タンデムマス等の新技術を導入した新しい新生児マススクリーニング体制の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200822012A
報告書区分
総括
研究課題名
タンデムマス等の新技術を導入した新しい新生児マススクリーニング体制の確立に関する研究
課題番号
H19-子ども・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山口 清次(国立大学法人島根大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 重松 陽介(国立大学法人福井大学 医学部)
  • 原田 正平(国立成育医療センター 研究所)
  • 大日 康史(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 加藤 忠明(国立成育医療センター 研究所)
  • 高田 哲(神戸大学大学院 保健学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
16,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 新生児マススクリーニングを取り巻く環境の変化に対応して、より効率的で質の高い体制を作るために、タンデムマスのような新技術の導入、聴覚スクリーニングの導入、およびサポート体制、検査施設の適正配置等を提言すること。
研究方法
 タンデムマスによる新生児スクリーニングのパイロット研究を進め、その効果、必要な診療、診断支援体制、新しい検査技術の開発、検査施設の適正配置、精度管理体制、および聴覚スクリーニングの普及状況の調査と体制作りについて検討した。
結果と考察
 1)平成20年に本研究班で20.5万人の新生児をタンデムマス検査して、27名の代謝異常を発見した。1997年以降、計81万人を検査し92名の患者を発見したことになる。日本人での患者頻度は1対8,800人と推定された。
 2)有機酸血症で、発症後に診断された患者の正常発達は33%、タンデムマス・スクリーニングでは85%であった。脂肪酸代謝異常では発症後診断された患者の正常発達は53%、スクリーニングでは100%であった。タンデムマスの効果は明らかである。
 3)スクリーニング事業の評価および稀少疾患の治療向上のために、患者の登録・追跡体制の整備が進められている。有機酸・脂肪酸代謝異常に関しては84名の患者が登録されている。
 4)タンデムマスで発見される疾患の診療サポート体制を確立するために、簡便な酵素活性評価法の開発を進めた。また保険医療によるサポート体制の整備も不可欠である。
 5)タンデムマス検査を1施設で少なくとも年間3万検体を検査できるように配置すれば、検査費用は約1,350円と試算された。検査施設の集約化によって費用は安価におさえることは可能である。
 6)現在わが国では、約70%の産科施設が聴覚スクリーニングを導入している。聴覚障害の発生頻度は(岡山県)両側性が1対1,081、片側性が1対775、全体で1対445であった。これをもとに地域の療育体制を整える必要がある。
結論
 日本では、タンデムマスで発見される頻度は約8,800人に一人であることがわかった。スクリーニングで発見された小児の予後は、発病してから診断された患者よりも明らかに良いこともわかった。聴覚スクリーニングでは両側性難聴の頻度はおおよそ1千人に一人であり、療育体制の整備が必要である。医療費節減のためにも効率的な新生児スクリーニング体制を確立する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-07-16
更新日
-