策の研究
C.療育施設(重心施設からケアホームまで)を対象とした受け入れ阻害要因の解析と解決策に関する研究
D.NICU卒業児の在宅医療の課題と普及法に関する研究
E.コーディネーターの有効活用の実態調査と啓発活動
結果と考察
A.NICU長期入院児の動態は1)全国の長期入院児の年間の発生数は約220例と推計された(2.2例/出生1万)。2)2年後には18.2%に減少していた。3)約30%は自宅への退院、約15%は死亡退院であった。4)長期入院児のなかで基礎疾患が新生児仮死である症例が特に新生児医療施設内に留まる傾向が強かった。
医学的には在宅人工呼吸が可能な患者が在宅医療に移行できない理由としては、家庭的要因が半数以上を占めていた。一方、保護者へのアンケートでは、在宅医療に対する負担の大きさや不安を訴えていた。
B.小児科学会認定指導医のいる地域小児中核病院の約1/3は“中間施設候補”と考えられ、他の約1/3は条件次第でなりうると判明した。地域格差が大きく、昨今の産科の救急患者受け入れ拒否の地域格差の遠因が示唆された。
C.重症児者施設はほとんどが満床で、受け入れ推進には以下のような整備が必要であることが示された。(1)ケアホームの様な地域の受け皿作り:医療のバックアップ体制作りと介護職の医療的ケア実施の認知と夜間の介護給付の増額(2)重症児病棟の医療保険の増額(3)人工呼吸器装着児の短期入所時の介護給付の増額(4)福祉職と医療職の最低二人の重症児ケアマネージャー体制(5)訪問看護ステーションシステムと診療報酬の改訂。
D.全国の在宅療養支援診療所で小児の在宅医療を積極的に行っている医療機関は10施設以内で、その中でも10人以上の小児患者に在宅医療をおこなっているのは3箇所にすぎない。長期療養児のNICUからの退院を促すためには小児科一般開業医の在宅医療参入が必要と考えられる。
E.平成20年度でNICU入院児支援コーディネーターを配置している都道府県はなかった。
結論
NICU長期入院児の動態や栄養管理状態や中間施設候補と在宅医療支援体制の問題点と潜在的な社会資源を明らかにした。今後はこれらの社会資源の拡大と有効活用の方策を明確にする必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-07-16
更新日
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